新しい悩みの種
子どものころは、汚れを伴う仕事をする父を見て「大変そうだな」と思っていました。しかし、自分が仕事を引き継いでみると、店をきれいに保つことの大切さを実感。今ではやりがいを感じ、誇りを持って励んでいます。
そんなある日、いち取引先である高級レストランの店長が代わりました。新しく着任した雇われ店長は、とにかく横柄な人物。僕のことを「清掃員」と呼び、常に見下してきます。
それでも僕は、腹が立っても言い返さず、これまで通り黙々と仕事を続けていました。
店長の無理な要求
しばらくして、ついに僕にとって耐えられない出来事が起こりました。いつものように高級レストラン内をきれいにしたあと、店長から声をかけられたときのことです。
「おい、清掃代を半額にしろ」
突然の要求に驚く僕に、店長は「嫌なら今すぐ契約終了だ」と言い放ちました。さらに「清掃業者なんて恥だ(笑)」「誰にでもできる」と暴言を吐き続けます。
その場にいた女性従業員が「それはあまりにも…」と僕をかばうと、店長は「ただの従業員が偉そうに口出しするな」と彼女にも怒鳴りました。
清掃代を半額にすれば、これからも働くことはできます。しかし、これまでと同じ品質を半額で維持するのは困難です。葛藤した末、僕は「わかりました。契約終了で結構です」と告げました。
店長が「わかればいいんだ!」と吐き捨てて去ったあと、女性従業員が申し訳なさそうに謝ってきました。
僕は店長への怒りよりも、今後も彼の下で働く彼女のことが心配でした。そこで名刺を渡し、「もし何かあったら連絡して」と伝えて店を去りました。
トラブルが発生して急転開へ
それから数週間後、僕のスマホに着信がありました。相手は、あの日名刺を渡した女性従業員。電話に出ると、彼女は焦った様子で話し始めました。
なんと店長が本部に無断でコスト削減を進め、知り合いの安い清掃業者に仕事を変更していたというのです。その結果、厨房の排水設備の清掃が十分におこなわれず、汚れが詰まって汚水が逆流。店が営業停止の危機に陥っているというのです。
「店長はパニックになっているうえ、プライドが邪魔して、以前お願いしていたあなたには連絡できないみたいなんです。だから私が持っていた名刺を頼りに、こっそり電話しました」
僕は急いで専用の清掃機材を車に積み込み、高級レストランへ向かいました。店に到着すると、オロオロしている店長が僕の姿に気づき、走り寄ってきました。
「何をぼーっとしてるんだ! さっさと何とかしろ!」
謝罪もせず命令する店長に、僕は冷静に「以前と同じ条件で契約していただけるんですか?」と尋ねました。
「だから半額でいいだろう!」
「申し訳ありませんが、半額では無理ですよ」
僕がきっぱり断ると、店長はなおも食い下がりました。しかし、店を存続させるためには僕の力を借りるしかないと判断したのでしょう。最終的に店長が折れ、僕は以前と同じ条件で再契約することに。持参した機材と長年培ってきた技術を生かして頑固な詰まりを取り除き、無事にトラブルを解決しました。
横柄な店長の末路
今回のトラブルと、店長が本部に無断で清掃業者を変更していたことは、上層部にも伝わったよう。さらに、女性従業員が店長の横柄な態度についても報告したことで、店長の悪評は社内で広まっていったそうです。
その結果、プライドの高い店長は自主退職をしたとのこと。噂によると、現在はかつて彼が見下していた清掃業務や肉体労働のアルバイトを転々としているようです。
その後、店長に代わって新しい店長が就任しました。
新しい店長は、従業員や清掃業者を見下すこともなく、仕事に対しても誠実な人でした。以前の店長とのいざこざを気づかってか、「できるだけ、この店に関わってくれる人たちが働きやすい環境を作りたい」と言ってくれました。僕はこれからも自分の仕事に誇りを持って、清掃業務に励んでいきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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