スマホの通知音が鳴り響き、私はため息をつきました。
「全然返信ないけど何してる?」「スマホ見てないのか?」という夫からの連投メッセージ。私は「ごめんなさい、気付かなくて」と返すと、また怒涛の勢いで「なにやってんだよ」「5分も待ったぞ」「スマホは肌身離さず持ってろっていつも言ってるだろ」と返信が。
厳しい夫
そして私はいつも通り、午前中したことを報告するのでした。
「洗濯物を干して、家の中を掃除した」「あと涼しいうちに庭の草むしりも」「ベッドのシーツと枕カバーを交換して」「あとは買い物ももう済ませてきたよ」
「買い物は予算内に収まっただろうな?」と尋ねてきた夫に、「ごめんなさい、今回は100円オーバーしてる」と正直に伝えました。「事前に計算してたんだけど、最近の値上げで予算を超えちゃって……」「前回は予算を下回ったから、それでプラマイゼロにはならない?」と私が言うと、夫は「前回は関係ないし、ルールは絶対だ」「甘ったれた考え方するな」と私を叱責しました。
「俺が汗水垂らしてやっとの思いで稼いだ金なんだ」「無駄にすることは絶対に許さないからな」「お前、今日は夕飯食うなよ」
昨日はクリーニングの出し忘れで、夕飯を抜かれたっけ……。2日連続夕飯抜きは、こたえるものがあります。
私には100円の予算オーバーも許さないくせに、夫は海外のお菓子やジュースをまとめ買い。結局飽きて無駄にするのに、1回に数万円も使うのです。
こんな生活がもう3年も続いているのです……。新しい靴も服も買うことは許されていません。私はよれよれになった服と、今にも穴が開きそうな靴を見て、またため息をつくのでした。
もう、限界…
1カ月後――。
その日は朝から体調が悪く、いつもの夫からの昼の連絡も返せませんでした。少し回復してからスマホを見ると、案の定夫からは怒涛の連投メッセージが。
「体調が悪くて寝てた」「ねぇ、病院に行ってきてもいい……?」と送ると、「え?病院なんか行かなくたって、家にある市販薬を飲めばいいだろ」と夫。
しかし、いつもとは違う体調の悪さに、不安が募りました。
「まだ耐えられるだろ」「病院に行くと金がかかるんだぞ」「その程度で病院なんて大げさなんだよ」「とりあえず家にある市販薬でも飲んで寝てろ」
病院に行くかどうかまで、夫に決められなければいけないの……? そこまで言われる筋合いはない……私はこのときそう思ったのです。
モラ夫への制裁
翌日、私が病院で受け取った領収書を見つけたのでしょう。夫から怒りのメッセージが届きました。
「病院の領収書があるけど、お前病院行ったのか?」
「俺の金を無駄に使いやがって」
「覚悟しろよ」
立て続けに送られてくる暴言に、私はきっぱりと返信しました。
「覚悟するのはお前だよクソ夫」
突然の反撃に、夫は「え?」と言葉を失ったようでした。
――このまま我慢していてはいけないと思った私は、自分の判断で病院へ向かいました。診察の結果、放っておけば症状が悪化していた可能性があるとのことで、医師からも「早めに受診してよかったですね」と言われたのです。
ようやく、目が覚めた私。なんでこんな夫の言いなりになっていたのか、今では不思議で仕方がありません。もう二度と、我慢して耐えるだけの生活には戻りません。
「無職で役立たずの主婦に何ができるって言うんだよ」とあざ笑う夫に、私は「何ができるか、これから思い知ることになるよ」「私はもう、あなたの言いなりにはならないから」と返しました。
昔からのくせで、毎日日記をつけていた私。夫から言われた暴言や、生活費を細かく制限されたこと、体調が悪いときにも家事を強要されたことも、すべて3年間分の日記に残しています。それだけではありません。夫から届いた大量のメッセージも、消さずにすべて残してありました。夫から何をされてきたのかを示す記録は、十分に残っているのです。
その後――。
弁護士を通して、私たちは離婚することになりました。私の日記や夫からのメッセージを見た義両親は私に謝罪し、元夫も自分のしてきたことを言い逃れできなくなったようでした。
慰謝料を含む離婚の条件についても話し合いを終え、私は新しい部屋へ引っ越しました。後から人づてに聞いた話では、元夫は慰謝料の支払いで貯金も底をつきかけ、あれだけ「自分の金だ」と豪語していたころの面影はもうないそうです。
一方の私はというと、あんなに縛られていた生活がうそのように、毎日を自由に過ごしています。最初は一人で暮らすことに不安もありましたが、今は一人暮らしが楽しくて仕方ありません。離婚して、ようやく自分らしい人生を取り戻せた気がします。
◇ ◇ ◇
相手の機嫌を損ねないように我慢を重ねていると、自分にとって当たり前だったはずの判断まで委ねてしまうことがあるのかもしれません。違和感を覚えたとき、その感覚を無視せず、自分を守るために距離を取ることも大切なのでしょう。関係を続けることより、自分の心身や生活を守る選択を優先してよいのだと考えさせられますね。
もし身近な人との関係に苦しさを感じているなら、一人で抱え込まず、カウンセリングや公的な相談窓口など、外部のサポートを利用することも検討してみてください。
■よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
ガイダンスで専門的な対応も選べます(外国語含む)
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