知人の紹介で出会った看護師の女性
知人から「いい人がいるよ」と紹介されたのが、看護師として働く女性・A子でした。何度か食事を重ねるうちに、僕はすっかりA子に惹かれていました。
そんなある日、弟と恋愛の話になり、「最近、気になっている人がいるんだ」と打ち明けると、弟は興味を示しました。僕は軽い気持ちで、スマートフォンに保存してあったA子の写真を見せてしまったのです。
写真を見た弟は、「へー、兄貴の好きな子、かわいいじゃん」と身を乗り出すように言いました。その様子に少し引っかかるものを感じたものの、僕は深く考えず、そのまま話を終えたのです。
弟が狙った相手は…
ところが、その数日後のこと。突然、A子からの連絡が途絶えました。
理由もわからないまま数日が過ぎたある日。仕事を終えて帰宅すると、リビングから弟の笑い声が聞こえてきました。
部屋をのぞくと、そこにいたのは連絡が途絶えていたA子でした。
弟はSNSでA子を見つけ、自分から連絡していたそうです。あっけにとられる僕に、弟は悪びれる様子もなく、「ごめんな、兄貴。この子は俺がもらうわ」と言い放ったのです。
その言葉を聞いた瞬間、堪えていた怒りが一気に込み上げました。
「いい加減にしろ!」
僕はA子を連れて家の外へ出ました。
落ち着いて事情を聞くと、弟は「兄とは合わないんじゃない?」「俺のほうが楽しませられるよ」などと何度もA子を誘い続けていたそうです。「家においでよ。兄もいるからさ」と言われたため、僕の前ではっきり断るつもりで来たのだと言います。
「私が軽率でした。本当にごめんなさい」
申し訳なさそうに頭を下げるA子を見て、僕は責める気持ちにはなれませんでした。
翌日、自宅に集まった女性たち
翌日のお昼ごろ、インターホンが鳴りました。モニターを確認すると、昨夜家に来たA子と、見知らぬ女性が2名立っています。
女性たちは口々に「話を聞いてください」と訴え始め、近所の目も気になったため、僕は慌てて家の中へ案内しました。
弟も両親もすでに外出していたため、家には僕しかいません。落ち着いたところで、A子が申し訳なさそうにこう切り出したのです。
「昨日のことを友人に相談したら、『その人、私の知り合いも会っていたかもしれない』と言われたんです。そこから話を聞いていくうちに、同じような目に遭った女性たちとつながって……」
続いて、同行していた2人の女性が、それぞれの経緯を話し始めました。2人とも、弟から真剣な交際をほのめかされていたと言います。
次々と明かされる話は、僕が思っていた以上にひどいもので……。弟が女性関係にだらしないことは知っていましたが、これほど無責任に人の気持ちを踏みにじっていたとは思ってもいませんでした。
すると、一人の女性が、小さくつぶやきました。
「私たち以外にも、まだ知らない人がいるかもしれません……」
その言葉を聞いても、僕にできることはありませんでした。
「弟のことは、本当に申し訳なく思っています。でも、この件にこれ以上、僕が口を出すつもりはありません。あなたたちが納得できるよう、弟本人と向き合ってください」
女性たちは静かにうなずき、その日は家をあとにしました。
自分でまいた種
それから数日後のことです。仕事から帰ってきた弟は、見違えるほど元気がありませんでした。
僕が「どうしたんだ?」と尋ねても、弟はしばらく俯いたまま。やがて、ぽつりぽつりと話し始めたのです。
その日、弟は幼なじみのB美さんとデートをしていたそうです。食事を終えて店を出たところで、突然、あの日家に来た女性たちに呼び止められました。
女性たちは弟とのメッセージや写真を見せながら、「私には付き合おうって言ったよね?」「真剣に考えてるって言ってたじゃない」と次々に問い詰めたそうです。
突然の出来事にB美さんも戸惑い、「どういうことなの?」と弟に尋ねました。弟は何も言い返せず、周囲の人まで足を止める騒ぎになったそうです。
しばらく黙り込んだあと、弟は力なくつぶやきました。
「……実はB美と婚約していたんだ」
思わず耳を疑いました。そんな大切な相手がいたとは、僕もまったく知りませんでした。
弟は幼なじみのB美さんと結婚の約束をしていたものの、その日の出来事ですべてを知られ、婚約は解消になってしまったというのです。
軽い気持ちで人を傷つけ続ければ、最後には一番大切な人まで失ってしまう。弟が自分でまいた種とはいえ、その代償はあまりにも大きかった――そう痛感した出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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