楽しみにしていた慰安旅行
そのころ、僕の所属する部署では業績がよかったことから、会社の補助を受けて慰安旅行をするという話が出ていました。僕も「どこに行くんだろう」「いつになるのかな」と、ひそかに楽しみにしていました。
そんなある日、以前から予定されていた取引先・B社との懇親会に参加することに。わが社からは僕とA山部長が出席する予定でした。
ところが、開始時間になってもA山部長が現れません。
何かあったのかもしれないと思い、僕が電話をかけると、部長はずいぶんのんびりした様子でした。話を聞くと、なんと今は部署のみんなでバーベキューをしているとのこと。そこで初めて、僕は今日が慰安旅行の日だったと知ったのです。
驚いて「僕は何も聞いていません」と伝えると、A山部長は「あれ、言ってなかったか」と軽い調子で返してきました。さらに、悪びれる様子もなく、「まあ、高卒の君が来ても話が合わないだろうし、留守番でちょうどいいじゃないか」とまで言ったのです。
A山部長は学歴を重視するタイプで、高卒で入社した僕を以前から何かと見下していました。それでも、まさか慰安旅行から意図的に外されるとは思っておらず、僕は言葉を失いました。
しかし、それ以上に問題なのは、今日の予定です。
僕がB社との懇親会について伝えると、電話の向こうのA山部長は急に黙り込みました。どうやら慰安旅行の日程を決める際、数カ月前から決まっていたB社との予定をすっかり忘れていたようです。
取引先が電話を代わると…
僕たちのやりとりを聞いていたB社の担当者も困惑していました。そして、「電話を代わっていただけますか」と言われたため、僕はスマホを渡しました。
担当者は、今日の懇親会では契約更新について最終確認をする予定だったことを伝えました。さらに、A山部長に直接確認してもらいたい書類もあるとのこと。
そこでようやく事の重大さに気づいたのか、A山部長は「すぐに向かいます」と伝えたようでした。しかし、慰安旅行先は遠方。今から戻ったところで、懇親会には到底間に合いません。
結局、その日は僕ひとりでB社の懇親会に臨むことになりました。
僕はまず、A山部長が欠席したことを改めて謝罪しました。その後は食事をしながら、今後の仕事について話すことに。すると雑談の中で、B社が今後展開を考えている新商品の話題になりました。
僕は普段から現場でさまざまな案件に携わっており、以前から「こんな企画なら面白いのではないか」と考えていた案がありました。
そこで思い切って話してみると、B社の皆さんは興味を持って耳を傾けてくれました。現場を知っているからこその視点だと評価してもらい、思いのほか話も盛り上がったのです。
A山部長はその後…
その後、B社から「今後は僕を中心にやりとりをしたい」と要望があり、A山部長は担当から外れることに。僕がメインでB社を担当することになりました。
さらに僕は、これまでA山部長から受けてきた言動について人事部にも報告しました。
すると、同じように学歴などを理由に見下され、嫌な思いをしていた社員がほかにもいたことが判明。人事部が聞き取りを進めた結果、A山部長は別の部署へ異動となりました。
高卒というだけで見下されることには、ずっと悔しい思いをしてきました。それでも今回、学歴ではなく、これまで積み重ねてきた経験や仕事ぶりを評価してもらえたことは、大きな自信になりました。今では、自分の仕事により誇りを持って向き合えるようになったと感じています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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