兄の恋人に近づく弟…狙いは「豪邸と土地」!?
ある日、私は地元で割と有名な大地主の娘と知り合いました。何度か会ううちに意気投合し、やがて結婚を前提に交際することに。ところが、そのことを知った弟の態度が一変したのです。
私たちの交際を知った弟は、何かと彼女に近づくようになりました。私がやめるよう言っても、「話してるだけじゃん」と聞く耳を持ちません。「地主の娘なんだろ? 結婚したら、あの豪邸も土地も兄貴のものになるってこと?」
そして弟は、彼女に猛アプローチを開始。さらに彼女のお父さんにも、積極的に自分を売り込むようになったのです。
「僕なら家業だって支えられます!」「結婚したら、何でも手伝いますよ!」
私よりも押しの強い弟に彼女の気持ちも傾いてしまい……ついには、弟と彼女が結婚することになりました。落ち込む私の前で、弟は得意げに笑います。
「悪いな兄貴。大地主令嬢との結婚は俺がもらった」
「いずれ、この豪邸も広い土地も全部俺のものになるんだ!」
「あの家、良くない噂を聞きましたけど…」
どうやら弟は、結婚すればいずれ土地も屋敷も自分のものになると思い込んでいたようです。腹立たしく思いながらも、これ以上弟とかかわりたくなかった私は、「そうなんだ。よかったな」とだけ返しました。
その後、会社の女性に弟の結婚について話したときのこと。相手の家の名前を聞いた女性が、不思議そうな顔をしました。
「あれ? その家について、良くない噂を聞きましたけど……」
詳しく聞いてみると、なんとその一家が営んでいる事業は、ここ数年、経営があまりうまくいっていないらしいのです。さらに、「あの大きなお屋敷も売るらしいって聞きましたよ」と言われ、私は驚きました。
しかし、弟はすでに結婚を決めた身。お義父さんから事業や財産についてきちんと説明を受けているはずだと考え、あえて口を出しませんでした。
「この屋敷は売る」義父のひと言に弟は絶句
一方、弟は結婚後もすっかり浮かれていました。「これだけ土地があるんだから、もう会社員なんてやめてもいいよな」「これからは地主として悠々自適に暮らすぞ!」
ところが、そんな弟にお義父さんが告げます。「そういえば、この屋敷は近いうちに売却することになっているんだ」
思いもよらない言葉に、弟は固まりました。実は、お義父さんが営んでいる事業は資金繰りが厳しい状態。豪邸は維持費もかかるため売却し、その資金を事業の立て直しに充てる予定だったのです。慌てる弟に、お義父さんは当然のように答えました。
「土地はたくさんあるけど、そのほとんどは農地だよ」
「君が『家業も何でも手伝います』と言ってくれて、本当に助かった。これからは娘と一緒に、この土地を守っていってくれ」
「欲しかったもの、全部手に入っただろ?」
弟は青ざめました。義父は結婚前から、事業の経営が厳しいことや、農地の管理を手伝ってほしいことを説明していたようです。しかし弟は、「大地主の娘と結婚できる」ということで頭がいっぱい。「大地主」「豪邸」という言葉に舞い上がり、深刻には受け止めていなかったのです。
こうして弟の生活は一変。平日はこれまで通り会社へ行き、休日になると朝早くから農作業や土地の管理を手伝う日々が始まりました。しばらくして、私のもとに弟から電話がかかってきました。
「兄貴! あの家の事情、知ってたんだろ!? なんで教えてくれなかったんだよ!」
私はあきれて返しました。「俺だって、お前が結婚を決めたあとに人から噂を聞いただけだよ。それに、お義父さんから説明されてたんだろ?」そして、さらに続けました。
「昔から、俺のものなら何でも欲しがってたよな。彼女も土地も、お前が欲しがったものは全部手に入ったんだから、よかったじゃないか」弟は何も言い返せませんでした。多くの人に見守られて結婚したこともあり、大変ではあるものの、簡単には離婚できないようです。弟の結婚生活がこのまま続くことを願いつつ、穏やかな日々を送っています。
◇ ◇ ◇
人をうらやましく思うことはあっても、相手の大切なものや人間関係を壊してまで、自分の欲しいものを手に入れようとするのは考えものですよね。
また、立場や財産など目に見える部分だけにとらわれていると、その背景にある事情を見落としてしまうこともあるかもしれません。大切な決断をするときほど、自分に都合のいい部分だけを見るのではなく、相手の話にきちんと耳を傾け、慎重に判断したいですね。
【取材時期:2026年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。