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「さっさと運べ!」取引先の現場で叱られる女性→20年前、両親を亡くした私を助けてくれた恩人だった

私は30歳で、小さな不動産会社を経営しています。今でこそ仕事も軌道に乗り、生活にも余裕ができましたが、ここまで来られたのは、苦しい時期に支えてくれたある女性のおかげだと思っています。その人は、10歳で両親を亡くした私に手を差し伸べてくれたA子さんです。

 

10歳の私を支えた恩人

私が10歳のころ、両親を事故で亡くしました。突然両親を失い、今後どこで暮らすのか、学校はどうするのかと、親族の間でも話し合いが続きました。私自身も、これから先の生活を想像できないほど混乱していました。

 

そんなとき支えてくれたのが、母の知人だったA子さんです。当時は夜の接客業をしており、母とは長い付き合いがあったそうです。A子さんは「お母さんには昔、本当に助けてもらったの。今度は私が力になる番だから」と言ってくれました。

 

A子さんは、親族の家で暮らすことになった私を何かと気にかけてくれ、親族や周囲の大人と相談しながら、私を支えてくれました。「必要な物があったら何でも言って」と声をかけてくれ、学校生活に必要な物を買ってくれたこともありました。

 

その後、私は親族の家で暮らしながら成長し、寮のある高校へ進学。奨学金を利用し、アルバイトもしながら大学へ進むことができました。一方、A子さんは引っ越しや転職をしたこともあり、次第に連絡を取る機会が減っていきました。

 

それでも、苦しい時期に支えてもらったことを忘れた日はありません。「いつか自分で生活できるようになったら、今度は自分が恩を返したい」と思いながら、仕事を続けてきました。

 

20年後、仕事先でまさかの再会

それから約20年。30歳になった私は、数年前に立ち上げた不動産会社で、住宅や店舗物件などを扱っていました。ある日、うちの会社が販売を担当する新築住宅の進捗を確認するため、取引先が施工している建設現場を訪れました。

 

現場では、片付けや清掃を担当する短期スタッフの女性が、無理のない範囲で資材を運んでいました。ところが、少し手間取ると、現場監督が「さっさと運べ!」ときつい口調で声を上げたのです。女性は「すみません……」と小さく頭を下げました。

 

私は思わず、「その言い方はないんじゃないですか」と声をかけました。突然現れた私を見て、現場監督ははっとした表情に。その後、「すみません」と気まずそうに頭を下げました。

 

そして女性の顔をよく見ると、私はさらに驚きました。

 

「もしかして、A子さんですか?」

 

20年前、私に手を差し伸べてくれたA子さんが、目の前にいたのです。かつて助けてもらうことしかできなかった私が、今は誰かを守るために声を上げられる立場になった。そのことにも、年月の流れを感じました。

 

昼休みに近くで話を聞くと、A子さんは現在、小さな飲食店を経営しているとのこと。ただ、店内の老朽化が進み、客足が落ちてしまったものの、改装するだけの金銭的な余裕がないとのことでした。店を閉めたくない一心で、店の営業がない時間帯や休業日には、別の仕事もしていたそうです。

 

かつて私が困っていたとき、何も見返りを求めず支えてくれたA子さん。その人が今度はひとりで店を守ろうとしている姿を見て、私は放っておけませんでした。

 

「今度は僕に協力させてください」

 

そう伝えると、A子さんは「あなたがこんなに立派になっていて、私もうれしい。それだけでもう十分よ」と笑いました。それでも私は、一度店を見せてもらうことにしました。

 

 

今度は私が支える番

後日、営業時間前にA子さんの店を訪ねると、たしかに内装はかなり傷んでいました。私はこれまで店舗物件を扱う中で、改装費がどこで膨らみやすいのか、どの工事を優先すれば費用を抑えながら店の印象を変えられるのか、具体的な改装例を何度も見てきました。

 

そこで、傷んだ設備のうち営業に支障が出るものを優先し、壁紙や照明など、比較的少ない費用でも印象を変えやすい部分から手を入れることにしました。さらに、工事期間が長くなれば休業による負担も増えるため、営業への影響を抑えられる工程についても施工会社と調整しました。

 

A子さんは「そんなところまで考えてくれたの? でも、今の店にそんなにお金はかけられない」と、不安そうな表情を見せました。

 

私は、あのころ助けてもらったことを話しました。

 

「僕がこうして会社を経営できているのは、10歳のときにA子さんが支えてくれたからです。あのとき苦しい状況にいた僕を支えてくれたことは、今でも忘れていません。だから今回は、僕ができることで力になりたいんです」

 

A子さんと相談しながら、予算に合う施工会社や改装方法を検討し、私自身も施工会社との調整など、できる限り協力しました。

 

改装後は店の雰囲気も大きく変わりました。A子さん自身も店の宣伝や営業方法を見直したそうで、以前のお客さんが戻り、新しいお客さんも少しずつ訪れるようになったといいます。

 

改装からしばらくして店を訪れると、A子さんは「まさか、あのときの小学生に助けられる日が来るとは思わなかった」と笑いました。私はその言葉を聞いて、ようやく少しだけ恩を返せたような気がしました。

 

まとめ

当時は「いつか何かの形で恩を返したい」と考えていましたが、今回再会して、受けた恩と同じことを返すだけが恩返しではないのだと思うようになりました。

 

私が仕事を通じて身につけてきた知識や人とのつながりが、かつて助けてくれた人の力になったことが何よりうれしかったです。

 

助けてもらった経験があったからこそ、自分も困っている誰かに手を差し伸べられる人でありたい。20年後の再会を通して、そんな思いを改めて強くした出来事でした。

 

 

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

 

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ライターベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班

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