彼の実家で聞かされた会社の事情
B男とは、仕事で顔を合わせるうちに親しくなり、交際するようになりました。
彼はA社社長のひとり息子で、将来は会社を継ぐ予定とのこと。ただ、私が惹かれたのは肩書ではなく、仕事に真面目で、やさしく接してくれるところでした。
交際から1年ほどたったころ、B男から両親に会ってほしいと言われました。結婚の話も出ていたため、私も少し緊張しながら彼の実家へ。
そこは大きな庭のある一軒家でした。マンション育ちの私は、広い庭や立派な玄関を見て驚いたのを覚えています。
ご両親は穏やかに迎えてくれました。私が父の会社で働いていることも知っており、父の会社とA社は以前から取引があったため、最初は仕事の話も交えながら和やかに過ごしていました。
ところが、しばらくするとB男のお父さんが会社の事情を話し始めました。
数年前に事業を広げた際の借入金がまだ残っており、最近は返済が経営の負担になっているというのです。お母さんからも、もしB男と結婚すれば、会社の状況によって生活にも影響が出るかもしれないと言われました。
突然の話に驚きましたが、それでB男への気持ちが変わることはありませんでした。
「私はお金のためにB男さんと結婚したいわけではありません。一緒に頑張りたいです」
そう伝えたあと、私は少し考え、「もし何か力になれることがあるなら、父にも相談してみてもいいでしょうか」と付け加えました。
すると、それまで神妙だった3人の表情が一気に明るくなりました。お父さんもお母さんも大喜びし、B男もうれしそうに笑っていました。
私は、家族になるなら助け合うのは当然だと思っていたのです。
彼の実家で知った本当の思惑
帰る前、私はお手洗いを借りるため席を外しました。
戻ろうとしたとき、部屋から私の名前が聞こえ、思わず足を止めました。すると、私の父に頼めばA社への仕事を増やしてもらえるかもしれない、いざとなれば資金面でも相談できそうだ――そんな話を3人がしていたのです。
さらにB男が笑いながら言いました。
「社長の娘と付き合って正解だったな。あいつ、俺のためなら親父に頼むだろうし。使えるよ」
あまりの内容に頭が真っ白になり、その場では何も言えませんでした。私は何も聞かなかったふりをして、その日は帰宅しました。
父に事情を話すと…
家に帰ると、私は父に一部始終を打ち明けました。
父は腹を立てていましたが、「お前の交際と会社の取引は別だ」と言い、感情だけでA社との付き合いを変えることはしませんでした。
ただ、B男一家が私との結婚を利用して、自分たちに有利な取引を引き出そうとしていることには、父も警戒していました。
その後、A社から父の会社に、「今後はもう少し発注を増やしてほしい」という相談がありました。父はこれまでの取引状況などを確認したうえで、これ以上取引を広げることは難しいと断りました。
すると数日後、焦ったB男から私に連絡があり、父にもう一度頼んでほしいと言ってきたのです。
そこで私は、彼の実家で3人の会話を聞いてしまったことを伝えました。
「私じゃなくて、父の会社とお金が目的だったんだね」
B男は慌てて「あれは冗談だった」「君のことが本当に好きなんだ」と弁解しましたが、もう信じることはできませんでした。
私は結婚の話を白紙にし、そのまま交際も終わらせました。
その後、A社はもともと厳しかった経営状況がさらに悪化し、父の会社との取引もなくなりました。私との結婚を利用して会社を立て直そうとしていたB男一家でしたが、結局、思い描いていたようにはいかなかったようです。
結婚を考えるほど信頼していた人から、実家とのつながりまで利用しようとされていたことは本当にショックでした。それでも、結婚前にB男たちの本音を知ることができてよかったと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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