育児や家事はすべて私に任せきりで、息子は父親と顔を合わせる時間が少なく、すっかり懐かなくなっていました。
「たまには早く帰ってきて、息子との時間を作ってほしい」とお願いしても、夫は「会社を守る使命があるんだ。誰のために一生懸命働いていると思っているんだ」とモラハラめいた発言で丸め込もうとします。
社長が会社にいない!?
そんなある日、私も面識のある夫の会社の社員から電話がかかってきました。「社長と連絡がつかないのですが、ご自宅にいらっしゃいませんか? 大切な取引先との打ち合わせがあるのですが、姿が見当たらなくて……」とのことでした。
しかし、夫は朝、出かけたきり家には戻っていませんし、私にも何の連絡もありませんでした。すぐに私からも夫に連絡を入れましたが、夫から折り返しや返信が来ることはありませんでした。
その日の夜、深夜に帰宅した夫を問い詰めましたが、「部外者が仕事に口を出すな!」と怒鳴られ、まともに話し合いすらできませんでした。
それから数カ月がたったころ、夫が突然、態度を軟化させました。めずらしく夕方の早い時間に帰宅し、息子のお世話やスーパーでの買い物を自ら買って出たのです。「今まで家族を大事にできなくて悪かった」と神妙な顔で謝罪し、なんと禁酒宣言までしてきました。
さらに、夫は「本当はお前も外で働きたいんじゃないか? 子どもが生まれる前は楽しそうに働いてたもんな。働きたいなら応援するよ」と言い出したのです。
私は息子の出産を機に、それまで勤めていた会社を退職していました。営業職としてバリバリ働いていたころの私を気遣うような言葉でしたが、これまで「育児は母親の仕事だ! 子どもには母親の愛情が不可欠だ」と私が再び働くことに反対していた夫の急な心変わりに、強い違和感を覚えました。
突然の「家族ファースト」
夫の言動に違和感を抱いた翌日の夜――。
私は、この日も早く帰宅した夫が寝室のベッドの上に脱ぎ捨てたスーツのジャケットのポケットやかばんの中をこっそり確認しました。
なんとなく察しはついていましたが、中からはキャバクラの派手な名刺や、ブランド品を購入した高額なレシートがいくつも出てきました。さらに驚くことに、かばんの中には私が知らないもうひとつのスマホが入っていたのです。
画面には女性からのメッセージ通知が表示されており、待ち受けも女性との2ショット写真でした。仕事用のスマホでないことは明らか……。私はその場ではそれ以上スマホは調べず、夫を問い詰めることもしませんでした。
しかし、私は確信しました。毎晩のようにあった接待は、そのほとんどがうそで、実際は目当ての女性が働く店に通い詰め、貢いでいたのだと。
数日後、私は以前「夫がいない」と連絡をくれた社員に連絡を取り、こっそり事情を聞くことにしました。すると、夫の横柄な態度が原因で長年の取引先が次々と離れ、会社の業績が悪化し、資金繰りにも窮しているという現状を話してくれました。
夫の態度が急にやさしくなったのは、会社の経営が危うくなり、生活費を私にも負担させようとしているのではないかと疑いました。私は以前勤めていた会社に連絡を取り、再雇用について相談すると同時に、弁護士の無料相談へ行き、不倫の証拠をどのように集めるべきか相談しました。その後は弁護士の助言を受けながら証拠を集め、水面下で離婚の準備を進めました。
いい夫アピールの裏に隠された真実
数カ月後、以前の勤務先で再び働き始めると、夫はこれまで以上に家事や育児に精を出すようになりました。ある日、私が仕事から帰ると、夫は夕食を作って待っていました。
「今まで家族を大事にできなくてごめん」
「これからは家族最優先で生きる!」
得意げに決意表明をする夫に向かって、私は冷静に告げました。
「え、もう家族やめるけど?」
私が記入済みの離婚届と不倫の証拠を突きつけ、会社の経営状況についても把握していると告げると、夫は顔面蒼白になりました。「ふ、不倫なんかしていない! 彼女と会っていたのは、その、会社のことで相談していただけっていうか……経営悪化も俺のせいじゃない! 景気が悪いせいだ!」と見苦しく言い訳してきました。しかし、不倫についてはすでに言い逃れできないだけの証拠を確保しており、会社の状況についても社員から詳しく聞いていました。
その後、弁護士を通じた協議の結果、義母が夫に代わり、慰謝料と離婚後当面分の養育費を一括で支払ってくれました。それ以降の養育費については、夫が支払うことを書面で取り決めました。夫と不倫関係にあったのはキャバクラの女性でした。夫は店では指輪を外して独身を装っており、女性も既婚者だと気付くのが難しい状況だったことがわかったため、彼女には慰謝料を請求しませんでした。
それから1カ月後、離婚が成立し、私は息子を連れて実家へ戻りました。元夫の会社はその後、資金繰りが行き詰まり、倒産。社員への給与の未払いまで発生し、元社員たちが労働基準監督署などに相談していると元義母から聞きました。
一方、私は実家の両親の手を借りながら、育児にも仕事にも力を注いでいます。今の穏やかな日々を大切に、息子の笑顔を守っていきたいと思います。
◇ ◇ ◇
育児や家事を妻に押しつけ、不倫や会社の経営悪化まで隠していた夫。生活費を負担させるために突然いい夫を演じても、失った信頼を取り戻せるはずはありません。家族は、自分が困ったときだけ頼るための存在ではなく、日ごろから誠実に向き合い、支え合うべき存在です。パートナーの言動に不信感を覚えたときは、その違和感を見過ごさず、自分と子どもの生活を守るために冷静に行動したいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※一部にAI生成画像を使用しています。