婚活パーティーで出会った彼女は
公務員の僕は、長年、仕事一筋で生きてきました。しかし最近、周囲が結婚ラッシュで……。幸せな話を聞いているうちに「僕も結婚したい」と思い、婚活パーティーへの参加を決めました。
ところが、そのパーティーは散々な結果に終わりました。特に気になった美しい女性からは、「公務員の方ですか? 私は今、経済力のある方を希望しているので」と冷たい言葉をかけられてしまったのです。
彼女は「平凡で安定しているだけの人と話をする時間はないので」と僕を見下すような発言を残し、僕の前から去っていきました。
落ち込んでいた僕の目の前で…
すっかり落ち込んで会場を後にした僕でしたが、帰り道に先ほどの女性が男性と言い合いになっているのを目撃しました。
相手は、パーティーで見かけた派手な実業家風の男性。彼女の「お金目当て」発言を切り取り、「俺ならあなたの望み通りにしてあげられる」と抵抗する彼女にしつこく付きまとっていました。
僕は考えるより先に歩み寄り、男性と彼女の間に入り込みました。そして、「彼女が嫌がっているから、もうやめてください」と伝えたところ……。男性から「なんだ、お前さっきの冴えない公務員か! 彼女にさんざんバカにされてたよな! 貧乏人は引っ込んでろ」と言われてしまいました。
しかし、仕事柄クレーム対応などの修羅場に慣れている僕は、声を荒げず、相手の目を見て静かに伝えました。
「これ以上は明確な迷惑行為です。周囲の目もありますし、あなたのような地位のある方が、路上で警察沙汰を起こすのは得策ではないと思いますが」
僕の一切怯まない態度と正論に毒気を抜かれたのか、男性は舌打ちをして去っていきました。
彼女が僕に冷たかった理由
その場にへたり込み、震える彼女に温かい缶紅茶を差し出すと、彼女はポツポツと真実を語り始めました。 実は彼女の実家は歴史ある町工場で、経営難に陥っていました。長年勤めてくれた従業員たちを守るため、彼女は「自分が資産家と結婚して資金援助してもらうしかない」と思い詰め、あえて強欲な嫌な女を演じてターゲットを探していたのです。
「でも、いざあの人にモノのように扱われたら怖くなってしまって…。事情を知らない一般の方を巻き込まないようにひどい態度をとったのに、本当にごめんなさい…」
わざと嫌われ、ひとりですべてを背負おうとしていた彼女。僕は彼女の不器用な優しさと責任感の強さに、思わず涙が出そうでした。
やっぱり人となりが大事!
「財力目当てだった最低な私なんて、軽蔑して当然なのに…」と泣き崩れる彼女に、僕は言いました。 「自分のためじゃなく、誰かのためにそこまで重いものを背負える人を、僕は絶対に軽蔑しませんよ」。
僕の言葉に彼女は大粒の涙をこぼしました。彼女は「何かあったら、相談させてほしい」と言ってくれ、僕たちは連絡先を交換。 後日、僕は市役所の商工支援を担当していた経験から、彼女に補助金や専門家への相談制度を紹介した結果、実家の工場は無事に持ち直す兆しを見せました。
何度か相談を重ね、彼女とも信頼関係が深まってきたある日のこと。僕は彼女から食事に誘われました。彼女曰く、本当に求めていたのは、お金ではなく、どんなときも隣で冷静に寄り添ってくれる人だったと気が付いたそう。僕も、彼女の不器用でも一生懸命なところに惹かれています。
僕たちの出会いは最悪でした。彼女から「安定志向で退屈だ」と言われた公務員の僕。しかし、結果的に僕の知識が彼女を救うために役立ちました。人を支えるのに必要なのは、お金だけではないと僕自身も実感した出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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