突然の婚約破棄
彼女は企画営業部で新規事業を担当し、僕は在庫管理システムの構築・運用など裏側の仕事を任されていました。
しかし、数年が経つと、彼女は僕の仕事をバカにするように。「結果を出せない仕事は誰にでもできる。雑務よね」と、僕の地道な仕事を軽く見るようになったのです。
ある日、彼女からホテルのラウンジへ呼び出されると、そこには営業成績トップの同世代の男性社員が座っていました。
「紹介するわ。彼が新しい婚約者よ」
「経営者の隣には営業力のある人が必要なの。裏方の仕事しかしていないあなたとは価値観が合わなくなった。婚約も解消したし…もう会社に居場所なんてないんじゃない?」
一方的で身勝手な言い分でした。後日、社長はこの話を知って驚いたそう。娘からは「円満に別れ話は済んでいる」と虚偽の報告を受けていたのです。僕は社内に居続けることで周囲に気を使わせてしまうと考え、以前からシステム構築の技術を生かせる環境へ移りたいと思っていたこともあり、退職を決意しました。
引き継ぎを軽視した代償
退職が決まり、僕は担当していた在庫管理システムの引き継ぎを申し出ました。ところが、彼女と新しい婚約者は、「マニュアルがあるんだから十分でしょ」と詳しい引き継ぎを拒否しました。目先の目標に必死でシステム管理に気が回っていなかった彼らは、あろうことか経営陣へ「引き継ぎは完了した」と嘘の報告までしていたのです。
僕は口頭での説明や並行運用の必要性を伝えましたが聞き入れられず、詳細なマニュアルを残して会社を去りました。
しかし、そのシステムは売り上げや季節変動などのデータを複合し、自動で発注量を調整する複雑な仕組みです。残された彼らがマニュアルを読まずに適当な設定変更をおこなった結果、システムは誤作動を起こしたよう。過剰在庫と欠品が同時に発生し、取引先への納品にも遅れが出るなど、会社は一時大混乱に陥ったそうなのです。
社長からの謝罪
退職から約1カ月後、人事担当者を通じて社長から連絡がありました。指定された喫茶店へ向かうと、そこには深く頭を下げる社長と、気まずそうにうつむく元婚約者の姿がありました。
引き継ぎの不備や業務遅延の真相を知った社長は、当事者である娘たちを厳しく叱責したそう。 「本当に申し訳なかった。会社として君の仕事を軽く見ていた」 元婚約者も小さな声で、「お願い…助けて」と頭を下げました。
ですが、一度失った信頼は戻りません。僕は社員としての復帰は断りつつも、自分が構築したシステムが放置され、取引先に迷惑をかけるのは本意ではないため、個人として会社と契約を結ぶことを提案しました。
社内にシステムを理解している社員がいないため、会社側もこれを受諾。システム運用に携わることになりました。一方、引き継ぎを軽視して会社に損害を与えた元婚約者とその彼は、新規プロジェクトから外され、現場のサポート部署で一から仕事を学び直すことになりました。
正当な評価と新しい未来
その後、独立した僕のもとへ、以前から付き合いのあった取引先の担当者が連絡をくれました。「退職されると聞いて残念だったんです。独立されるなら、ぜひお願いしたい仕事があります」。この言葉を機に少しずつ仕事は増え、新しい取引先との縁も広がっていきました。ある日、その担当者が笑いながら言ってくれました。
「誰よりも動いているのに、自分の手柄にしないところ、私はずっと見ていましたよ」 その言葉に、これまでの努力は無駄ではなかったと心から思えました。
数カ月後、街中で元婚約者と偶然すれ違いました。以前より少しやつれた彼女は、「いろいろ…ごめん」とつぶやきました。僕は軽く会釈だけして、その場を後にしました。今は僕には、自分の仕事を正当に評価してくれる人たちとの新しい未来への期待しかありません!
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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