「毒だから!」ひとり無添加弁当を強いるママ
ある週末、小学5年生の次男の友だちを自宅に招いて、お泊まり会を開催しました。集まったのは次男と仲良しの5人に加え、最近転校してきたAくんも急きょ参加することになりました。
Aくんを連れてきたママとは、この日が初対面。Aくんママは、あいさつもそこそこに、夕飯用に用意していた食卓のホットプレートを見るなり、「これは?」と露骨に顔をしかめます。私が「夕飯はお好み焼きを作ろうと思って」と伝えると、彼女は「えっ! そんな毒みたいなもの、うちの子には食べさせないで」と衝撃の発言。
そして「わが家は子どもの健康のため、添加物や加工品を一切排除する方針なんです。市販のソースや粉なんて害でしかないわ。だから無農薬米のおにぎりと無添加おかずのお弁当を持参しました。おやつもこちらが持参した有機野菜チップス以外厳禁です」と冷たく言い放ったのです。
その言葉に、私は面くらうばかり。手伝いに来てくれていた他のママ友たちも、一瞬で凍りつきました。初対面で他人の家の食事を「毒」呼ばわりする彼女の態度に、私は「何だこの人……」と内心呆れていました。
夕食時、リビングには子どもたちの歓声があふれます。「うまい!」と盛り上がる中、Aくんだけが離れた席で、蒸し野菜とししゃもが入った無添加のお弁当を黙々と食べていました。「いいなぁ」とポツリ漏らしたAくんの寂しそうな視線の先には、焼きたてのお好み焼きが。全員にアレルギーがないことは確認済みでしたが、無添加食材以外は食べさせるなと強く言われたため勝手に与えることはできず、「ごめんね」と伝えるしかありません。栄養バランスが整ったお弁当とはいえ、一人だけ違う食事を強いられるAくんの姿は見ていて気の毒でした。
Aくんは朝食用にオートミールを持参していたので、翌朝、また彼だけが嫌な思いをしないよう、私は開店直後のスーパーへ走り、他の子たちの分としてオートミールを購入。「今朝は、みんなでオートミールにしよう。Aくんは持ってきたやつを食べてね、みんなはこれだよ」と提案すると、Aくんは「みんなと同じ!」と大喜び。次男たちも賛成し、一緒に楽しそうに食べていました。
朝食を終え、しばらくすると、ママたちが迎えにやって来ます。私は、Aくんママに、朝食の一件を伝えると、彼女の顔色が豹変しました。「はぁ!? 何してくれてんのよ! 余計なことしないで! 他の子にまでオートミールを用意して『みんなで合わせました』なんて同情されたら、まるでうちの教育方針のせいで息子が浮いてるみたいじゃない! 頼んでもいない余計なお世話よ!」と突然の大声。さらに「うちの厳選オーガニック品と、あなたがスーパーで買った安物を同列にしないで。それに息子の服からソースのにおいがするわ。まさか食べさせの!?」と玄関先でまとめていた前日の服まで取り出し、においをかいで怒鳴り散らします。
私は「いいえ、一切食べさせていません」と断ったうえで、「でも、Aくんはみんなと一緒でなくて寂しそうでした。親のこだわりを押し付け、子どもを孤立させることが、本当に子どものためになるのですか?」とはっきりと告げました。すると、Aくんママは一瞬言葉に詰まりましたが、「いいのよ、これで!」と言い残し帰っていきました。
しかし、話には続きがありました。数日後、ママ友たちと買い物に出たとき、衝撃の光景を目撃します。なんとAくんママが駅前で、ひとりで特大バーガーを食べていたのです。ママ友の一人が「あら、毒を食べてるんですか? 添加物や加工品を一切排除する方針だったのでは?」と声をかけると、パニックになった彼女は「ち、違うわよ! これはストレス発散! 子どもに完璧な食事をさせるために、私がどれだけ我慢して神経すり減らしてるかわかってないくせに! うるさいわね!」と逆ギレ。自ら「子どもの完璧な管理」が自分のストレスになっていたことを暴露して、逃げ出しました。
このことが広まり、Aくんママは周囲からの冷ややかな視線に耐えかねてママ友グループから孤立。一方のAくんは、お泊まり会でも楽しそうにおやつを頬張るなど、以前の寂しそうな面影が消えてすっかり表情が明るくなりました。Aくん本人に話を聞くと、Aくんママは自分の愚かさに気づいたのか、その後家庭での極端な食事制限をやめたようです。
教育方針は家庭ごとに異なると思いますが、それを他人に強要し、その結果として集団生活で子どもを疎外させてしまうのは単なる親のエゴだと私は正直思ってしまいました。子どもの体の健康を考えることも大切ですが、寂しい思いをさせてしまわないよう、心の健康にも気を使うことも大切かもしれません。私自身も、食事そのものの内容だけでなく、子どもたちが笑顔で食卓を囲める環境を大事にしたいと思った出来事でした。
著者:谷 ふみ/40代・ライター。中学2年生と小学5年生、6歳の3人の男の子を育てるママ。仕事に家事、育児に追われる毎日。子どもたちが寝静まったあと、ひとりでドラマや映画を見るのが楽しみのひとつ
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年3月)