受験前に浴びせられた心ない言葉
息子は大学受験に2度失敗し、浪人生活を続けていました。3度目の受験が近づくにつれて焦りが募っていたのか、家の中でもいら立った様子を見せることが増えていきました。ある日、ささいなことで言い争いになると、息子は私に向かって言いました。
「あんたの育て方が悪いから、俺は勉強が苦手になったんだ。父さんが単身赴任先から全然帰ってこないのも、あんたと一緒にいたくないからだろ」
夫から家計に入るお金は十分とはいえず、私はパートをしながら生活費の不足分を補ってきました。そのため、息子に寂しい思いをさせたこともあったかもしれません。
それでも、実母と離れて暮らすことになった息子に、できる限り愛情を注いできたつもりです。18年間のすべてを否定されたようで、私は言葉を失いました。
一方で、夫婦の関係もすでに限界を迎えていました。夫が単身赴任先で別の女性と交際していることがわかり、本人もそれを認めたため、私は弁護士に相談しながら離婚の話し合いを進めていたのです。
合格後に告げられた「もう出ていって」
その後、息子は3度目の受験で大学に合格しました。私も自分のことのようにうれしく思い、これを機に息子の気持ちが少し落ち着いてくれればと期待していました。
進学費用については、夫が以前から「自分が管理している預金から出す」と話していました。家計に入れるお金が十分でないことを問いただしたときにも、「息子の学費は別に貯めている」と説明されていたため、私はその言葉を信じていました。
合格から数日後、夫から離婚について聞いたという息子から、「今まで育ててくれてありがとう」と言われました。
一瞬、息子がこれまでの日々を振り返ってくれたのかと思いました。しかし、その直後には、耳を疑うような言葉が続きました。
「大学の費用は父さんが出してくれるって。もうあんたに頼ることもないから、離婚するなら早く家を出ていって」
夫名義の家を出ることは、離婚の話し合いですでに決まっていました。それでも、18年間一緒に暮らしてきた私に対して、別れを惜しむどころか退去を急かすような言葉をかけられるとは思っていませんでした。
私は思わず、「よくそんなことが言えるわね」と言い返しました。すると息子も、「離婚するって決めたのはそっちだろ! 父さんが大学の費用を出すんだから、もうここにいる必要はないじゃないか」と声を荒らげました。
しばらく言い合いになりましたが、これ以上話してもお互いに感情的になるだけだと思い、私は一度深呼吸しました。
「あら、そう。わかりました」
最後はそれだけ伝え、やりとりを終えました。
このころには離婚の条件もほぼまとまっており、それから間もなく離婚が成立しました。夫はそれを機に単身赴任先から戻ってきたので、私は取り決め通り夫名義の家を出て、新しい生活を始めました。
家を出た後に届いた息子からのSOS
ところが、家を出て間もなく、息子から慌てた様子で電話がかかってきました。
「父さんに聞いたら、学費に回せる貯金はないって……。父さんは『あの人にだけは頼るな。俺が何とかする』って言ってるけど、入学金の期限も近いんだ。待っていたら間に合わないかもしれない。お願いだから、助けてくれない?」
夫は自分の無計画さを私に知られたくなかったのか、それとも離婚した私に今さら頭を下げられなかったのか、息子には私へ連絡しないよう言っていたようです。しかし、入学できなくなることを恐れた息子は、父親に黙って私を頼ってきたのでした。
「私は学費を負担すると約束していないし、もう助けることはできないわ。進学費用については、お父さんと相談して」
私がそう伝えると、息子は声を詰まらせながら言いました。
「18年も育ててきたのに、見捨てるのかよ……」
息子の言葉を聞き、私は静かに答えました。
「困ったときだけ母親として頼られる関係には、もう戻れないの」
そう伝えると、息子はしばらく黙り込んだ後、再び「お願いだから」と繰り返しました。胸が痛まなかったわけではありません。それでも、ここで私が手を差し伸べれば、夫の無計画さまで再び背負うことになると思いました。
「進学費用のことは、お父さんと話し合って」
私は最後にそう告げ、通話を終えました。
後日、夫側の親戚から、夫が親族に頭を下げて一時的にお金を借り、入学手続きに必要な費用を工面したと聞きました。夫はその後の授業料に備えて教育ローンの手続きも進め、息子は何とか大学へ通い始めたそうです。
18年間の愛情まで否定しない
息子が無事に進学できたと聞き、安心した気持ちはありました。どれほど傷つけられても、18年間育ててきた息子の将来がどうなってもよいとは思えなかったからです。
それでも、息子を思う気持ちと、夫が果たすべき責任まで私が背負うことは別です。あのとき学費を肩代わりしていたら、その後も夫と息子が困るたびに、私が問題を解決することになっていたかもしれません。
私は息子を育ててきた18年間を後悔していません。ただ、これからの人生まで2人のために犠牲にするつもりもありません。離婚を機に一線を引いたことで、ようやく自分自身の生活を大切にできるようになったのだと思います。
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長年家族として過ごしてきたからこそ、困っている息子に手を差し伸べないという決断は、主人公にとっても苦しいものだったでしょう。しかし、夫が引き受けると約束した責任まで、主人公が背負い続ける必要はありません。相手を大切に思う気持ちを持ちながらも、自分を都合よく利用する関係には一線を引くことも、自分の人生を守るために必要なのだと感じさせられる体験談です。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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