初めて会った彼の両親は…
彼とは友人の紹介で知り合いました。お互い結婚願望があったこともあり、付き合い始めたころから将来について自然と話すようになっていました。
交際から1年ほど経ったある日、彼からプロポーズを受けました。もちろん返事は「はい」。双方の両親へ挨拶を済ませたら結婚式の準備を始めようと話し合い、まずは彼の実家を訪ねることになったのです。
当日はとても緊張していましたが、ご両親は笑顔で迎えてくれました。仕事や趣味の話で会話も弾み、「やさしそうなご両親でよかった」と安心していたのですが……。
彼が姿勢を正し、「今日は大事な話があります」と切り出しました。そして、「僕たち、結婚します」と伝えた瞬間――。
彼のお母さんが「えっ?次男が先に結婚するの?」と表情を一変させました。お父さんも険しい表情で、「長男がまだ独身なのに、それは順番が違う」と言います。
彼のお兄さんが独身だということは事前に聞いていましたが、結婚の順番にそこまでこだわるとは思ってもいませんでした。当然、彼が「関係ないよ」と言ってくれると思い、隣を見たのですが……。
両親の味方をする婚約者
彼は困ったように笑うと、静かにこう言いました。
「……じゃあ、兄貴が結婚するまで待とうか」
私は思わず「でも、お兄さんがいつ結婚するかわからないよね?」と聞き返しました。しかし彼は、「そのうち結婚するでしょ」「ここは兄貴に譲ろうよ」と軽く答えるだけ。
私との結婚よりも、ご両親の考えを優先していることが伝わってきました。強い違和感を覚えていると、彼のお母さんが突然「そうだわ!」と声を上げました。
「あなた、一度長男とも会ってみたら?意外と相性がいいかもしれないし」
私は思わず固まってしまいました。お母さんは「お互い気に入れば、そのまま長男と結婚してもいいんだから」と当然のように話を進め、お父さんもうなずいています。
私は助けを求めるように彼を見ました。しかし、返ってきたのは信じられない言葉だったのです。
「まぁ、食事くらいならいいんじゃない?」
私は思わず、「私たち、婚約したんだよね?」と聞き返しました。しかし彼は、「どっちにしろ家族になれるんだから」と、不思議そうな顔をしていました。その瞬間、この人とは価値観が根本から違うのだと悟りました。
彼からの電話で…思わずゾッ!
帰宅後、私は彼に婚約を解消したいと伝えました。彼は「親も悪気があったわけじゃない」「少し合わせてくれれば済む話なのに」と引き止めましたが、私の気持ちは変わりませんでした。
数週間後、彼から一度だけ電話がありました。
「もう一回、母さんに会ってくれない?」
理由を尋ねると、彼は明るい声で「母さんも考えが変わったんだ。順番なんて、もういいって」と言いました。驚いて言葉を失っている私に、彼はこう続けたのです。
「早く孫の顔が見たいんだってさ」
「うちは跡取りも必要だから、結婚するなら早いほうがいいって」
その言葉を聞いた瞬間、背筋が寒くなりました。結局、この家の価値観は何も変わっていなかったのです。
私という人間ではなく、「家」にとって都合がいいかどうかで結婚を考えている。その価値観を、彼自身も何の疑問も抱かず受け入れていました。
この出来事以来、彼やご家族とは一切連絡をとっていません。
結婚は本人同士だけでなく、家族との関わりも避けて通れません。あのとき違和感を見過ごさず、自分の気持ちを大切にして別れを選んだことは、今でも間違っていなかったと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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