約95%の赤ちゃんが眠った!? 話題の音に寄せられた声
――『赤ちゃんがすぐに寝る音』が話題になりましたね。具体的に、どのような声が届いていますか?
一般社団法人 千葉音声研究所:私たちに届いたコメントや問い合わせを数えてみると、約95%が「赤ちゃんが眠った」という内容でした。とはいえ、これは臨床試験の結果ではありません。わざわざ感想を送ってくださった方のなかでの95%なので、「使った人全体の95%が眠った」という意味ではないんです。
もちろん、すべての赤ちゃんが眠るとは考えていません。音への反応は、赤ちゃんによって違います。
それでも「久しぶりに子どもの寝顔をかわいいと思えた」「久しぶりに夫婦の時間を作れた」という声が届きました。そういう言葉をいただくと、この音源を作った意味があったと感じます。
――赤ちゃんだけでなく、大人にも変化があったそうですね。
一般社団法人 千葉音声研究所:そうなんです。もともとは4歳くらいまでの子どもを想定していました。ところが、子どもに聞かせていたら、親のほうが先に眠ってしまったという声も届いたんです。
高齢の方からも「自分が眠るために使いたい」という問い合わせがありました。私たちが思っていた以上に、幅広い年代の方に効果を実感していただいています。

「泣き止まない」ことから起こる虐待の連鎖を止めたかった
――赤ちゃんの寝かしつけに目を向けたのは、なぜですか?
一般社団法人 千葉音声研究所:きっかけのひとつは、仕事で触れた事件でした。私たちは普段、声や音の鑑定や分析をしているのですが、赤ちゃんが泣き止まないことで親が追い詰められ、虐待や死亡事件にまでつながってしまったケースがあったんです。
寝不足によるストレスや育児分担の喧嘩によって、夫婦仲が悪くなり、離婚してしまうケースもありました。
赤ちゃんが泣くのは当たり前です。すんなり寝てくれないというのも珍しいことではありません。でも、何をしても泣き止まない、眠ってくれないという日が続けば、親もどんどん余裕がなくなってしまいます。
「音の仕事をしている自分たちに、何かできないだろうか」と思いました。だったら、赤ちゃんが眠りやすい音を作れないか。赤ちゃんが眠ってくれれば、その間だけでも、親は30分、1時間と休めますよね。せめて、その時間を作りたいと思ったんです。
そこから文献を調べ、試作品を作り始めました。ちょうどそのころ、テレビ東京から赤ちゃんの睡眠に関する企画の相談をいただき、本格的に音源を作ることになりました。
――ご自身はシングルで子育てをしてきたとうかがいました。子育てをする中で、ひとりではどうにもならない限界を感じた経験があったのでしょうか?
一般社団法人 千葉音声研究所:はい、そうなんです。私は子どもが3歳のころから、シングルファザーとして子育てをしてきました。だから、子どもが寝てくれないときの親の気持ちはよくわかります。
もちろん、育児の相談窓口や支援してくれる場所はあるでしょう。でも、本当につらいときって、「後日、相談してください」と言われても、「今、なんとかして」と思うんですよね。
赤ちゃんはずっと泣いている。自分ももう限界。でも、相談したからといって、目の前の状況がすぐに変わるわけではありません。
だから、その場ですぐに使えて、つらい時間を少しでも楽にできるものを作りたかったんです。私たちなら、それを音楽で実現できるかもしれないと思いました。
――ご自身の子育てで、寝かしつけに苦労した経験や、今回の開発のヒントになった出来事はありますか?
一般社団法人 千葉音声研究所:うちの子は、そこまで寝ない子ではなかったんです。それでも、「もう寝てくれ」「少し静かにしてくれ」と、イライラしてしまうことはありましたし、育児をめぐって夫婦げんかになることもありました。
だからこそ、なかなか寝てくれないお子さんを育てているお母さんやお父さんは、どれほど大変だろうと思ったんです。
もちろん、わが子はかわいい。それでも、「かわいい」という気持ちだけでは乗り切れないことが、育児にはたくさんあります。そんなお母さんやお父さんの負担を少しでも軽くしたい。その思いが、今回の音源を作るきっかけになりました。
実は、子どもが小さかったころ、よくある寝かしつけに効くといわれる音を試したことがありました。でも、うちの子はまったく眠らなくて。
私は音の仕事をしているので、聞いた瞬間に「この音では寝ないだろうな」と思いました。その音が、赤ちゃんを寝かせるには少し違うと感じたんです。
もちろん、赤ちゃんによっては、すでにある音で眠れる子もいると思います。ただ僕は、どんな音を聞くと人が落ち着くのか、楽しい気持ちになるのかを研究してきました。その知見を生かして、より多くの赤ちゃんに届く音を作りたいと思ったんです。
脈拍や呼吸まで計算!『赤ちゃんがすぐに寝る音』はどう作った?
