これまで、夫は趣味や付き合いを優先し、家計の多くや家事育児は私が担ってきました。そんなほぼワンオペ状態の私をいつも気遣ってくれたやさしい娘が結婚するのは、うれしい半面、少し寂しいような複雑な気持ちです。
しかし、迎えた結婚式当日に信じられない出来事が起きます。
結婚式をドタキャン!?
結婚式の朝、式場近くのホテルに前泊していた私は、息子からの電話で目を覚ましました。「父さんはそっちに行ってる?」と聞かれましたが、もちろんホテルにはいません。
息子は自宅に寄ってから、夫と一緒に自宅から式場へ向かう予定でした。しかし、自宅へ寄ると夫の姿がないとのこと……。夫は昨夜遅くまで飲み会があるということで、自宅から息子と一緒に式場へ来る予定だったのです。
私は慌てて同じホテルに泊まっていた娘の部屋へ行き、事情を説明することに……。すると、娘は驚く様子もなく、呆れたように笑っていました。
時間は刻一刻と過ぎていきます。準備を進めながら夫のスマートフォンに電話をかけ続けると、ようやく電話がつながりました。しかし、電話口から聞こえてきたのは空港のアナウンス。なんと、夫は空港にいたのです!
父親に「気にしないで」という娘
「俺、両親とハワイに向かってるんだわ」あっけらかんと言う夫の言葉に、私は開いた口がふさがりませんでした。聞けば、義両親が以前から「元気なうちにハワイへ行きたい」と希望しており、娘の結婚が決まる前から、夫が格安ツアーを予約していたとのこと。
その後、急きょ決まった結婚式の日程と重なってしまったものの、「今からキャンセルして取り直したら高くつくし、言えば反対されると思った」と、私たちには黙っていたというのです。
さらに夫は、義両親には「娘も了承しているから大丈夫」と説明していたそう。私にも義両親にも都合のいいことを言い、勝手に話を進めていたことを知り、私は言葉を失いました。
すると、娘が私のスマートフォンを取り上げました。「こっちのことは気にしないでいいから、楽しんできてね!」娘はそう言って、あっさり通話を終えてしまいました。
父親がいなくても、これまでお世話になった人たちに感謝を伝えられればいいと笑う娘を見ると、不憫で涙が出そうになりました。
式後、娘夫婦からまさかの提案
新婦の父親が不在という前代未聞の事態でしたが、息子が夫の代わりを務めてくれたおかげで、結婚式は滞りなく進行しました。娘を思いやる友人たちや温かい親族に囲まれ、家族の絆を感じられる、笑いあり涙ありの本当にすばらしい式になりました。
式が無事に終わり、控え室でほっとひと息ついていたときのこと。娘の旦那さんとなったKくんと娘が部屋に入ってきて、顔を見合わせながら、私に思いもよらない提案をしてくれたのです。
「お義母さん、これからは自分のために生きてみませんか。しばらく僕たちと一緒にパリに来て、ゆっくり休んでください。思い切って、甘えてほしいです!」
実は娘は、家事や育児を私に丸投げし、自分の稼ぎは趣味に使い込んで好き勝手に生きてきた父親に、以前から嫌悪感を抱いていたそうです。せっかく子育てを終えた私がこれからも夫に振り回され続けるのを見たくないと言い、この機会に「夫からの卒業」を提案してくれたのでした。
その言葉に背中を押され、私はこれからの人生を見つめ直す決意をしました。
何も知らない夫が帰国
私はKくんと娘の提案を受け入れ、これからの生活に向けて慌ただしい数日間を送りました。勤めていたパート先には事情を話して退職の手続きをし、必要な荷物をまとめ、不要なものは可能な限り処分しました。
1週間後、何も知らない夫がハワイから帰国し、自宅に着いた途端に慌てた様子で電話をかけてきました。私が私物をすべて運び出し、私の生活の痕跡が完全に消えていたからです。
私は「今、娘夫婦と一緒にいるの。机の上に、私の記入済みの離婚届を置いてあるから。サインして提出しておいて」と伝えました。私は娘夫婦の家で、しばらくパリへ滞在する準備を進めていたのです。息子もすでに独立して家を出ているため、夫が頼れる家族は誰もいません。
突然の展開に夫は電話の向こうで「誰のおかげで暮らせていると思ってるんだ!」と激高しました。
同情できない夫の末路
しかし、夫は生活費をほとんど入れておらず、家計は私が掛け持ちで必死に働いたパート代と貯金の切り崩しで成り立っていた状態です。「あなたの給料は、全部あなたの趣味に消えていたじゃない。これからは、ひとりで頑張ってね」
そう伝えると、夫は言葉を失いました。その後、事の重大さに気づいた夫は何度も謝罪してきましたが、私の決意は固く、弁護士を立てて離婚を突きつけたところ、夫も観念し、無事に協議離婚が成立しました。
後日、ひとりで生活を続けることができなくなった夫は実家に戻ったようですが、高齢の義両親の介護問題に直面し、家事もできず途方に暮れているという話を耳にしました。
私は今、娘夫婦のサポートを受けながら、パリの美しい街並みを歩き、これまでにない穏やかな時間を過ごしています。これまでの狭い世界から抜け出し、第2の人生のスタートを切ることができたと感じています。
◇ ◇ ◇
子どもは、親の姿を思っている以上によく見ているものです。誰が家族を支えていたのか、誰が我慢していたのかを、言葉にしなくても感じ取っていることがあります。
「子どものために」と自分の気持ちを後回しにしてしまう人もいますが、親が穏やかに笑って過ごせることは、子どもにとっての幸せにもつながるのかもしれません。
家族を思うことと同じように、自分自身の気持ちに目を向けることも必要です。これまで頑張ってきた人ほど、これからの人生をどう過ごしたいのかを見つめ直し、自分のことも大切にしてほしいと思います。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。