育休中の私に「家事を完璧にしろ」と迫る夫
ある日の夜、散らかった部屋を見た夫が「俺は仕事をして疲れて帰ってきているのに、なんでこんなに散らかってるんだ。育休で暇なくせに家事くらい完璧にやれよ」と不満をぶつけてきました。
私が「2人の子どものお世話をしながらだと、完璧にはできない」と伝えると、夫はさらにヒートアップしました。
「俺はお前より稼いでいるんだぞ。うちの部長の奥さんは、小さな子どもがいながら家事も育児も完璧にこなしているそうだ。お前も少しは見習え!」
夫が最近プロジェクトリーダーに抜擢され、プレッシャーを感じているのは知っていましたが、私を見下すような言葉にはがっかりしました。そこで私は「わかった。徹底的にやるね」とだけ返し、ある計画を立てることにしました。
偶然のつながりと、ママ友との逆襲計画
実は、夫が引き合いに出した「部長の奥さん」には心当たりがありました。長女の保育園のママ友の中に、夫が話していた部長と同じ苗字の人がいたのです。以前、ママ友の夫が私の夫と同じ会社に勤めていると聞いており、珍しい苗字だったので、「もしかして……」と思いました。
翌日、長女を保育園に送りに行ったとき、思い切ってそのママ友に声をかけてみると、やはり彼女が夫の言う「部長の奥さん」でした。私が夫の発言を伝えると、彼女は驚いた後、思わず笑い出しました。
「完璧なんてとんでもない! うちは夫と家事・育児を分担しているし、たまに家事代行サービスも頼んでラクしているわよ。子どもを見ながら家のことをひとりでなんて無理よ!」
夫が話していた内容とは、まるで違っていました。翌日、再び彼女と話すと、昨日の夜、彼女からわが家の事情を聞いた部長も「それはずいぶん誤解しているな」と苦笑していたそうで……。
「うちだって夫婦で協力しているから何とか回っているんだ。せっかくだから、彼にも実際に家事をやってもらったらどうだろう」と言っていたのだとか。
するとママ友から、「うちの夫も一緒に、みんなで食事をしない?」と提案されました。その場で話がまとまり、金曜日にわが家に部長家族を招き、たこ焼きパーティーをすることになりました。
そして、その日の夜、私は徹底的に家中を掃除し、整理しました。夫は私の様子を見て「毎日それくらいちゃんとやれよ」と言ってきました。あきれましたが、その言葉は無視して夫に「明日は保育園のお友だち家族を招いて、うちで夕飯を食べるから早く帰ってきてね」とだけ伝えておきました。
帰宅した夫を待ち受けていた「地獄のたこパ」
そして金曜日の夜、夫が帰宅してリビングの扉を開けると、そこにはエプロン姿の部長がテーブルに夕食を並べていました。私はママ友とおしゃべりをしながら、ソファでくつろぎ、子どもたちは仲良く遊んでいました。
驚きのあまり言葉を失う夫に向かって、部長は笑顔で言いました。
「お邪魔しているよ。妻から話を聞いてね。今日は日ごろの奥さんたちをねぎらうために、夕飯は男性陣で準備だ! さあ早く手を洗って!」
上司である部長の前で家事に不慣れなところを見せることになり、夫は見るからに気まずそうでした。案の定、夫は調理器具の場所すらわからず、包丁さばきもおぼつきません。使ったボウルや包丁を出しっぱなしにしてキッチンをぐちゃぐちゃにする夫を見て、部長は苦笑いしながら話しました。
「仕事も家事も同じだよ。段取りをして効率的に進めないと。ここまで家事を回してくれている奥さんに感謝しないとね」
その後も、4歳の長女に十分冷ましていないたこ焼きを食べさせようとして私に止められたり、たこ焼きの生地をこぼしたりと、夫の家事・育児への不慣れさは明らかでした。ついに部長から「家事と育児をひとりでこなすのは大変だろ? 君は奥さんの苦労がわかっていないようだな」と諭され、夫はすっかり縮み上がってしまいました。
私とママ友は、目を合わせてにんまり。部長が焼いてくれたたこ焼きをおいしくいただきました。
それ以来、夫は自分の至らなさを痛感したようで、「完璧」を求めることはなくなりました。休日は率先して掃除をしたり、子どもたちの遊び相手をしたりしてくれるようになり、少しずつチームとして家庭を回せるようになっています。
◇ ◇ ◇
「育休中だから暇」「自分のほうが稼いでいるから家事・育児は妻がやって当然」という夫の考え方には、モヤモヤしてしまいますね。育休中であっても、子どものお世話をしながら家事までひとりで完璧にこなすのは簡単なことではありません。家事も育児も、どちらか一方だけが背負うものではないでしょう。家庭を無理なく回していくためにも、夫婦でお互いの負担を理解し、できることを分担して支え合うことが大切です。忙しい毎日の中でも相手の頑張りを当たり前と思わず、感謝を伝えながら協力できる関係を築いていきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。