家族の団らんを壊した訪問者
その日は久しぶりに予定のない休日でした。僕はリビングで娘と遊び、妻はキッチンで飲み物を用意してくれていました。
そのとき、インターホンが鳴りました。玄関に立っていたのは弟とA子。A子は、僕の学生時代の同級生です。弟とは昔からそりが合わず、実家でたまに顔を合わせる程度です。
「おい兄貴! 話があるんだけど!」と弟が玄関先で声を荒らげたため、僕はしぶしぶ2人をリビングへ通しました。すると、弟は妻と娘の前で、「A子と不倫してんだろ! 全部聞いたぞ」と言い放ったのです。
A子とは最近、地元イベントの手伝いで何度か顔を合わせていましたが、いつも複数人がいる場で、連絡もグループ内だけです。
妻はトレーを持ったまま固まり、A子を見て「そちらの方は?」と尋ねました。娘は「パパ、この人たち誰? お友だち?」と不安そうにしています。妻はすぐに娘を子ども部屋へ連れていき、落ち着かせてから戻ってきました。
弟から離婚を要求されて…!?
「不倫なんてしてない。どういうことだよ」と尋ねると、弟は「奥さんがいるのにA子にやさしくして、期待させてたんだろ」と答えました。弟とA子は地元の飲み会で知り合い、その後、A子から僕のことを相談されるうちに、弟が彼女へ好意を持ったそうです。そして、自分から口説いて交際を始めたのだとか。
さらに弟は、「何もなかった顔してこのまま家族と暮らすつもりかよ。奥さんと離婚して責任取れよ!」と要求してきたのです。
僕は思わず言葉を失いました。するとA子がうつむきながら、「いつも気にかけてくれたじゃない。帰り道も心配してくれたし、家庭のことも大変そうに話していたから……」と口を開きました。
確かに、片付けが遅くなった日に「遅いから気をつけて帰って」と声をかけ、仕事と育児の両立が大変だと話したことはありました。しかし、2人きりで会ったことも、好意を伝えたこともありません。
妻に誤解されるのが何より怖く、僕はどう説明すればいいのか、頭が真っ白になりました。
妻が冷静に問い詰めると
すると、妻は僕を責めることなく、A子と向き合って「夫から同級生たちと会っている話は聞いています。でも、2人きりで会ったことがあるとは聞いていません。個人的に連絡を取り合っていたんですか?」と尋ねたのです。
A子は言葉に詰まり、「連絡はグループだけです。でも、私には特別にやさしくしてくれて……」と答えます。
「そう感じたことと、実際に不倫していたことは別ですよね。夫から『好きだ』と言われたり、夫婦関係がうまくいっていないと言われたりしたんですか?」
妻がそう尋ねると、A子は目をそらし、「奥さんとうまくいっていないのかと思って……」と小さくつぶやきました。
僕はすかさず「そんなことを言った覚えはない」と否定。どうやらA子は、僕の何げない言動を自分に都合よく受け取り、弟にも「奥さんがいるのに期待させられた」と大げさに話していたようです。
妻は2人をまっすぐ見て、「思い込みだけで夫を不倫相手だと決めつけて、娘の前で離婚を迫るのはやめてください」と言い切りました。
責任を押しつけ合う2人
そこで弟はようやく、A子の話を一方的に信じ込んでいたことに気づいたようです。それでも素直に謝ることはできず、「聞いていた話と違うじゃないか」とA子を責め始めました。一方のA子も「家に乗り込むって決めたのはあなたでしょ」と反論し、2人は言い争いに。
僕が「もう帰ってくれ」と告げると、2人は気まずそうに家を出ていきました。
後日、弟とA子は関係が悪化し、ほどなく別れたと聞きました。騒動を知った両親から厳しく注意されたらしく、それ以来、弟とは会っていません。A子とも地元イベントで自然に距離ができました。
突然の騒動で休日は台無しになりましたが、妻が冷静に事実を確かめてくれたことに救われました。今後も妻と娘を大切にし、穏やかな暮らしを守っていきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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