帰国すると自宅に妹夫婦が
数年前、妻の海外赴任に同行することになり、僕たち夫婦は日本の家を空けました。その家は、もともと父が所有していた古い別荘です。人気の別荘地にあり、土地も広いため、それなりに価値のある物件でした。結婚を機に僕が買い取り、少しずつリフォームしながら暮らしていました。
海外にいる間も管理会社に点検を頼み、帰国後は再び妻と暮らすつもりだったのです。ところが、大きな荷物を抱えて玄関を開けると、リビングから妹のA美とその夫が出てきました。
驚いた僕が「なんで2人がいるの?」と尋ねると、A美は悪びれもせず、「おかえり。悪いけど、この家、私たちが住むことにしたから」と告げたのです。実家に保管していた合鍵を持ち出し、無断で引っ越してきたようでした。
妹夫婦に突きつけた条件
A美の夫まで、「何年も空けていたんですよね? 誰も住んでいないなら、僕たちが使ったほうがいいと思って」と言い出しました。しかし、家の所有者は僕で、税金や管理費も僕たち夫婦が負担してきました。
そう伝えると、A美は「お兄ちゃんたちは海外に住んでいたんだから、使ってもいいでしょ。こんな立派な家を空けておくなんてもったいないよ」と開き直ったのです。僕は少し考えたあと、A美夫婦に提案しました。
「半年間、この家を自分たちで管理できたら、そのあとで譲るかどうか話し合うのはどう?」
「ただし、税金や庭の手入れ代、設備の点検・修理費とか、家の維持にかかるお金はそっちで負担してもらうよ。払えない場合は家を出てもらう。その条件も書面に残すからね」
すると、A美は「半年だけでいいの? もちろんやる!」と即答。
A美夫婦は、半年我慢すれば家が手に入ると思ったのでしょう。条件を書面に残すことにも、迷わず同意しました。
高額な修理が必要になり…!?
その日はひとまずホテルへ移動し、その後、僕たちは当面の住まいを確保しました。妻から「本当に譲るつもりなの?」と心配そうに尋ねられ、僕は「まずは、あの家を維持する大変さを知ってもらおう」と答えました。
実は、あの家は気楽に住める家ではありません。古い別荘を改装したため、庭木の手入れや設備の点検にお金がかかります。空調や水回りも古く、いつ大きな修理が必要になってもおかしくありません。
最初のうち、A美からは「広い家って最高」「友だちにもうらやましがられた」と得意げな連絡が届いていました。しかし、やがて維持費への愚痴が増えていったのです。そして数カ月後、給湯設備の交換のため、まとまった修理費が必要だと判明。その夜、A美から何度も電話がかかってきました。
「こんなにお金がかかるなんて聞いてない! まだお兄ちゃんの家なんだから払ってよ!」
「負担できないなら、譲る話はなしだ。約束どおり家を出てもらうよ」
僕がきっぱり告げると、A美は「そんなのひどい!」と声を荒らげました。しかし、書面には負担が難しくなった場合は退去するという条件を明記していたのです。
家を手放すことに
話し合いの末、A美夫婦は家を維持できないと認め、引っ越すことに。家を出る日、A美は気まずそうに謝りました。
「勝手に住み始めてごめん。家って、維持するのにこんなにお金がかかるんだね」
「まあね。もう二度と、人の家を自分のものみたいに扱わないでほしい」
僕たち夫婦も、帰国後はあの家で暮らすつもりでした。しかし、今回の出来事をきっかけに、古い家を持ち続けることが、今の僕たちに本当に合っているのか考えるようになったのです。妻と話し合った結果、家は売却することに。人気の別荘地にあったこともあり、ほどなく買い手が見つかりました。
今は妻と新しい住まいで、僕たちに合った暮らしを始めています。
家は、住みたいと言うだけで手に入るものではありません。維持する責任まで背負ってこそ、自分の家になるのだと感じた出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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