※横隔膜ヘルニア:本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気
長すぎるエコー。胃が心臓の真下に?
初めての男の子にワクワクしていた第3子妊娠中、妊娠28週の健診で違和感を覚えました。普段数分のエコーが、10分以上続いたのです。先生の顔も心なしか曇っています。「胃が心臓の真下にあります。横隔膜ヘルニアという病気かもしれません」と。正直、そう言われてもピンときませんでした。
ただ、淡々と進む大病院への転院の手続きと、看護師さんからの「まだ確定したわけではないから落ち込まないでね」という言葉に、これはただ事じゃないのではと思い始めました。
転院先で治療説明。人工肺は避けたい!
転院先の大病院で診断が確定し、治療方針の説明がありました。横隔膜ヘルニアというのは本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気であること。
帝王切開で胎児を眠らせた状態で出産し、生まれた直後から人工呼吸器で治療していくこと。人工呼吸器で状態が落ち着いてから横隔膜の穴をふさぐ手術をすること。人工呼吸器で間に合わなければ、人工肺を使う可能性があること。
さまざまな説明をされ、特に人工肺には脳出血などのリスクがあると聞き、怖くて仕方がありませんでした。
出生後、容体急変! 生死を彷徨うわが子
先天異常がある以外は穏やかに進んだ妊娠期間も終わり、ついに出産の日。麻酔から目を覚ました私に、夫が人工呼吸器をつけて穏やかに眠る赤ちゃんの写真を見せてくれてひと安心しました。
しかし、翌日容体が急変。恐れていた人工肺の取り付けと横隔膜ヘルニアの手術をいっぺんにおこなうことになり、不安で涙が止まりませんでした。
手術は成功したけれど……募る不安
手術は無事成功しましたが、その2日後に人工肺を取り外すことになりました。息子のサイズに合わせると小さめの人工肺しか取り付けることしかできなかったのですが、想定より肺のダメージが大きく、その人工肺の許容量を超えてしまったのだそうです。横隔膜ヘルニアの影響で息子の肺は片方しかなく、あるほうの肺もほとんど機能していませんでした。
一か八かの人工肺離脱手術が始まり、何とか成功。入院中の私は、帝王切開の痛み、3時間おきの搾乳、息子への不安でほとんど睡眠をとれない日が続きました。結局息子はその後4カ月入院、鼻に取り付ける人工呼吸器をつけた状態で退院しました。退院時は在宅医療の不安が大きく、あまり喜べなかったのが正直なところです。
息子はその後、酸素吸入器を経て1歳直前で服薬等も終わり、普段の生活で医療ケアは必要ない状態になりました。ただ、肺は未だにひとつしかなく、呼吸器系の風邪を引いたときにはこじらせて入院となることもあります。けれど、生まれたときのことを考えれば、生きているだけで奇跡だと思わずにはいられません。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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監修/助産師 松田玲子
著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。