夫のお弁当はどこへ?
嫌な予感を拭えなかった私は翌日、昼時を見計らって夫の会社の近くを通りました。すると、コンビニから昼食を買って出てきた夫を見つけたのです。
「今日もお弁当を落としたの?」
そう尋ねると、夫は一瞬言葉を詰まらせたあと、前日と同じような言い訳をしました。
さすがに2日続けて中身を落としたという説明には無理があります。私が問い詰めると、夫は観念したように事情を話しました。私が作ったお弁当は、同じ部署で働く女性の後輩に渡していたというのです。
その後輩は少し前に離婚し、幼い娘をひとりで育てているとのこと。生活に余裕がなく、昼食を抜いて仕事をする姿を見かねて、自分のお弁当を渡すようになったそうです。
「シンママで大変なんだよ。俺が少し助けるくらいいいだろ?」
黙って渡していたことには腹が立ちましたが、私も子どもを育てる母親です。食事を抜いて働いていると聞けば、心配にもなりました。
そこで私は、夫の分とは別に、後輩の分もお弁当を作ることにしました。夫の昼食がなくなってしまう事態を避けたいという思いに加え、後輩が本当に食事に困っているのなら、しばらく手助けをしてもいいと思ったからです。
後輩を支えたいと言い出した夫
それから夫は、「彼女が喜ぶおかずを入れてほしい」「量は少なめのほうがいいらしい」などと注文をつけるように。
最初は後輩から聞いた希望なのだろうと思っていました。しかし、夫が後輩の好みを細かく把握していることに、次第に違和感を覚えるようになりました。
やがて夫は「仕事だけでなく精神的にも支えてあげたい」と言い始め、帰宅が遅くなる日が増えていきました。私が理由を尋ねても、「相談に乗っているだけ」「1人で子育てをしているから不安定なんだ」と繰り返すばかり。
ある夜、私は娘を実家に預け、夫の会社近くで帰りを待ちました。すると、夫は例の後輩らしき女性と並んで会社から出てきたのです。
2人は周囲を気にしながらも親しげに顔を寄せ合い、そのまま繁華街のほうへ歩いていきました。私は距離を取りながら後を追いましたが、途中で見失ってしまいました。
帰宅した夫に後輩と何をしていたのか尋ねると、「仕事の相談を聞きながら食事をしただけだ」と否定。
たしかに、2人で歩いていただけでは不倫の証拠にはなりません。しかし、夫の態度や帰宅時間の変化を考えると、何もないとは信じられませんでした。
調査会社の報告書で不倫が発覚
感情のまま夫を責め続けても意味がないと思った私は、まず事実を確認することに。複数の調査会社へ相談し、費用や調査方法を比較したうえで、正式に調査を依頼しました。
その間も、私はそれまでと変わらず夫と後輩のお弁当を作り続けました。急に態度を変えれば、夫に警戒される可能性があったからです。
数週間後、調査会社から報告書を受け取りました。そこには、夫と後輩が勤務後に待ち合わせ、食事をしたあとホテルへ入っていく様子が記録されていました。同じような行動は一度だけではありませんでした。
私は弁護士にも相談し、集めた資料を確認してもらいました。今後の進め方を話し合い、離婚に向けた準備を整えることにしたのです。準備が整うまでは、夫に不倫を知っていると悟られないよう、普段どおりに振る舞いました。
そして準備を終えたところで、夫と話し合うことに。
報告書の写真を見せると、夫はしばらく黙り込んだあと、後輩との不倫関係を認めました。
「最初は本当に同情しただけだった」
「弱いところを見せて頼ってくれる彼女が、かわいく思えた」
夫はそう言い訳を重ねました。さらに、「お前は何でもひとりでできるようになって、かわいげがなくなった」とまで言い出したのです。
私が強くならざるを得なかったのは、夫が家庭のことを私に任せきりにしていたから……。それにもかかわらず、家庭を支えてきた私へ責任を押しつける夫の言葉には、怒りを通り越してあきれてしまいました。
挙げ句の果てに、夫はこう言いました。
「俺と離婚したくないなら、彼女とのことは見て見ぬふりをしてくれ」
あまりにも身勝手な要求です。
さらに話を聞くと、後輩も夫に妻子がいることを知ったうえで関係を続けていたことがわかりました。
私はその場で言い争うことを避け、弁護士と相談してから改めて連絡するとだけ伝えました。
夫との離婚を決意
その後、私は弁護士を通じて夫へ離婚の意思を伝えました。後輩に対しても、弁護士を通じて慰謝料を請求しました。
当初は「困っている後輩を助けているだけ」と言っていた夫。しかし、同情をきっかけに家族を裏切った事実は変わりません。
時間はかかりましたが、夫との離婚は無事に成立。慰謝料についても話がまとまり、私は娘と2人で新たな生活を始めました。
後輩の事情を知ったとき、少しでも力になれればと思ってお弁当を作り始めたことに後悔はありません。ただ、その善意を裏切られたことは、今でも忘れられないショックな出来事でした。これからは自分と娘の生活を大切にしながら、穏やかな毎日を築いていきたいと思っています。
◇ ◇ ◇
困っている人に手を差し伸べることは大切です。しかし、それを理由に家族との約束や信頼をないがしろにしてよいわけではないでしょう。さらに、不貞など相手の信頼を裏切る行動は、夫婦関係を大きく損なうことにつながります。身近な相手だからこそ、互いに誠実に向き合い、自分の行動が家族にどんな影響を与えるのかを考えることが大切です。
また、パートナーの言動に強い違和感を覚えたときは、感情のまま行動するのではなく、状況を整理し、必要に応じて専門家へ相談することも一つの方法です。自分や家族の生活を守るためにも、冷静に行動したいものですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。