ところが、夫が頻繁に義実家へ通うようになってから、その穏やかな生活は一変したのです。
義実家へ通う夫とよそよそしくなった義母
数カ月前から、夫の帰宅時間が急に遅くなりました。休日になると決まって「実家を手伝ってくる」と言って、1人で出かけるように。
私も一緒に行こうとすると、「今日は荷物を運ぶだけだから」「母さんが体調を崩しているから、気を遣わせたくない」などと理由をつけて断られました。
さらに家にいるときも、夫はスマートフォンを手放さなくなりました。通知が届くたびに画面を伏せ、私が近づくとあわてて操作をやめることも……。
不審に思った私は、夫が義実家へ行った日に、義母へ電話をかけてみました。そのとき、夫が義実家にいたのは事実でした。
「ちょっと力仕事を頼んじゃったの。今度はあなたも一緒に遊びに来てね」
義母はそう答えましたが、その声はどこかぎこちなく感じられました。
私は結婚後、義実家のリフォーム費用の一部を負担したほか、生活に余裕がないと聞いてからは毎月仕送りもしていました。義両親を自分の親と同じように大切にしてきたつもりでしたが、このころから義母の態度までよそよそしくなっていました。
夫にも義両親にも避けられているように感じた私は、悩んだ末、調査会社へ夫の調査を依頼することにしたのです。
義実家で暮らしていたのは…
調査によって、夫は義実家へ通う一方で、ある女性とホテルを利用していたことが判明。その女性は夫の元交際相手でした。
さらに、義実家には元交際相手と3歳の子どもが暮らしていました。報告書には、夫と元交際相手、子ども、義両親がそろって食事や買い物へ出かける様子まで記録されていたのです。
夫は子どもと手をつなぎ、おもちゃを選び、傍目には父親そのものだったそう。夫が子どもから「パパ」と呼ばれている場面も確認されていました。
さらに調査を進めてもらったところ、その子どもが夫と元交際相手との間に生まれた実子だったこともわかりました。
夫が婚姻中に元交際相手と不倫していただけでなく、その間に子どもまで生まれていた——その事実に、私は言葉を失いました。
また、夫たちが買い物中、私からの仕送りについて「毎月送ってくれるんだから、生活費にも回せるし助かるよね」「ATMみたいなものだ」と話していたことも報告書に記載されていました。
私が義両親のために送っていたお金まで、元交際相手や子どもの生活費に充てられていたと知り、怒りで手が震えました。
子どもに罪はありません。しかし、夫と元交際相手が婚姻中の不倫と出産を隠し、義両親まで私を欺いていたことは、許せませんでした。
夫にとっての本当の家族
探偵から報告書を受け取った数日後、また「実家へ行ってくる」と言い出した夫。私は夫を見送ったあと、調査報告書を持って義実家へ向かいました。
インターホンを押すと、顔を出したのは義母。私の姿を見た途端、その表情がこわばりました。
「あら、急にどうしたの?」
義母は玄関先で話を終わらせようとしました。しかし、家の中から子どもの声と夫の笑い声が聞こえてくるのです。
「夫に用事があって来ました。中にいますよね?」
私が尋ねると、義母は返事に詰まり、観念したように私を家へ通しました。
リビングには夫と元交際相手、そして3歳の子どもが……。楽しそうに談笑していた全員が、私の顔を見た瞬間に黙り込みました。
「どういうことか、説明してくれる?」
私が尋ねると、夫はしばらく黙ったあと、大きくため息をつきました。
「バレたなら仕方ない……。この子は俺の子だ。こっちが俺の本当の家族なんだ」
あまりにも身勝手な言葉でした。元交際相手も悪びれることなく、夫の隣に座っています。
「私はあなたより前に、彼と付き合っていたの。この子のためにも、あなたが身を引いてくれない?」
その言葉を聞き、かえって冷静になった私。
「うん、知ってたよ」と答え、持参した調査報告書をテーブルの上に置きました。
報告書には、夫と元交際相手がホテルを利用した記録だけでなく、義両親を交えて過ごす様子や、私からの仕送りについて話していた内容まで残されています。
「あなたたちが不倫関係にある証拠はそろっています。弁護士にも相談済みです」
「離婚してください。あと、2人には慰謝料を請求します」
不倫が知られたことには開き直っていた夫たちも、証拠さえ押さえられていなければ、慰謝料は支払わずに済むと高をくくっていたのでしょう。ところが、報告書を突きつけられ、弁護士への相談まで進んでいると知ると、夫の顔から一気に血の気が引き、元交際相手も言葉を失いました。義両親も、自分たちの関与まで把握されていると知り、顔面蒼白に。
続けて、私は義両親にも伝えました。
「お義父さんとお義母さんへの仕送りは、今月からやめます。私が、夫の不倫相手との生活まで支える理由はありません」
すると、慌てて「だますつもりはなかったの。孫がいると聞いて、放っておけなかっただけなのよ」と言ってきた義母。
「でも、事情を知ったあとも私に嘘をつき、仕送りを受け取り続けましたよね。それをだましたと言うんです」
私がそう言うと、義母は下を向いて黙り込みました。
義父や夫も謝罪と言い訳を繰り返しましたが、私の気持ちは変わりませんでした。
「今後の連絡は、すべて弁護士を通してください」とだけ告げ、私は義実家を後にしました。
私を「ATM」扱いした一家が失ったもの
その後、弁護士を通じて話し合いを進め、夫との離婚は成立。夫と元交際相手には不貞行為に対する慰謝料を請求し、最終的には双方が合意した内容で支払われることに。
話し合いの中で、夫は結婚して約1年後に元交際相手と再会し、関係を持ったことを認めました。
元交際相手は夫が結婚したことを知っていました。それでも「本当は私と結婚するはずだった」と迫り、夫もそれに応じて関係を持ったそうです。
子どもが生まれたあと、夫は元交際相手に生活費を渡しながら、その存在を私や義両親に隠していました。夫は家庭を失いたくない一方で、元交際相手や子どもとの関係も手放せなかったのでしょう。
そして半年前、元交際相手が「このまま隠れて生活するのは嫌だ」「子どもも父親と一緒に暮らしたいはず」と義実家へ押しかけたことで、義両親にもすべてが明らかになったのです。
しかし、義両親が選んだのは私に事実を伝えることではなく、元交際相手と孫を受け入れ、夫と一緒に嘘をつき続けることでした。
私からの仕送りがなくなったうえ、夫と元交際相手には、子どもの生活にかかる費用に加えて慰謝料の支払いまで重くのしかかることに……。義実家にも余裕はなく、夫と元交際相手はお金を巡って衝突するようになったそうです。
夫は仕事にも身が入らなくなったようで、やがて退職したと共通の知人から聞きました。元交際相手も働き始めたそうですが、思い描いていたような生活にはならず、夫や義両親との口論が絶えなくなったのだとか……。
一方、私は新しい部屋でひとり暮らしを始めました。離婚直後は深く傷つきましたが、夫や義両親に気を遣わなくてよくなり、仕事にも集中できるようになりました。
再婚について考える余裕はまだありません。それでも、誰かの都合に振り回されるのではなく、自分自身のために人生を歩んでいくつもりです。
◇ ◇ ◇
信頼していた夫だけでなく、義両親まで一緒になって事実を隠していたと知れば、大きなショックを受けるのも無理はありません。家族だからと違和感に目をつぶるのではなく、自分をないがしろにする関係から距離を置き、自分自身の生活を守ることも大切なのではないでしょうか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。