「おい! 旅行するぞ!」
いつものように夫婦で食事をしていると、唐突に夫がそう言いました。理由を聞くと、仕事が忙しすぎて気晴らしに旅行に行きたくなったのだそう。
「行き先もホテルも、全部お前に任せるから」そう言われ、最初は「どこに行こうかな」とワクワクしながら考えていたのですが……。
夫が私を旅行に誘った理由
「旅行は父さんと母さんも一緒だから! 日程は来月の三連休な!」
てっきり夫婦2人きりの旅行だと思っていた私は、一気にテンションが下がりました。しかも、指定された1日目には外せない仕事が入っており、休める状況ではありません。
別の日程にしてほしいとお願いしたものの、夫から返ってきたのは「ホテルで仕事をすればいいだろ」という無神経な言葉でした。
私が行かないという選択肢はありません。実は義父は免許を返納しており、夫は旅先でお酒を飲みたい人。つまり私は、観光や買い物の「運転手要員」として連れて行かれるわけです。
「それなら1日目は私が仕事後に合流するから、3人での移動はタクシーを使ってほしい」と提案してみたものの、「そんな無駄金があるなら別のことに使いたい」と一蹴……。「私だって旅行でお酒を楽しみたい」と伝えても、「嫁なんだから我慢しろ」と笑われる始末でした。
仕事を休まされ、運転手をするためだけに行く旅行の何を楽しめというのでしょうか。
夫は「義父母と打ち解けるいい機会だ」と言いますが、ひとり息子の夫を溺愛する義母は、私が息子を奪ったと考えていて常に敵意むき出し。いくら歩み寄ろうとしても、仲良くなれるはずもありませんでした……。
結局、私だけが我慢…
1カ月後——私は職場のスタッフに頭を下げて仕事を調整し、結局旅行に参加することになりました。
しかし予想通り、私はまるで空気のような存在。車を運転する必要がない場所では、声すら掛けられず放置される有様でした。
夫と2人きりになったタイミングで抗議するも、「嫁なんだから家族に尽くして当然だ」と切り捨てられ、まともに話を聞く気すらありません。
そこでようやく目が覚めました。「この人が昔のようにやさしくなることは、二度とないんだ」と。
これ以上、自分の人生を犠牲にしたくないと決意した私は翌朝、夫たちを残してひとりで帰宅することに決めました。
帰宅途中、スマホには夫からの着信やメッセージがひっきりなしに届きます。
『今どこだ?』『家族旅行中だぞ? 勝手にいなくなるな』『すぐ部屋に戻れ』
呆れながら『帰ります。離婚届をもらって実家に帰ります』と返信すると、夫は引き留めるどころか『お前がいなくて誰が運転するんだよ!』とまさかの逆ギレ。
当日は予約がなかなか取れない素敵なレストランでの食事が控えていました。しかし移動に車が必須というロケーション……。
車は現地に置いてきたので夫が運転すれば済む話ですが、夫は朝食時にすでにお酒を飲んでいたよう。この様子だと、おそらくタクシーもつかまらないのでしょう。
『離婚届は家に置いておくから、記入して提出して』とだけ返信し、スマホを置きました。
私のせい?それならお詫びに♡
数時間後。自分の署名と捺印を済ませた離婚届を自宅に置き、実家へ戻った私のもとに夫から再び連絡が入りました。「もう話すことなんてないのに」と思いつつ、確認してみると……。
『おい、お前のせいで……!』
夫はひどく苛立っている様子でした。詳しく聞いてみると、なんとかタクシーでレストランに向かったものの、タクシー代を払った時点でカードの限度額に達してしまったとのこと。金遣いの荒い夫ならありうる話です。
飲食代も帰りのタクシー代も払えず、相当な恥をかいたようです。嫁や息子に払ってもらう気満々だった義両親も、お金を持ち合わせていなかったのでしょう。
『お前が勝手に帰ったからこうなったんだ!』と青筋を立てて責め立ててきました。
そこで私は『そんなにご迷惑をおかけしたのなら、責任を取らせていただきます。お詫びに離婚しましょう』と告げました。
想定外の返しに夫は一瞬で血の気が引いたようで『えっ、離婚までは望んでない!謝罪だけでいいから!』と、さっきまでの威勢が嘘のようにトーンダウン。
『いえ、私のせいでそんな大問題になったのなら申し訳なさすぎますから』と淡々と畳みかけ、離婚に同意させて後日正式に手続きを進めることになりました。
もう少し心が落ち着いたら、誰に気を使うこともない気軽な一人旅に出かけようと思います。
◇ ◇ ◇
パートナーとは我慢を強いる存在ではなく、お互いを思いやり、ストレスなく過ごせる関係でありたいものですね。
もし今、どちらか一方だけが理不尽な我慢を強いられているのなら、まずは一度、自分の本当の気持ちを言葉にして伝えることが大切です。冷静に話し合っても態度が変わらない、あるいは歩み寄る姿勢すら見せてくれないのであれば、その関係を見つめ直すタイミングかもしれません。
我慢し続けることだけが「家族」や「妻」の役割ではありません。時には勇気を持って距離を置く選択肢を持ち、自分自身の人生と心を一番に大切にしていきたいですね。
【取材時期:2026年6月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。