夫は仕事上のミスをきっかけに異動となり、それに伴って役職を外れ、役職手当もなくなりました。家計を支えるため、専業主婦だった私は姉が勤めていた会社を紹介してもらい、働くことに。
ところが夫は、共働きになっても家事はすべて妻が担うものだと思い込んでいたのです。
昔のメッセージを“証拠”にした夫
異動後の夫は、帰宅すると玄関に靴を脱ぎ捨て、そのままソファに寝転がるようになりました。
私も夕方まで働き、帰宅後は食事の支度や洗濯、翌日のお弁当の準備に追われていました。それでも夫は手伝おうとせず、私が家事をする姿を横目にスマートフォンを眺めているばかり。
ある朝、私は夫に「今日は残業になりそうだから、夕食の準備をお願いできる?」と頼みました。すると夫は不満そうに顔をしかめたのです。
「はあ? 結婚する前、家事を頑張るって言っただろ。安らげる家庭にしたいとも言っていたよな。証拠だって残っているからな。これじゃ契約違反だろ!」
夫が見せてきたのは、交際中に私が送った「結婚したら、家事を頑張ってあなたを支えるね」というメッセージのスクリーンショットでした。
確かに私が送ったものでしたが、それは夫に「専業主婦になってほしい」と言われたからです。夫の収入が減り、私の勤務時間が増えたあとまで、すべての家事を引き受けると約束したつもりはありませんでした。
そこで私は、結婚直後に夫から送られてきたメッセージを見せました。そこには「体調が悪い日や帰りが遅い日は、俺が夕飯を作るよ」と書かれています。
「昔のメッセージを証拠にするなら、これもあなたの約束だよね。生活が変わったら、その都度分担を見直そうって話したでしょう?」
私がそう言うと、夫は何も答えずに視線をそらしました。
その後、家事の分担を曖昧にしないため、話し合った内容を一覧にして冷蔵庫へ貼りつけた私。私が残業する日の夕食の準備は夫、洗濯は曜日ごとに分担、ゴミは収集日の前夜にまとめるという内容でした。
しかし夫は「今日は疲れている」「俺の役目は外で稼ぐことだ」と言い、ほとんど守ろうとしません。さらには、話し合いを求めるたびにため息をついたり、舌打ちをしたりするように……。
私は念のため、夫とのメッセージを保存し、家事の分担状況や、話し合った日付と内容も記録しておきました。
残業から帰ると、家中がゴミだらけに!?
最初のうちは約束を守らないだけだった夫ですが、やがて嫌がらせのような行動が増えていきました。
使った食器は水にも浸けず放置。洗濯かごから服があふれていても知らん顔。まとめる約束だったゴミも、袋の口すら結ばず台所へ置いたまま。私が残業の日に「今夜の夕食とゴミ出しをお願いします」とメッセージを送っても、既読がついただけ……。
そんなある晩、仕事を終えて玄関のドアを開けた私は、目の前の光景に言葉を失いました。
床には空のペットボトルや缶が散乱。洗濯かごに入っていたはずの衣類はリビングの中央に積み上げられ、ゴミ箱の中身まで床にぶちまけられていました。
その傍らで、夫はテレビを見ながらくつろいでいたのです。
「お前、帰ってきたなら全部片付けろよ」
夫は悪びれる様子もなく私に命令しました。
「これ、あなたがわざとやったの?」と私が尋ねると、夫は足元の空き缶を蹴りながら鼻で笑いました。
「ああ。家事をサボる契約違反のダメ嫁には制裁が必要だからな。これに懲りたら、妻の役目をちゃんと果たせよ」
その言葉を聞いた瞬間、夫と夫婦であり続けたいという気持ちは消えてしまいました。
夫がぶちまけたゴミを、私は片づけませんでした。何もせず、必要最低限の荷物と仕事道具をまとめ、その日のうちに実家へ向かったのです。
離婚届を前にしても変わらなかった夫
翌日、私は役所で離婚届を受け取りました。ただし、感情に任せて提出するつもりはありませんでした。
姉にも相談し、これまでのメッセージや記録を整理し、今後の生活や共有財産について確認。それから夫へ連絡し、姉にも近くのカフェで待機してもらったうえで自宅へ戻ったのです。
私はテーブルに家事分担表と離婚届を置き、スマホの録音機能をONにしてから、夫に告げました。
「私は家事をしないとは言ってない。でも、共働きなのに全部押しつけられたうえ、わざと家を汚して制裁だと言われて、もう一緒には暮らせない。話し合うつもりがないなら離婚したい」
離婚を切り出してもなお、夫は反省するどころか、声を荒らげたのです。
「勝手に出ていって、今度は離婚届かよ! 出ていくなら、せめて俺のメシくらい作ってからにしろ。そんなに文句があるならこっちから離婚してやる!」
その言葉を聞き、夫は最後まで私を対等な伴侶ではなく、身の回りの世話をする存在としか見ていなかったのだと確信しました。
「わかった。離婚しましょう。だけどその前に、財産や荷物のこともきちんと決めたい」
私が淡々と返すと、夫は初めて焦った表情を見せました。その場では離婚届の署名を渋ったため、それから数週間かけて話し合い、預貯金の分け方や家財の処分、私物を引き取る日などを書面で確認しました。
双方が離婚条件に納得したあとで夫が離婚届に署名し、私が役所へ提出。離婚届が受理され、私たちの離婚は正式に成立したのです。
数カ月後、元夫から「家のことが何も回らない。もう一度やり直せないか」とメッセージが届きました。
私は「私が必要なのではなく、家事をしてくれる人が必要なだけでしょ? 復縁するつもりはありません」とだけ返信し、その後は連絡を断ちました。
迷いがなかったわけではありません。しかし、あのとき家を出たことで、私は誰かの顔色をうかがわず、安心して過ごせる生活を取り戻せたのだと思っています。
◇ ◇ ◇
結婚前に交わした言葉があったとしても、生活環境が変われば、そのときの状況に合わせて夫婦の役割分担を見直していくことが大切です。一度決めたことを絶対視するのではなく、お互いの負担や状況を踏まえて話し合い、調整していく必要があるでしょう。
また、自分の考えを一方的に押しつけたり、相手を罰するような行動で従わせようとしたりすれば、夫婦の信頼は大きく損なわれてしまいます。相手の言動に苦しさを感じたときは、我慢し続けるのではなく、自分がどのような関係を望むのかを考え、必要であれば距離を置くことも大切なのではないでしょうか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。