夫の希望で退職したのに「ニート」扱い
このところ、平日だけでなく土日や祝日まで仕事に出ることが増えた夫。一緒に過ごす時間がほとんどなくなり、ある朝、私は出勤前の夫に「最近、ひとりで過ごす時間ばかりで寂しいな」と本音を漏らしました。
すると夫は、実家にでも遊びに行ってくればいいと言いました。そこで私が「じゃあ、お母さんと温泉にでも行こうかな」と何げなく返すと、夫の表情が変わりました。
「その金はどこから出すんだよ。俺が稼いだ金だろ?」
「ニートなんだから無駄づかいするな」
私は言葉を失いました。そもそも、私が仕事を辞めたのは、夫本人に「家にいてほしい」と頼まれたからです。それなのに、まるで私が自分の意思で働かず、夫に養ってもらっているだけのような言い方をされたことが納得できませんでした。
ただ、最近は仕事が忙しそうだったため、疲れていて余裕がないのかもしれないと思い、その日は言い返さずにやり過ごしました。しかしその後も、私を見下すような発言は何度か続きました。
そんな数日後、何げなくSNSを見ていた私は、A美の投稿に目が留まりました。料理の写真とともにレストランの店名と場所が記されており、そこは夫が少し前に「出張で行く」と話していた地域でした。
さらに写真をよく見ると、テーブルの端に男性の腕が写り込んでいることに気付きました。その手首には、夫がいつも身に着けているものとよく似た腕時計が見えたのです。もちろん、同じ腕時計を持っている人はほかにもいるでしょう。それでも、夫の出張先とA美が行ったレストランの地域が重なっていることもあり、私は気になり始めました。
その日の夜、帰宅した夫に「この前の出張って、A美さんも一緒だったの?」とさりげなく尋ねてみました。夫はすぐに「違うよ。A美とは部署も違うし、一緒に出張するような仕事じゃない」と否定しました。
たしかに偶然が重なることもあるかもしれません。それでも、夫の出張先とA美の投稿した場所が重なっていたことが頭から離れず、私はあの投稿がますます気になるようになりました。
SNSの投稿とレシートが重なって
それから数日後、さらに気になるものを見つけました。夫からスーツをクリーニングに出してほしいと頼まれ、ポケットの中身を確認していたときのことです。中から出てきたレシートの店名に見覚えがありました。A美がSNSに投稿していた、あのレストランだったのです。
日付を確認すると、夫が出張していた日と一致していました。A美とは一緒に出張していないと話していた夫。それなのに、夫が行ったであろう店と、A美がSNSに投稿していた店が一致していたのです。
もちろん、それだけで2人が一緒だったと断定することはできません。ただ、最近急に増えた残業や出張、私に対する態度の変化まで思い返すと、偶然だと言い切ることもできなくなりました。
私は、疑いながら夫と暮らし続けるより、本当のことを知りたいと思うようになりました。そこで自分で探偵事務所を探し、夫の行動について調査を依頼することにしたのです。
「仕事」と言っていた夫の本当の行動
探偵事務所に調査を依頼して間もなく、私の誕生日が近づいてきました。以前から夫とは食事に出かける約束をしていたのですが、前日になって突然、「どうしても外せない仕事が入った。泊まりになるかもしれない」と言われたのです。SNSやレシートの件もあったため、私はこの日の行動についても調べてもらうことにしました。
後日受け取った調査資料には、夫とA美が休日や退勤後に2人で会い、複数回にわたって宿泊施設に出入りする様子が記録されていました。さらに、私の誕生日にも、夫は「仕事」と言いながらA美と一緒に過ごしていたことがわかりました。
これまで私は、夫が仕事だと言うたびに「忙しいのだから仕方がない」と自分に言い聞かせてきました。しかし、調査結果を見たことで、もう夫の言葉をそのまま信じることはできなくなりました。
私は調査資料を持って弁護士に相談し、離婚に向けて準備を始めることに。その後、夫には詳しい理由を告げず、「しばらくひとりになりたい」とだけ伝えて実家へ戻りました。
すると夫からは、「どうしたんだ?」「早く帰ってこい。家事はどうするんだ」「家がぐちゃぐちゃだぞ」と何度も連絡が届きました。
結婚してから、家事のほとんどは私が担っていました。夫は自分で食事を用意したり、洗濯や片付けをしたりすることもほとんどなく、私が家を空けた途端に生活が回らなくなったようです。
それでも私はすぐには戻らず、気持ちを整理することにしました。そして後日、両親にも同席してもらい、夫と話し合うことにしたのです。
話し合いの場で、私は調査資料を夫の前に置きました。「資料には、A美と仕事終わりに2人で会ったり、何度も宿泊施設に行ったりしていると書かれている。これはどう説明するの?」と聞くと、夫は黙り込んでしまいました。
さらに私は、夫から「家にいてほしい」と頼まれて仕事を辞めたにもかかわらず、その後は働いていないことを理由に何度も見下されたことについても伝えました。
そして最後に、はっきりと言いました。
「もう夫婦としてやり直すつもりはない」
これまで私には強い口調で言い返していた夫でしたが、そのときはうつむいたまま何も言いませんでした。
A美についても弁護士に相談し、今後の対応を検討することにしました。
自分で生き方を選ぶ生活へ
その後、夫とは離婚することで話がまとまりました。夫に対する慰謝料請求についても、弁護士を通じて話し合い、合意に至りました。そして私は以前働いていた会社に相談し、再び仕事に戻れることになりました。
振り返ると、つらかったのは夫の裏切りだけではありません。2人で決めたはずの専業主婦という選択を、後になって私を見下す材料にされたことにも傷ついていました。
当時は「仕事で疲れているから」と受け流していましたが、自分の中に残った違和感まで否定しなくてよかったのだと思います。結果は望んだものではありませんでしたが、事実を確かめ、自分で今後を選んだことで、少しずつ生活を立て直せるようになりました。
今は再び仕事をしながら、自分で選んだ生活を大切にしています。
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夫婦で話し合って決めたはずの選択が、後になって一方を見下す理由に変わってしまえば、関係の土台そのものが揺らいでしまいます。今回の出来事は、生活を支える形が違っていても、互いの役割や選択を尊重できる関係であることの意味を考えさせられるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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