つきまとい被害に遭っていた女性・ゆうきを助けたことをきっかけに、圭太は凪に隠れて彼女と連絡を取り合うようになりました。既婚であることは伏せたまま、やり取りのたびに心を弾ませる日々。ゆうきから届いた土曜の夜の誘いに返信したその瞬間、凪が帰宅し、圭太は同僚からの仕事の相談だとごまかします。うまく切り抜けたと安堵する圭太の一方で、凪の中では、これまでの漠然としたモヤモヤがはっきりとした違和感へと変わっていました。
宅配便を受け取りに出た圭太は「俺は凪の夫であり、もう父親なんだ」と自分に言い聞かせます。帰宅すると、泣き続ける娘を抱えた凪に「先に風呂入ってくるわ」と告げて奥へ向かいました。ひとりであやし続けた凪の口からは「いいよね、圭太は」と、こらえていた思いがあふれます。圭太は、凪が自由な時間を求めたときに反対はしなかったと返しますが、凪が欲しかったのは「代わろうか?」というひと言でした。
すれ違ったまま会話は途切れ、その後、スマホを見つめて笑みを浮かべる夫の横顔に、凪は結婚以来初めて、圭太を遠くに感じたのでした。
そして迎えた土曜日、圭太が告げた夜の予定に、凪の胸騒ぎは静かに大きくなっていきます。
止まらない胸騒ぎと嫌な予感
土曜日に出かける予定を伝えた凪に、圭太は同じ日の夜に飲み会が入っていると返します。開始が9時からだと聞いた凪が「随分遅くから始めるんだね?」と尋ねると、圭太は仕事の人もいるからだと説明しました。何気ないやり取りでしたが、凪の中には小さな引っかかりが残りました。
当日、凪が久しぶりに友人と過ごす昼食の席で、話題はマイホームや保育園探しのことに移ります。圭太がマイホームの見学に賛成してくれたのは、気持ちの変化でもあったのかしらと言われると、凪の頭には最近気になった圭太の言動がよりぎりました。
冗談まじりに、今日の飲み会で泊まってくるかもねと笑われても、凪は「ない!ない!圭太に限って」と否定しました。けれど口とは裏腹に、心は揺れていたのです。
帰宅すると、圭太はいつになくおしゃれをして出かける支度をしていました。寝室には脱ぎ散らかした服が残されています。「会社の飲み会だよね?」と確かめる凪に、圭太は「終わったらすぐ帰る」と答えて家を出ていきました。
この日の夜、凪の胸騒ぎは最後まで収まりませんでした。思い過ごしであってほしいと願う気持ちと、嫌な予感が重なった夜。その先で圭太はゆきと落ち合うのでした。
◇ ◇ ◇
小さな違和感ほど、口に出すきっかけを失いがちなもの。言えないまま飲み込んだ経験がある方も、少なくないのではないでしょうか。本当は聞けば済むことなのに、確かめること自体が相手を疑う行為に思えてしまう。凪の「ない!ない!」という否定は、相手ではなく自分に言い聞かせる言葉だったのかもしれません。
信じたい気持ちが強いほど、違和感を確かめるのは怖くなるものです。それでも、気になったことを無理に打ち消さず、自分の気持ちを置き去りにしないことが大切なのかもしれませんね。
おーちゃん