私が熱を出して寝込んでいても、迷惑そうな顔をしていた夫。結婚したのは間違いだったかな……と少し思いましたが、反省している夫を見て「次はないからね」と釘を刺す程度に留めていました。
しかし、ある日突然、夫を訪ねて妊婦さんがうちにやってきたのです――。
妊婦の訪問
突然わが家にやってきた妊婦さん。出産を間近に控えていた彼女は、具合が悪くて困っていたところを……うちの夫が助けたとのことで、わざわざお礼を持って来てくれたのでした。
いきなりの訪問にびっくりしたものの、笑顔で感謝を述べる妊婦さんに私も思わずにっこり。妊婦さんの帰宅後、夫に報告すると「そんなことあったっけな……?」「わざわざお礼に来なくても良かったんだけど」との返事が。
私が熱を出した時に冷ややかな態度を取ったあの夫が、人助けできるようになったなんて……!
その時の私は、夫の成長と妊婦さんからの手土産にただただ喜んでいたのでした。
突然の出張
2週間後――。
夫から突然「ごめん、来週から2週間出張になった」との連絡が。来週には私たちの結婚記念日があるのですが、仕事なら仕方ありません。私はレストランの予約をキャンセルすることを了承し、「仕事なら仕方ないもんね」と返事をしました。
しかし、夫が出張するのはとても珍しいこと。少し意外には思いましたが、夫から「イレギュラーでさ」「新しい案件もいくつか入ってバタバタしてる」と言われ、そんなこともあるのだろうと深く考えませんでした。
「キャリーケースを用意しておくね」と言うと、夫は「え?キャリー?なんで?」とまさかの反応。「2週間も出張するなら必要じゃない?」と言うと、「あ、ああ、そうだな、うっかりしてた」と返事が。
私はまだ、夫は忙しすぎて疲れているんだろうな…くらいにしか思っていなかったのです。
1週間後――。
予定通り出張に行った夫。忙しいのか、なかなか連絡は来ません。そんななか、友だちから「あなたの夫、今日隣町で見かけたよ」と連絡が来たのです。
他人の空似であれ、と思いながら夫に連絡してみると、やはり夫からは「出張中」との返事が。不安になった私は、夫にホテルの部屋での自撮りと、テレビ電話を要求しました。
しかし、夫は「取引先の人とこれからごはん食べに行くから……。忘れなかったら送るよ」と生半可な返事しかしてくれません。そして、テレビ電話どころか、自撮り写真も送られてくることはありませんでした。
張り込みの結果…
さらに1週間後――。
覚悟を決めた私のもとに、ようやく夫から連絡が来ました。
「悪い、出張が長引きそうで…」
「あと1カ月は帰れない」
「出張?隣町にいるくせに?」
「会社の人は育休中って言ってたけど?一体誰の子の育児してんの?」
先週、私はたまたま夫の同僚に会ったのです。そこで「おめでとうございます!」と言われてびっくり。同僚さん曰く、夫は「子どもが生まれた」と話して育休を取っているとのこと。どうやら周囲は、私が出産したものと思い込んでいるようでした。もちろん、私たち夫婦に子どもはいません。戸惑う私に、同僚さんは「本人からそう聞いている」と言い切ります。夫が何かを隠しているのは間違いないと、私は確信したのでした。
そこから調べを進めていくうちに、先日わが家に来た妊婦さんが不倫相手だということを知った私。手土産とともに渡された手紙に書いてあった住所は、隣町。数日前から仕事を休み、その住所の近くを張り込んでみると、夫がそこに出入りしているのが見えました。そのことを突き付けると、「ごめんなさい……」と謝る夫。
不倫相手を妊娠させ、生まれた子を認知したうえで育休を取り、出産後の育児を手伝っていたのです。婚姻関係がなくても、認知して法律上の親子関係があれば育休を取得できるとのこと。夫はその制度を利用していたのでした。不倫相手から「出産前後の世話や育児を手伝わなきゃ関係をバラす」と脅されていたんだと言いますが、夫だってやることをやっているのに、不倫相手だけが悪いと言っているようで腹が立ちました。
さらに、「あと1カ月だけ育児を手伝ったら、俺を解放してくれるって言ってるし」「その後は父親として関わらなくてもいいって」と夫。認知までしておきながら、そんな都合のいい話があるわけがありません。そもそも不倫して子どもを作っているのも問題ですが、親としての責任から逃げようとしていることにもあきれました。
「あんたみたいな男と一緒にいるのは無理だから」「妻より優先する人がいるならその人たちと仲良くやってちょうだい」「あんたも不倫相手も私にとったらヤバイ奴だからね。きっとお似合いの夫婦になれると思うよ」と言い捨てて、一方的に私は夫との電話を切りました。
その後――。
私は夫と離婚し、元夫と不倫相手の両方に慰謝料を請求。元夫は私とよりを戻したいと思っているようですが、私は父親としての責任をきっちり果たしてほしいと思っています。
離婚後、私は単身用のマンションに引っ越し、仕事に打ち込んで元夫のことを必死で忘れようとしました。その甲斐もあってか仕事での成果が認められ、来年からは海外で働くことになっています。まだ恋愛をしようという気持ちにはなりませんが、今は自分ができることを精一杯がんばっていこうと思っています。