――そもそも、赤ちゃんが眠りやすいのは、どんな音なのでしょうか?
一般社団法人 千葉音声研究所:『赤ちゃんがすぐに寝る音』を作るとき、まず考えたのが「赤ちゃんって、どんなときに眠るんだろう?」ということでした。考えていくなかで、眠りにつくためには「安心できること」が何より大切だと気づいたんです。
だから、親がそばにいるような感覚を、音でどう作るか。そこから考えていきました。
――具体的にはどのような音が安心につながるのでしょうか?
一般社団法人 千葉音声研究所:まず、曲のテンポは、子育て世代に多い30代の女性がリラックスしているときの脈拍をもとに決めました。
その後ろで流れている「サーッ」という音は、ずっと同じ大きさではありません。眠っている女性の呼吸に合わせて、ゆっくり大きくなったり、小さくなったり——。親がすぐそばで呼吸しているように感じてもらえたら、と考えたんです。
メロディーも、急に高くなったり低くなったりさせず、できるだけゆるやかにしています。急に高い音が鳴ると、赤ちゃんが「何の音だろう」と気になって、目を覚ましてしまうかもしれません。
弾むようなリズムは使わず、一度に鳴らす音も基本は2つ。音の重なりが変わる間隔まで決め、なるべく赤ちゃんを驚かせない作りにしています。
ただ、曲の最初だけは別です。泣いている赤ちゃんに「ん?」と気づいてもらうため、あえて違う音を入れました。具体的にどんな音なのかは……ごめんなさい。企業秘密です。
――緻密な計算や理論に基づいて作られているんですね。オルゴールを選んだのには、何か理由があるのでしょうか?
一般社団法人 千葉音声研究所:実は、最初からオルゴールに決めていたわけではありません。ピアノやハープ、クラシックギター、チェロなど、いろいろな楽器を検討しました。
ただ、『赤ちゃんがすぐに寝る音』はスマートフォンで聞いてもらうことを想定しています。スマートフォンのスピーカーは小さいので、出せる音にはどうしても限界があるんです。

そこで候補から外したのが、ピアノです。ピアノは目の前で聞くと、低い音まで豊かに響きますよね。ところが、スマートフォンでは低音がうまく再生されず、本来の響きとは違って聞こえてしまいます。
最後まで迷ったのは、沖縄三線でした。温かみがあり、ゆったりとした気持ちになれる音色だからです。ただ、生演奏なので1曲ずつ録音する必要があり、制作面での難しさがありました。
そこで選んだのが、オルゴールです。もともと高めの音が中心なので、スマートフォンでも、作ったときのイメージに近い音を届けられます。音色の心地よさはもちろん、どんな環境で聞いても響きが変わりにくいことが、最終的な決め手になりました。
――楽器だけでなく、曲全体の流れにも工夫があるのでしょうか?
一般社団法人 千葉音声研究所:音源は約14分52秒あるのですが、終わりが近づくにつれて、テンポが少しずつ遅くなっていきます。ゼンマイがだんだん緩んで、オルゴールが静かに止まっていく。そんなイメージです。
曲を繰り返し再生すると、ゆっくりになったテンポが、次の瞬間には最初の速さへ戻ってしまいます。せっかく赤ちゃんがうとうとしているのに、その変化で目を覚ましてしまうかもしれません。だから、基本は1回で終わる作りにしました。
――では、一度聞いても眠らなかったときは、どうすればいいですか?
一般社団法人 千葉音声研究所:自動で連続ループさせることはあまり推奨していませんが、1回の再生で眠らなかった場合は、保護者の判断でもう一度同じ音源を流しても問題ありません。また繰り返し聞くうちに赤ちゃんが音に慣れてきたと感じたら、3種類のうち別のオルゴールに変えても大丈夫です。
どの音源も、メロディーや音の重なり、呼吸のような「サーッ」という音が、それぞれ決まったリズムで変化していきます。聞いた印象は、やさしいオルゴールの音色ですよね。でも実は、その中身はかなり細かく計算されているんです。
――『赤ちゃんがすぐに寝る音』を開発するにあたり、参考にした研究などはありますか?
