「父親の番号はいらない」と言う娘
A子が7歳になったころ、私は誕生日プレゼントとしてキッズスマホを贈りました。娘も「何かあったときに連絡できるから助かる」と喜んでくれ、一緒に初期設定をすることに。その際、私は娘と私の番号だけでなく、父親であるB也さんの番号も登録してはどうかと提案しました。ところが娘は、「必要ないよ」と即答したのです。
A子にとって、B也さんが父親であることに変わりありません。そのため、娘の判断が少し引っ掛かりました。しかし娘によると、B也さんからはほとんど連絡がなく、こちらから連絡しても「A子には会いたくない」と言っているとのこと。
「A子はパパのこと、何か言っているの?」と尋ねても、娘は「もうほとんど話題にも出ないし、今の生活に慣れてるから大丈夫」と言います。
離婚した2人にしかわからない事情もあるのだろうと思い、私は娘の言葉を信じ、それ以上口を出すことはしませんでした。
娘の元夫から突然の連絡
それから数カ月後、私のスマートフォンに見覚えのある名前が表示されました。電話をかけてきたのは、B也さんでした。離婚以来、直接連絡を取ることはほとんどなかったため、私は驚きながら電話に出ました。
するとB也さんは、A子が元気にしているかを尋ねた後、娘親子の生活が落ち着いてからは、A子の誕生日や入学などの節目に娘へ連絡していたと話しました。プレゼントを渡したいと申し出たこともあったそうですが、娘から「今は会わせるつもりはない」と言われたとのこと。
さらに、ここ数カ月は連絡しても返事がなく、心配になって私に電話をかけたそうです。娘には「B也さんから連絡はほとんどない」と聞いていたため、私は耳を疑いました。
「娘からは、あなたがA子に会いたがっていないと聞いていたんだけど……」
私がそう伝えると、B也さんは驚いた様子で、「そんなことは一度も言っていません」と答えました。娘から聞いていた話とあまりにも違い、私は戸惑いを隠せませんでした。
孫のひと言でわかった本音
その週末、A子がわが家へ遊びに来ました。B也さんから「何度も連絡していた」と聞き、娘の話との食い違いが気になっていた私は、A子本人は父親のことをどう思っているのだろうと考えるようになっていました。
そこで、できるだけ自然な形で父親のことを聞いてみることに。するとA子は、しばらく黙った後、「パパは私のこと嫌いなのかな」と小さな声で言ったのです。
理由を尋ねると、父親からまったく連絡が来ない上に、会いにも来ないからとのこと。以前、「パパに会いたい」と母親に伝えたこともあったそうですが、「パパは忙しいから」「もう別々に暮らしているから仕方ない」と言われていたと言います。
B也さんの話を聞いたときにも娘の説明との食い違いを感じていましたが、A子の言葉を聞き、その違和感はさらに大きくなりました。少なくともA子は父親に会いたくないわけではなく、むしろ父親のほうが自分に会いたがっていないと思っているようでした。
その日の夜、私は娘に、B也さんから何度も連絡が来ていたことを知っていると伝えました。すると娘はしばらく黙った後、「連絡が来ていたのは本当。でも、もう関わりたくなくて……。会いたくないのは私なのに、B也がA子に会いたがっていないように話してしまった」と打ち明けました。
離婚前には性格や生活をめぐって言い争いが続き、離婚後はできるだけB也さんと距離を置きたかったそうです。せっかくA子との生活が落ち着いたのだから、再びB也さんと関わりたくないという思いが強く、「A子もそのうち父親のことを気にしなくなる」と考えていたと言います。
私は娘に、A子が父親から連絡がないことを寂しがっていると伝えました。そのうえで、「本当はB也さんから何度も連絡が来ていたのなら、A子にもきちんと伝えてあげるべきじゃない?」と問いかけました。
そして、
「あなたが元夫に会いたくないことと、A子がお父さんに会いたいと思うことは別でしょう」
とはっきり言いました。
娘はしばらく黙っていましたが、やがて「私が会いたくないからって、A子も同じだと思い込んでたのかもしれない……」と小さな声でつぶやきました。A子が寂しい思いをしていたことに気付かなかった自分を、後悔しているようでした。
孫の気持ちを確かめながら
その後、娘はB也さんと改めて連絡を取りました。いきなり対面で会うのではなく、まずはA子とB也さんが電話で話すところから始めることにしたそうです。
久しぶりに父親の声を聞いたA子は、電話を切った後、「パパ、私の誕生日覚えてた!」とうれしそうに教えてくれました。その後も娘とB也さんはA子の気持ちを確認しながら話し合いを重ね、少しずつ父娘が会う機会も設けるようになりました。
今回の出来事を通して、私は娘から聞いた話だけで、家族の状況をわかったつもりになっていたのだと気付きました。娘には娘の思いがあり、A子にはA子の思いがあります。どちらか一方の気持ちだけで判断するのではなく、それぞれの立場に目を向けることが大切なのだと感じました。
これからは、娘の話を聞くだけでなく、A子が安心して自分の気持ちを話せるような存在でありたいと思っています。
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離婚後の家族関係では、身近な人から聞いていた話であっても、それだけでは見えていない事情があることも。今回の出来事は、大人同士の関係だけで状況を捉えるのではなく、子ども本人が何を感じているのかに目を向けることで、初めて気付ける思いもあると感じさせるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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