妊婦さんを救護した兄、その隙に弟は…
ある日の出勤途中、道端でうずくまっている妊婦さんを発見しました。放っておくわけにはいかず、私はすぐに救急車を呼び、到着するまで付き添うことに。
その日は大切な取引先との打ち合わせを控えていたため、私は会社に「妊婦さんの救護で遅れる」と連絡しました。電話を受けたのは弟です。そして、ここぞとばかりに「兄さんが参加できないので、俺が代わりますよ」と商談に参加。私が準備していた提案資料を使い、契約をまとめました。
あとから知ったことですが、弟は父に「兄さんが大事な仕事を放り出したので、俺が代わりにフォローして契約につなげました」と、得意げに報告していたようです。
事情を知らない父に褒められた弟は、「やっぱり次期社長は俺だな」と、ますます調子に乗る始末。一方、何も知らなかった私は、無事に契約が決まってよかったと、ただ喜んでいました。
妊婦さんからの電話で、弟の嘘が発覚
その日の午後、事態は急展開を迎えます。会社に1本の電話が入りました。それは、朝助けた妊婦さんからの「御社の社員の方に助けていただきました。本当にありがとうございました」というお礼の電話。
妊婦さんは、救急車を待つ間に私が身につけていた社員証を見て、私の名前と勤務先を覚えていたそうです。電話を受けた受付スタッフが心温まる話として父に報告したことで、私が理由もなく打ち合わせを放り出したわけではないと判明しました。
当初、私を注意するつもりだった父は、事情を知ると、今度は弟の報告に不信感を抱きます。そして、私たちと同じ部署で働く社員たちから事情を聞き始めました。
すると、日ごろから弟の言動に疑問を抱いていた社員たちの証言により、弟がこれまでにしてきたことが次々と明るみに出たのです。
弟が私の担当案件のうち、売上や成績につながりそうなものだけを狙って横取りしていたこと。さらに、私が手柄を奪われても取引先への影響を第一に考え、これまで黙ってフォローに徹していたことまで、すべて父の耳に入りました。
誠実な行動がつないだ新たな大役
事実を知った父は激怒。弟に事情を聞くと同時に厳しく叱責し、私と同じ部署から異動させることを決定しました。兄を蹴落として後継者の座を手に入れようとしていた弟にとって、まさに自業自得の結末です。
一方、地道に顧客との信頼を築き、陰で会社を支えてきた私の働きぶりは、社内でも改めて評価されるようになりました。さらに後日、別の取引先の担当者から思いがけない言葉をかけられました。
「あの日、通勤途中に、あなたが妊婦さんを救護している姿を偶然見かけたんです。困っている人を見過ごさないあなたのような方なら、安心してうちの仕事も任せられます」
そう言って、その担当者は私を新規プロジェクトの責任者に指名してくれました。
兄として、弟にはこれからも頑張ってほしいと思っています。一方で、目先の評価にとらわれず、誠実に行動してきてよかったと実感したのも事実。これからも周囲に支えられていることへの感謝を忘れず、仕事に励んでいきたいと思います。
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すぐには評価されなくても、誠実に積み重ねてきた努力が、思いがけない形で報われることもあります。自分に恥じない行動を選び続けることが、未来を切り開く力になるのかもしれませんね。
【取材時期:2026年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。