義母からの執拗な金銭要求
ところが、夫が弁護士になったと噂で知った義母は、突然夫の前に現れました。
「ずっと会いたかった」
泣きつく義母に対し、幼いころに母親と別れた寂しさを抱えていた夫は、連絡を取り合うようになってしまいました。
しかし、義母の本当の目的はお金でした。再会して間もなく、義母は「生活が苦しい」と毎月の仕送りを要求するようになり、その額は少しずつ吊り上がっていきました。やがて自分で買い物した請求書やクレジットカードの利用明細を夫に送りつけては、「助けて」と泣きつき、仕送り以上のお金を要求してくるようになったのです。
私も会社員としてフルタイムで働いているため生活はできていましたが、夫の収入の多くを義母に吸い取られている状況に不安を感じていました。見かねた私が義母に苦言を呈すると、「私が息子を産んであげたおかげで、あんたは今いい生活ができているんでしょ。他人が口を出さないで。親子のコミュニケーションを邪魔しないでちょうだい!」と怒鳴り散らされました。
義母の要求はどんどんエスカレートしていき、夫が体調を崩して寝込んでいるときでさえ、お金の無心をしてくる始末。仕事の忙しさに加えて義母からの精神的なプレッシャーが重なり、夫はついに心身のバランスを崩してしまいました。
暴走する義母のタワマン計画
ぼーっとする時間が増え、心身の不調が続いた夫は、カウンセリングを受けながら、体調が戻るまで弁護士の仕事から離れることに。勤めていた法律事務所も辞めました。夫の収入は途絶え、それまでの義母への仕送りや通院費、当面の生活費で、夫個人の貯金はほとんどなくなっていました。
私は自分の収入で家計を支えながら、夫を静かな環境で休ませるため、義母には内緒で郊外のマンションへ引っ越す準備を進めました。
そんなある日、義母から私に、見晴らしのいい部屋の写真が数枚送られてきました。どうやらどこかのタワーマンションのモデルルームのようです。わけがわからず電話をかけると、義母は上機嫌で話し始めました。
「来年からそこに住むのよ」
「息子にタワマン買ってもらうの♡」
話を聞くと、義母は勝手に新築タワーマンションの購入を検討し、夫にローンを組ませるつもりでいろいろな場所のモデルルーム見学に通っていたのです。
「息子は稼いでいるから貯金の桁も違うものね♡」
「頭金はいくらくらい出せると思う? 忙しいみたいだから、まだ話していないけど、あの子は私の頼みを断ったことがないもの♡」と笑う義母に、あぜんとしました。
「夫は貯金0、収入0ですよ?」
私がそう告げると、電話口の義母は一瞬言葉を失いました。
「夫はもう法律事務所を辞めて、今は収入がありません。お義母さんのせいで貯金もありません。心労が重なって働けなくなったんです」
夫が残していた記録と義母との決別
すると義母はパニックになり、「うそよ! だまされないから! あの子に会って直接確認する! 事務所でも家でも行って払わせてやる! タワマンも買わせてやる!」と怒鳴りました。
しかし、夫がすでに退職していることは事実。さらに、私たちはちょうど引っ越し作業を終えたばかりで、以前住んでいた賃貸マンションも引き払っていました。
実は夫には、私にも黙って進めていたことがありました。「母に渡してきた分は、全部記録を取ってある」そう言って、引っ越しの荷物の中から夫が出してきたのは、これまでの振込明細と、義母から送りつけられた請求書やクレジットカードの利用明細をまとめたファイルでした。仕送りを始めた月から、体調を崩す直前の分まで、すべて日付順に整理されていたのです。
「君にはずっと申し訳ないと思っていた。母の性格を知ってからは俺が拒否したら、君にまでしつこく連絡したり、嫌がらせをしたりするんじゃないかと思ってしまって……。だんだん自分がおかしくなっていたことにも気づかなかった。でも、いつかこうなるともどこかで感じていたんだ。返してもらうつもりはないけど、これまでどんな要求をされ、いくら渡してきたのかを説明する資料にはなる。もし母が元の勤務先や新しい家に押しかけたり、脅すようなことをしてきたりしたら、これを持って信頼できる元同僚の弁護士に相談する」
そう言われ、やさしいだけの人だと思っていた夫が、いちばん冷静に最悪の事態に備えていたのだと知りました。
私は義母に「夫はもうお義母さんの言うことは聞きません。これ以上関わらないでください」と伝え、義母の連絡先を夫と一緒にブロックしました。もし義母が私たちの住所を調べて押しかけてきたとしても、夫のファイルがあります。今度は感情ではなく、記録と手続きで対応できる。そう思うと、不思議と怖さはありませんでした。
その後、人づてに聞いた話では、義母はタワーマンションの購入を断念したそうです。それだけではなく、これまで夫からの援助を当てにして生活していたため、突然そのお金が入ってこなくなり、生活そのものを大きく見直すことになったのだとか。欲しかったものを好きなように買う余裕もなくなり、タワマンどころではなくなったそうです。
息子のお金を当然のように当てにし続けた結果、思い描いていたぜいたくな暮らしはすべて白紙に。私たちにとっては、ようやく義母の金銭要求から解放された瞬間でもありました。今はもう義母がどこで何をしているのかはわかりませんし、夫も知ろうとはしていません。
夫は義母と物理的にも精神的にも距離を置いたことで、新しい環境で少しずつ調子を戻しています。これからは夫婦2人で穏やかに暮らしていきたいと思います。
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親子であっても、金銭をめぐってトラブルになることはあります。実の親に対する情から金銭の要求を断りきれず、自分の心身や家庭を壊してしまう前に、きちんと線を引くことが重要です。両親や義両親から理不尽な金銭要求を受けたら、ひとりで抱え込まず、夫婦で話し合い、必要に応じて専門家に相談したり、物理的に距離を置いたりするなど、自分たちの生活を守るための現実的な対策を講じたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※一部にAI生成画像を使用しています。