高級家具店で向けられた視線
その日は、新しい事務所の内装工事を確認した後でした。工事も進み、搬入に間に合うよう、そろそろ家具を決める必要がありました。私は「せっかくだから実物を見て決めよう」と思い、少し離れた場所にある家具店へ立ち寄りました。
店内には、ソファやテーブル、椅子などがゆったりと並べられていました。以前から候補にしていたシリーズも置かれており、私は座り心地や大きさを確認しながら見ていました。
すると、1人の店員が近づいてきて、「何かお探しですか?」と声をかけてきました。私は「仕事で使う椅子を見ています」と答えました。その店員は、私の服装を上から下まで値踏みするように見ました。そして、こう言ったのです。
「こちらは1脚20万円台からになりますが、ご予算は大丈夫でしょうか?」
さらに店員は、続けてこう言いました。
「見るだけでしたら、あまり触らないでいただけますか?」
私は一瞬、耳を疑いました。たしかにその日は、工事中の新事務所を確認した帰りだったため、動きやすい服装をしていました。しかし、私はまだ予算も必要な数も伝えていません。また、必要以上に家具に触れているわけでもありませんでした。
私が「いえ、こちらの商品を検討しているんですが」と伝えても、店員は、「でしたら、もう少し手ごろな価格帯のお店を見たほうがいいと思いますよ」と言いました。
見た目だけで「買えない客」と判断されたように感じ、私はそれ以上相談する気にはなれませんでした。
「購入予定は何脚ですか?」
最初の店員が離れた後、近くで商品を整えていた別の店員が、「よろしければ、私がご案内しましょうか」と声をかけてくれました。名札を見ると「A子」と書いてありました。
先ほどの店員とは違い、A子さんは私の服装を気にする様子もなく、何を探しているのか丁寧に聞いてくれました。私は、新しい事務所の会議室と応接スペースに置く家具を探していることを説明しました。
「会議室の椅子は、何脚くらい必要でしょうか?」
「12脚ほどです。それから応接室用のソファとテーブル、受付スペースに置く椅子も何脚か必要なんです」
そう伝えると、A子さんはすぐに用途や希望を確認しながら、いくつかの商品を案内してくれました。
「でしたら、座り心地だけでなく、長時間使ったときの疲れにくさも確認したほうがよさそうですね」
私は実際に座り比べ、サイズや納期などについても確認しました。
話を聞くうちに希望に合う商品が絞れてきたため、私はA子さんに、「会議室の椅子は12脚、こちらでお願いします。ソファとテーブルもまとめて見積もりをお願いできますか?」と伝えました。
購入内容を聞いた店員が戻ってきて
A子さんが見積書を作るため、内容を確認していると、近くを通りかかった最初の店員が足を止めました。
購入する家具について話しているのが聞こえたようで、「たくさんお求めになるんですね」と声をかけられました。私は「事務所を移転するので、必要な家具をまとめて探していたんです」と説明しました。
すると最初の店員は先ほどとは違い、「でしたら、私からもいろいろご案内できますよ」と言いました。
少し戸惑いましたが、私は、「最初に別のお店を勧められましたので、今回は、きちんと相談に乗ってくださったA子さんにお願いします」と答えました。
A子さんは最後まで丁寧に対応してくれました。その後、見積金額や納期、搬入方法について説明を受け、内容を確認したうえで正式に注文しました。
実は以前、取引先のオフィスで同じメーカーの椅子に座ったことがあり、座り心地や品質の良さは知っていました。ここ数年は会社の業績も好調で、今回の移転では、来客を迎える応接室や社員が長く使う会議室の家具にはしっかり予算をかけるつもりでした。そのため、長く使う家具にはある程度予算をかけようと考えていたのです。
店を出るころ、最初に言われた「もう少し手ごろな価格帯のお店を見たほうがいいと思いますよ」という言葉を思い出しました。もしA子さんが声をかけてくれなければ、このまとまった注文は別のお店にお願いしていたかもしれません。
まとめ
今回の出来事を通して印象に残ったのは、見た目から相手を判断することと、まず相手の話を聞くことの大きな違いでした。
会社を経営する私自身にとっても、人と向き合うときに先入観を持たず、相手が何を求めているのかを知ろうとする姿勢について、改めて考えるきっかけになりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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