とはいえ、夫がお世話になっている部下であることに違いはありません。おいしいおつまみを出したいという気持ちはあります。
それでも手が回らない日は、おもてなしが難しいことも……。しかし、出前や出来合いのものを出すことは許されませんでした。夫は「手抜きだと思われるのは困る」と言って、手料理にこだわるのでした。
夫の家飲み……本当は!?
しかも、夫が部下を連れてくるのはいつも突然……。子育てをしている私には、相当な負担です。部下を気遣うように、家族にももう少し気を使ってほしいと思わずにはいられません。
また、にぎやかな飲み会は、息子の眠りをさまたげることもしばしば。目が覚めて不機嫌になった息子がそのまま眠れなくなることもありました。そんな夜は、キッチンと寝室を行き来しながら、客人と息子の両方に気を配り、夜中まで休む暇がありません。
そしてもうひとつ……。私にはある疑問がありました。部下の人たちは、本当にわが家に来たいのでしょうか。お酒を飲んだ夫はとてもしつこく、自慢が多いのが正直なところ。時々たしなめるものの、聞いていて楽しいとは思えません。
「上司の誘いを断れないだけなのでは」と考えて、やんわり夫に尋ねてみたこともありました。しかし夫は、自分は部下から好かれているのだと得意げ……。それが本当ならいいのですが……。
我慢の限界に!
急な来客に対応し、夫の自慢話を聞き流す夜はその後も続きます。夫に、回数を減らしてほしい、せめて事前に相談してほしいと言っても、状況は一向に変わりませんでした。
そんな中、とうとう我慢できなくなった私は、ある行動に出ることにしました。その日の朝、前夜の飲み会で寝不足のまま、ぐずる息子をあやしていた私は、ついに涙が止まらなくなったのです。
このままでは私が倒れてしまうかもしれない——。そう思い、遠方に住む義母に電話をかけました。これまでの出来事をありのままに伝えると、義母は黙って最後まで話を聞き、その日のうちにこちらへ向かうと言ってくれました。
義母が到着したのは昼過ぎのこと。しばらくこちらに滞在して、夫のお世話を引き受けてくれるという義母に家を任せて、私と息子は実家に戻ることにしました。
ちょうどその夜、夫からいつものようにメッセージが届きました。「今日は部下を5人連れていくから。酒とつまみ、準備しといて」来客まで、あと2時間しかないというときでした。
私は迷わず返信しました。「はーい!待ってます」
わがまま夫を懲らしめる私の救世主
その夜、部下を連れて帰宅した夫を出迎えたのは、厳しい表情の義母でした。予期せぬ事態に、夫はかなり動揺していたようです。
義母はひとまず部下たちを酒とつまみでおもてなししたものの、妻子を軽視して部下の前で威張る夫の態度に我慢がならなくなったそう。
「自分の見栄のために、幼い子を抱えた妻にどれだけ負担をかけていると思っているの!」「家で威張り散らして、恥ずかしくないの!?」と、その場で容赦ない説教を開始。部下の前で母親に大声で叱り飛ばされた夫は、あまりの気まずさに顔をこわばらせ、ばつが悪そうに絶句していたと聞きました。
気まずくなった部下たちは、早々に帰っていったそう。巻き込んでしまった部下の方々には、少し申し訳ない気持ちです。
その日の深夜、義母から事情を聞いた夫から電話がありました。「明日からどんな顔をして会社に行けばいいんだ」と弱々しく漏らす夫。ですが、いまさら同情する気にはなれません。息子の様子を気にしながら、毎晩一人で台所に立ち続けた私の疲れに、夫が一度でも目を向けたことがあったでしょうか。
結婚当初は「尽くせば気持ちを返してくれる」と信じていました。しかし、見下され軽んじられる日々の中で、その思いは完全に擦り切れてしまったのです。もう夫と話すのも、顔を見るのも嫌気が差していました。
「帰ってきてくれ、話そう」とすがる夫ですが、結局は家事をしてくれる“家政婦”がいなくなって困っているだけでしょう。
そこで私は、「家事を完璧にこなせるようになること」を復縁の条件として突きつけました。義母がしばらく滞在し、夫に家事の特訓をしてくれるとのこと。「腐った性根をたたき直す」と宣言してくれた義母の存在は、本当に頼もしい限りでした。
家ではモラハラ、会社ではパワハラ?
義母がため息をつくほど、夫はいくらやっても家事が上達しなかったそうです。「料理がこんなに大変だと思わなかった」と音を上げる夫ですが、その「大変なおもてなし料理」を作らされていたのが私です。
家族への食事とは違い、お客様に出す料理には何倍もの労力と時間がかかります。その重みにようやく気づいた夫は、自分の間違いを深く認め、私に頭を下げました。
さらに、部下たちが進んで自宅に来ていたわけではないことも判明。「断ると機嫌を損ねると思い、合わせるしかなかった」という本音を偶然聞いてしまった夫は、本当は慕われていなかった事実に相当なショックを受けていました。
すっかり打ちのめされ、心から反省した様子の夫を見て、私は離婚を踏みとどまり、もう一度やり直す道を選ぶことにしました。ただし、「二度と無断で人を呼ばないこと」「家事と育児を主体的に担うこと」を絶対条件として提示。夫はそれを素直に受け入れました。
現在は義母の特訓の成果もあり、夫も率先して家事をこなすようになっています。夜中に来客の声で起こされることもなくなり、息子もぐっすり眠れるようになりました。私もようやく落ち着いた日々を取り戻し、家族で穏やかに食卓を囲んでいます。
あのとき親身になって夫の性根を叩き直してくれた義母には、今も感謝の気持ちでいっぱいです。
◇ ◇ ◇
「家族だから」という甘えから、相手の都合を後回しにし、負担をかけてしまうことは少なくありません。しかし、家庭は誰か一人の見栄や身勝手のためにあるのではなく、互いの生活や心を支え合う場所です。
相手の状況や気持ちを尊重する姿勢を欠いてしまえば、信頼関係は簡単に崩れてしまいます。「相手の立場に立って考えること」「感謝と気遣いを忘れないこと」——そんな当たり前で大切な配慮こそが、穏やかで温かな家族関係を維持するために必要なのかもしれませんね。
【取材時期:2026年8月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。