一般社団法人 千葉音声研究所:赤ちゃんの睡眠や安心感、脈拍、呼吸について書かれた文献を調べました。そこに、これまで音の仕事で培ってきた作曲や音響の知識を合わせています。
ただ、大勢の赤ちゃんに聞かせて試したわけではありません。文献で調べたことと、これまでの経験をもとに計算し、「この作りなら、眠りにつながりやすい音になるのではないか」と考えて、まず音源を作りました。
完成後は、テレビ東京をはじめ、いくつかの番組で実際に赤ちゃんに聞いてもらいました。そこで赤ちゃんが眠る様子が見られ、その後は一般の方からも、たくさんの声が届くようになり、改めて効果を実感したんです。
――『赤ちゃんがすぐに寝る音』の音づくりで特にこだわったところはありますか?
一般社団法人 千葉音声研究所:オルゴールの後ろに流れている、呼吸のような「サーッ」という音です。

雨や波のような「ザーッ」という音は、赤ちゃんの寝かしつけによいといわれていますよね。ただ、こうした音には高い音も含まれているため、赤ちゃんには少し強く聞こえることがあります。驚いて泣き止むことはあっても、安心して眠るための音としては、必ずしも適しているとは限りません。
そこで、高い音を抑え、よりやわらかく聞こえるようにしました。この音を「ピンクノイズ」といいます。穏やかな雨や人の呼吸に近い音で、赤ちゃんがびっくりせず、安心できるようにオルゴールの後ろに重ねています。
経済環境にかかわらず、誰でも使える音源に
――赤ちゃんの寝かしつけにかける思いは、ここまでのお話から伝わってきました。一方で、これだけの時間と手間をかけて作った音源を、なぜ無料で公開したのでしょうか?
一般社団法人 千葉音声研究所:必要な人が、お金のことを気にせず使えるようにしたかったからです。
たとえ10円、100円でも、お金を払う形にすると、そこで使えなくなる人がいます。クレジットカードを持っていない方もいますし、オンラインでの支払い方がわからない方もいます。
私たちは、学校に通うことが難しい子どもたちの学びや居場所を支える「フリースクール」も運営していて、数千円を払うことが難しい家庭や、クレジットカードを持てない家庭が実際にあることを知っています。
この音源で、たった1組でも親子が救われるかもしれない——そう考えたら、お金はもちろん、支払い方が壁にならないよう、無料で届けたいと思ったんです。
――今後の音源も、無料で聞けるのでしょうか?
一般社団法人 千葉音声研究所:最初に出したオルゴール楽曲3曲は、これからも無料で聞けるようにするつもりです。
一方で、今後も新しい音源の開発を続け、必要な方に長く届けていくために、一部の音源は1曲220円で配信しています。
でも、子どもの命を守ることや親の負担を軽くすることにつながる音なら、できるだけ無料で届けたいんです。私たちにできることがあるなら、これからも協力していきたいと思っています。

――家庭はもちろん、他にもさまざまな場所で活用できそうですね。
一般社団法人 千葉音声研究所:実際に、ある保育園でお昼寝の時間に流したところ、普段は走り回っている子どもたちが、次々と眠り始めたそうなんです。園の方もびっくりして、問い合わせをくださいました。
日本小児科医会でも紹介していただいて、小児科の診察中などに使われているという声も届いています。家で毎日頑張っているお母さんやお父さんはもちろん、保育園や小児科など、子どもに関わる方たちにも使ってもらえたら、うれしいです。
もちろん、この音源ですべての赤ちゃんが必ず眠るわけではありません。それでも、寝かしつけに悩んだときに試せる、一つの選択肢になれば嬉しく思います。お母さんやお父さんがほんの少しでも休み、気持ちを整えることは、赤ちゃんを守ることにもつながるはずです。
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「お願いだから、少しだけ寝て」。泣き続ける赤ちゃんを抱きながら、そんな言葉が頭に浮かんだことのあるママやパパもいるのではないでしょうか。
赤ちゃんが悪いわけではない。わが子を「かわいい」と思う気持ちも変わらない。それでも、眠れない夜が続けば、心も体も限界に近づいてしまいます。
この音源を聞けば、すべての赤ちゃんが必ず眠るわけではありません。それでも、「今すぐ何か試したい」と思ったときに、選べるものが一つあるだけで、救われる夜もあるはずです。
子育ては、「かわいい」という気持ちだけでは乗り切れない夜があります。だからこそ、使えるものには頼っていい。ベビーカレンダーも、眠れない夜を頑張るママやパパに、「一人で抱え込まなくていい」と思ってもらえる情報を届けていきます。
