タワマン自慢のパーティー
気乗りはしなかったものの、部署で僕だけが参加しないのも角が立つかと思い、妻と一緒に参加しました。
窓の外に広がる夜景に、集まった同僚たちも「さすがタワマン高層階、すごいですね」と盛り上がっていました。
Aさんはワイングラスを片手に、得意げに笑っていました。
「やっぱり住む場所って、その人のレベルが出るのよね」
その言葉に少し引っかかりましたが、僕は黙っていました。妻も隣で静かに会釈していました。
ところが、Aさんは妻を見るなり、わざとらしく声を張り上げたのです。
「え、あなたの奥さん? なんか意外。もっと地味な人かと思ってた」
周囲が気まずそうに笑う中、Aさんはさらに続けました。
中卒の貧乏人は呼んでない
「そもそも私、中卒の貧乏人は呼んでないのよ。自分には一生手が届かないタワマンが見られて、もう十分でしょ? 早く帰って」
僕は腹が立ちましたが、妻の前で言い返して場を荒らしたくありませんでした。
「わかりました。失礼します」
そう言って帰ろうとしたとき、妻が小さな声で僕に言いました。
「待って。この部屋、私の名義の物件だと思うんだけど」
僕は思わず「えっ?」と聞き返しました。
実は妻の実家は複数の不動産を持っており、その部屋は、妻が数年前に親族から相続し、賃貸に出していた物件の一つでした。普段の管理は管理会社に任せていたため、妻も入居者の顔までは把握していませんでした。
けれど、玄関脇に置かれていた管理会社からの封筒と部屋番号を見て、妻は気づいたのです。しかも管理会社からの報告では、先月分の家賃がまだ確認できていない部屋でした。
妻は周囲に聞こえないよう、Aさんを部屋の隅に呼びました。
「ここで詳しい話はしません。ただ、この部屋の所有者として、管理会社からの連絡にはきちんと対応していただけますか」
その瞬間、Aさんの顔色が変わりました。

本当に恥ずかしかったのは
「え……所有者って、あなたが?」
さっきまで「中卒の貧乏人は呼んでない」と笑っていたAさんは、自分が僕の妻の物件を借りていたと知り、何も言えなくなっていました。
妻は淡々と続けました。
「未払いが続けば、今後の契約にも影響します。詳しい話は管理会社を通して正式にお願いします」
Aさんはさっきまでの勢いを失い、「わかったわよ……」と小さく答えるしかありませんでした。
もちろん、その場で追い出したり、契約をどうこうしたりしたわけではありません。ただ、周囲にいた人たちは、Aさんが僕たちを見下して追い返そうとしたことも、妻に何かを指摘されて急に黙り込んだことも見ていました。
後日、Aさんは管理会社に連絡し、未払い分も支払ったそうです。会社でも、あのパーティーでの言動は自然と広まり、Aさんはかなり気まずそうにしていました。
すっかりプライドをへし折られたAさんは、その後、会社でも僕に対して一切横柄な態度を取らなくなりました。
それを聞いた妻が、「あの時、パーティーに行って正解だったね」と笑いました。僕も「うん」と答え、少しだけ胸が軽くなりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。