「ずっと言えずにいたけど、俺はもう限界なんだ!」と声を荒らげる夫。何のことかわからず問い返すと、夫は父親になることへの不安をぶつけてきました。
だからと言って、なぜこのタイミングで――。痛みに耐えながらそう思っていると、夫はさらに「お前とは離婚する!」と続けました。
出産直前に消えた夫
「父親になるのが、ずっと怖かったんだ。ちゃんとやれる自信なんてなかった」「そんなときに、俺をもっと認めてくれて、俺が一番だって言ってくれる人と出会って……」
最近、夫が何か思い悩んでいるのは感じていました。それでも、まさかその逃げ場に別の女性を選んでいたなんて、思いもしません。
「……それ、誰のこと?」と問いかけると、夫はしばらく黙ったあと、私の幼なじみの名前を口にしました。
一瞬、聞き間違いかと思いました。私を通じて夫とも面識はありましたが、まさか2人が私の知らないところでそんな関係になっていたとは、想像もしていなかったのです。
私が混乱している間に夫は電話を切ってしまい、何度かけ直しても出てくれず、結局、夫が産院に来ることはありませんでした。私はわけがわからないまま、半ばパニック状態で出産。幸い、子どもは無事に生まれてきてくれました。
生まれたばかりのわが子を抱いて家に帰ると、夫の荷物がありません。リビングのテーブルには、記入済みの離婚届と夫の結婚指輪。その横に置かれたメモには、私の幼なじみと一緒になるという内容が書かれていたのです……。
信じられない気持ちで、私はすぐに幼なじみに電話をかけました。しかし、何度かけてもつながらず、メッセージを送っても返事はありませんでした。
その後、産後の体で連絡を取り合うのは簡単ではありませんでしたが、話し合いを重ね、親権や慰謝料、養育費の取り決めをして離婚が成立しました。
幼なじみからのマウント
あれから3年後——夫を奪った幼なじみから、突然メッセージが届きました。
『久しぶりの連絡にびっくりした~?』と、悪びれる様子もない幼なじみ。『彼と入籍して3年経つから、そろそろ子どもを考えてるんだよね』『先輩ママとして、いろいろ教えてほしくて連絡したの!』と、無邪気そうに言います。
ところが、用件はそれだけではありません。『彼、大手商社のエリートだから、私も専業主婦やれてるってわけ』『どう? あんたはそろそろ経営者のお父様に泣きついた?』と、マウントをとりつつ私の生活に探りを入れます。
私はあきれながらも『父には頼っていないの』『もともと働いていたし、職場の理解もあるから、子育てしながら働いているよ』と答えました。
すると幼なじみは『ラクな暮らしもできず、意地を張ってお父様に頭も下げられないなんて、本当に惨めっていうか……。私とは雲泥の差ね!』と私をバカにする言葉を投げかけてきます。
『あのときはエリート旦那を奪っちゃってごめんね♡ あんたは貧乏暇なし状態かしら? 私は買ったばかりのタワマンでラクさせてもらってまーす♡』
あまりの言われようにあきれつつ、私には気になることがひとつ……。『もしかして、何も知らないの?』と尋ねてみました。
勝ち誇っていた幼なじみの転落
『この間、母から聞いたんだけど、彼、私の実家に来たのよ』というと、『え?なんで?』とまったく心当たりがない様子の幼なじみ。
実は、元夫は私の父に頭を下げに来ていました。私との離婚を詫びに来たのではなく、会社を経営している父に「どうか雇ってください」と……。わらにもすがる思いだったのでしょう。
一流企業で働くエリートだったはずの元夫。しかし、仕事で大きなミスをしたことをきっかけに、それまでの勤務態度なども問題視され、会社を辞めることになったのだといいます。
買ったばかりのタワマンのローンも、このままでは支払いが厳しくなるそうです。
「妻にも働きに出てほしいと言おうと思っていたけど、『専業主婦最高』『二度と働きたくない』って毎日聞かされて……言えなくて……」元夫はそう言って、私の父に泣きついたと聞きました。
既読がついてしばらく経ってから、我に返ったように『なにそれ……嘘よ、そんなの聞いてない』『それで!? もちろん雇ったのよね!?』と立て続けにメッセージが届きました。
もちろん、父だって元夫のことを許してはいないので、雇うはずがありません。
そう伝えると『なんでよ! 彼、とっても優秀なのよ!?』『雇ってくれなきゃ、子どものこと考えられないじゃない!』と、幼なじみからのメッセージが止まりません。
『それよりも、分割にした慰謝料と養育費の支払い、しばらく滞ってるんだけど?』と言うと、『それならお父様のところで雇ってよ!じゃないと、その支払いすらできないのよ!?あんただって困るでしょ!?』と強気な態度を見せます。しかし、それとこれとは話が別です。
『別のところで就職して稼げばいいだけの話じゃない。うちの父に頼まなくたっていいでしょう』と言っても、幼なじみは『今すぐ就職しないといけないじゃない!』『だって来月のローンの支払い、迫ってるのよ!?』と繰り返すばかりでした。
『でも、それって私には関係ないよね?』私がそう返すと、幼なじみからは『そんなひどいこと言わないでよ……!』『私の幸せが崩れていく……』と、弱々しいメッセージが返ってきました。
私から全部奪っておいて、今さら助けてほしいなんて都合が良すぎます。金輪際関わるつもりはないこと、話がしたいなら弁護士さんを通してほしいこと、そして滞っている分は早めに支払ってほしいことや、支払われないままなら手続きを取るしかないということをはっきり伝えました。
それでも幼なじみは引き下がりません。許してくれとは言わない、土下座でもなんでもする、だからせめて父に元夫を雇うよう頼んでほしい、慰謝料と養育費の支払いも待ってほしい――そうまくし立てたあと、幼なじみとしての一生のお願いだから、とすがってきたのです。
『残念! あなたの一生のお願いは、小学生のとき……掃除当番を代わってあげたときに使ったじゃない』そう言って、私はやり取りを終えました。
その後――。
元夫と幼なじみは、それぞれの両親にお金を借りて滞っていた慰謝料と養育費をまとめて支払い、その後は毎月きちんと振り込んでくるようになりました。マンションは手放し、今は2人でコツコツと働いているようです。
こんな騒動があってもなお、わが子はすくすくと成長しています。これからも、わが子にできる限りの愛情を注ぎながら、一緒に前を向いて歩いていきたいと思っています。
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どんな事情があったにせよ、出産直前に家族を投げ出していい理由にはなりません。とはいえ、父親になることへの不安や迷いは、決して珍しいものではないでしょう。
だからこそ、ひとりで抱え込んで限界を迎える前に、その気持ちをパートナーや周囲に言葉にしておくことが大切なのではないでしょうか。妊娠期間は、2人で親になる準備をするための時間でもあります。
また、困ったとき、誰かに相談したいときには、専門機関に相談することもできます。抱え込まず、専門機関を頼るのも一案です。
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【取材時期:2026年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。