支え続けた10年、突然の裏切り
ある日の夜、珍しく早く帰宅した妻が、僕に向かって「話があるの」と、重い口を開いたのです。
「私、実は……会社で役員に昇格することが決まったの」
僕は突然の報告に驚きつつも、「本当!? すごいじゃないか! おめでとう!」と妻の手を取って祝福しました。
僕の昇格よりもずっと嬉しい、そんな気持ちでした。
しかし、妻の表情は晴れません。僕の手を振り払い、冷ややかな視線で僕を見つめながら、1枚の紙を机の上に置いたのです。
「これ、離婚届。ここに名前を書いて」
僕は耳を疑いました。
「え……? 離婚? どういうこと……?」
「もう限界なの。あなたは10年もずっと平社員。仕事ができない雑魚とは、これ以上一緒にいられないわ。一緒に役員に昇進するSさんと再婚して、私はもっと上のステージに行くから」
妻の口から出たのは、衝撃の「乗り換え宣言」でした。僕に家庭を任せきりにしながら、自分はさらに上の男へ乗り換えようとする身勝手な姿に、僕はただ呆然と立ち尽くすしかありませんでした。
「雑魚」と呼ばれた夫の、隠された実力
僕が呆然としていると、妻はさらに畳み掛けました。
「あなたみたいな上昇志向がない人間と違って、彼は私にふさわしい地位もお金もあるの。仕事でなんの成果も出せない夫だなんて、正直恥ずかしいのよ」
たしかに僕は会社で管理職を目指してはいませんでした。定時で帰れる働き方を選び、娘の生活を優先していたからです。僕がキャリアよりも家庭を優先したことを、妻も感謝してくれているのだと思っていました。
あまりに自分勝手な妻の言葉を聞いた瞬間、胸の奥がすっと冷たくなりました。
僕は深く息を吸い込み、妻にある事実を告げることにしました。 「……ねえ、前に僕が副業を始めたって話、覚えてる?」
妻は「あぁ、聞いたけど……あんなの遊びでしょ?」と、鼻で笑いました。
「遊びじゃないよ。僕が会社でそこそこのポジションに留まっていたのは、その『副業』に注力するためでもあったんだ。おかげさまで、事業はかなり好調でね。今の会社の給料の3倍は稼いでいるよ」
僕がそう告げてスマホの口座画面を見せると、妻は顔を真っ青にさせ、「嘘よ……そんなの、信じられない!」と激しく動揺し始めました。
「本当だよ。僕は家族のために、あえて安定した会社員の道を歩みつつ、将来のためにと事業を育ててきたんだ」
妻は「そんな……」と、呆然と立ち尽くしました。

娘の一言で形勢逆転、妻の末路
絶望する妻に、追い打ちをかけるような声が響きました。
「ママ知らなかったの? パパってすごいんだよ」
ずっと話を聞いていた娘が、無邪気な笑顔で、決定的なトドメを刺しました。
僕が帰宅後に副業の作業をしている姿をいつも隣で見ていた娘は、僕の努力や成果をちゃんと知っていたのです。
娘の純粋すぎる一言に、妻は完全に言葉を失い、顔面蒼白になりました。 エリート男性に乗り換えるつもりが、実は目の前の夫の方が遥かに稼いでいたという現実に、妻は慌てて離婚届をびりびりと破り捨て、僕に向かってすがりついてきたのです。
「ご、ごめんなさい! 役員になって天狗になってたの……! 嘘よ、離婚なんて絶対にしたくない!」
「でも、次の人と再婚して上のステージに行くんじゃないのか?」
「あれも嘘! あなたは私の、世界一自慢の夫よ!」
あまりの変わり身の早さに、僕は完全に呆れ果てました。
「君の言う通り、僕と君は、人生のステージが違ったみたいだね。自分の利益だけで家族を切り捨てるような人間とは、もうやっていく自信はないよ」
僕は娘の手を引き、家を出る決意をしました。
「ねぇ、私、パパと一緒にいられるよね?」
娘の言葉に、僕が力強く頷くと、
「やった〜ぁ! パパ、行こ!」
娘は満面の笑みで僕の服の裾をきゅっと掴み、歩き出しました。
その後、僕は妻と別居し、離婚手続きを進めることに。妻は何度もやり直したいと泣きついてきましたが、僕の気持ちが戻ることはありませんでした。娘は僕と暮らすことを選び、今は2人で穏やかで新しい生活を楽しんでいます。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。