義父のための備えが消えた!?
義父の入院から数日後。病室の準備や仕事に追われ、慌ただしく過ごしていたある日のことです。私たち夫婦は、手術費を含む入院中の支払いや退院後の生活に備え、家族で積み立てていたお金を確認していました。
その積立金は、家族に何かあったときのために貯めていたもので、以前は義姉もお金を入れていました。使う必要があるときは、その都度家族で相談するのがルール。義父が入院してからは、「しばらくはお父さんのために残しておこう」と義姉も含めて話していたのです。
ところが、その話し合いのあと義姉との連絡が途絶えました。数日後、義姉から突然「お父さん、手術するんでしょ?」と連絡があり、少なくとも手術の予定は知っているようでした。
ところがその後、夫が口座を確認すると、なんと、まとまった額が引き出されていたのです。すぐに義姉へ電話をかけると、「海外旅行のお金が必要だったから! 私も入れてたでしょ?」とあっさり認めました。
確かに、義姉自身が積み立てた分もあります。ですが、引き出した額はそれを大きく上回っていました。何より、つい先日「父のために残しておこう」と家族で確認したばかりです。夫が「今は父さんの手術が先だろ」と伝えても、「どうせ何とかなるでしょ。もう出発するから、それじゃ!」と電話を切られてしまいました。
守るべきもの
腹は立ちましたが、今は義父の手術が最優先です。夫と相談し、この件はひとまず義父には伏せ、足りない分は私たち夫婦の貯金で補うことにしました。
手術当日、私は待合スペースで何度も時計を見ました。夫も落ち着かない様子で、立ったり座ったりを繰り返しています。そんな中でも、義姉から連絡が来ることはありませんでした。海外旅行を楽しんでいるのだろうと思うと複雑でしたが、今は目の前のことを優先しようと、夫とも話していました。
空っぽのベッド
それから10日ほどたったころ。私は病院の一室で、ベッド脇に残っていた荷物をまとめていました。夫は席を外しており、そこへ海外旅行から帰国したその足で、義姉がふらりと現れたのです。
「帰国したから、お見舞いに来てあげたよ~♪」明るい色のワンピース姿で、手には小さな紙袋。旅行帰りらしい軽い調子で入ってきた義姉でしたが、部屋の中を見るなり足を止めました。
ベッドに義父の姿はありません。シーツは外され、私物もほとんど片付いていました。「お父さんは……?」義姉の声がわずかにうわずりました。私は手を止め、静かに振り返りました。
「ここにはいませんよ」その瞬間、義姉の顔からサッと血の気が引きました。「え……待って。手術、したんだよね?」「手術は受けましたよ」そう答えると、義姉は空になったベッドと私の顔を交互に見ました。しばらく黙ったあと、「私のせいじゃないよね?」と不安そうにつぶやいたのです。
もう誰も
「おーい、待たせたな」背後から聞き慣れた声がして、義姉が振り返ると、退院手続きを終えた夫と義父が戻ってきました。義姉は目を見開き、「お父さん……よかった。ちゃんと手術できたんだね」とつぶやきました。
すると夫が、「できたよ。足りなくなった分は俺たちで出したから」と答えました。義姉の表情が固まりました。「でも、私が入れた分もあったでしょ」と言いかける義姉に、夫は「それはわかってる。ただ、それ以上に使った分は返してほしい。今回みたいに、足りなくなったら俺たちが出せばいいっていうのは、もうやめよう」と伝えました。
義姉はすぐには答えず、目を伏せました。すると義父は私たちに、「足りない分まで出してくれたんだな。二人ともありがとう」と伝え、それから義姉に向き直りました。「俺も今まで、お前が困るたびに助けてきたからな。それで何とかなると思わせていたなら、俺もよくなかった。これからは、金のことは自分で何とかしてくれ」 義姉は何も言い返さず、その日は気まずそうに帰っていきました。正直、それだけで義姉が反省したのかは、私にはわかりませんでした。
ただ数日後、夫のもとに義姉から連絡がありました。自分が積み立てた分を差し引き、いくら返せばいいのか確認してきたそうです。一度に返すのは難しいとのことで、少しずつ返していくことになり、その後、実際に返済も始まりました。
だからといって、以前のような関係にすぐ戻ったわけではありません。義父も、私たち夫婦も、もう義姉の金銭トラブルを肩代わりせず、必要以上に立ち入らないようになりました。義父は無事に退院し、今では家でゆっくり過ごしています。こうしてまた一緒に過ごせることが、何よりうれしく感じるのでした。
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自分のお金をどう使うかは本人の自由でも、他人のお金や目的が決まっているお金まで同じように扱うことはできません。お金の扱いには、その人が約束や相手の事情をどれだけ大切にしているかも表れます。自分の欲や都合を優先する前に、その選択に責任を持てるのかを考えて行動したいですね。