私が上司の奥さまたちの前で夫を立てるのはまだしも、シャイな娘まで利用して社長からよく見られようというのは、あまりにひどい話です。
「社長に『パパはお仕事をすごく頑張ってるんだよ』と話してこい」と娘に言いつける夫。私がためらっていると、夫は「娘の内気な性格を矯正するいい機会だ」と言い放ちます。
どうやら夫は、娘が内気なのは私が甘やかしたせいか、あるいは“無能な私”の遺伝だと本気で思っている様子。なぜ優秀な自分に似なかったのだろうと、ことあるごとに嘆いていたのです。
マイナス200点の悲劇
先日、夫の会社で家族同伴の創業記念バーベキューが開催されました。もちろん、私たちも参加します。
私は夫の指示で上司の奥さまたちの輪に入って夫の話題を振り、9歳の娘は言われた通り、懸命に社長へ話しかけようとしていました。しかし、極度の緊張で、娘は社長の前でおう吐してしまったのです。
社長はすぐに「私のことはいいから、娘さんを休ませてあげて」と気づかってくれました。それなのに夫は社長にひたすら頭を下げたあと、娘に向き直り「俺に恥をかかせやがって! 帰ったら説教だ!」と耳打ちしたのです。
娘なりに頑張った結果なのに、そんな言い方はあんまりです。私は娘の背中をさすりながら「娘を責めないで! あなたの期待に応えようと頑張ったんだから」と伝えました。
しかし、それを聞いた夫は逆上。「言い訳ばかりするな!」と暴言を吐き、娘に『マイナス200点』という最低な点数をつけたのです。
家に帰ってからも夫の怒りは収まりません。社長は娘をただただ心配してくれているように見えましたが、夫は社長の機嫌を損ねたと言い、私たち母娘のせいだと責め立てます。
そして夫は社長に電話で謝罪の約束を取りつけると「明日の休日、菓子折りを持って2人で謝りに行け」と命令。とうとう私の堪忍袋の緒が切れました。
「まだ9歳の娘を出世の道具にするなんて、間違っている!」
私がそう抗議すると、夫は「誰に養ってもらっているんだ! ただでメシが食えると思うな。お前たちは黙って俺の言う通りにしていればいいんだ!」と激怒。
「俺の家族失格だ。役に立たない人間はいらない」と吐き捨てたのです。
夫の望みを叶えた結果…
翌日、私は娘を連れて外出し、その後ひとりで帰宅。そんな私を見て夫は「ちゃんと謝ってきたんだろうな? ……それで、娘はどうした?」と聞きます。
私が「置いてきた」とだけ答えると、夫は「お前は母親失格だ!」と怒り出しました。
「いないほうがいいんでしょ?」と私。昨夜「家族失格だ。いらない」と言ったのは夫です。私はその通りにしたのだと言い返しました。
夫は私の返答に驚いたあと「通報されたらどうするつもりだ!」と怒りますが、夫のことなので娘ではなく世間体を心配しているだけ。「今すぐ連れ戻せ!」と顔を真っ赤にして怒鳴ってきました。
私は「そんなに心配なら自分で迎えに行ったら?」と告げ、娘の居場所を教えました。実は、娘がいるのは社長の家だったのです。
昨夜夫に命じられた通り、私と娘は菓子折りを持って謝罪に伺いました。泣きながら必死に「ごめんなさい」と謝る娘の姿に、社長ご夫妻は「謝ることなんて何もないのよ」と驚かれ、まだ9歳の娘がなぜここまで思い詰められているのか、やさしく尋ねてくださったのです。
おふたりのやさしさに触れ、ずっとこらえていたものがあふれてしまった私は、バーベキューでお二人から離れた後の夫の振る舞いや、家庭での言動を洗いざらい話してしまいました。すべてを知った社長は、私と娘を助けると言い、「ご主人には、ここへ娘さんを迎えに来させなさい」と提案してくれたのです。
すると夫は、「頭のおかしくなった嫁がやったことだと言ってやる」と捨て台詞を残し、慌てて家を飛び出していきました。
最低点をたたき出したのは夫!
後日、社長の奥さまから聞いた話では、社長宅に駆けつけた夫は、社長から厳しく叱責されたそうです。
社長が最も問題視したのは、娘がおう吐した際の夫の言動でした。娘の体調より先に社長への体裁を気にし、謝罪のあとも娘を責め続ける――そんな夫の姿に、社長は強い嫌悪感を抱いていたそうです。
「家族を大切にできない人間に、会社を任せることはできない」と、はっきり告げられたと聞きました。
そして私もようやく目が覚めました。娘を守るため、離婚を決意したのです。
その後、私は娘を連れて実家に身を寄せ、弁護士に相談しながら話し合いを重ねました。数カ月後、親権や養育費、娘との面会などについて取り決めをし、夫も合意のうえで離婚が成立しました。元夫はあの出来事がきっかけで社内での評価を失い、出世から遠のいたと聞いています。
一方、私は社長のご友人が経営する会社を紹介していただき、そこで働きながら、娘と2人で幸せに暮らしています。仕事と家事の両立は大変ですが、娘がたくさんお手伝いしてくれるので、楽しい毎日です。私と娘の未来を切り開いてくれた社長ご夫妻には、感謝してもしきれません。
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出世を目指すのは、決して悪いことではありません。でも、家族に自分を持ち上げさせて評価を得ようとするのは、少し違いますよね。家族は本来、「頑張ろう」と思わせてくれる支えのような存在ではないでしょうか。その支えを力に変えて、自分の手でつかみ取ってほしいものです。
また、子どもが懸命に頑張ったときは、結果を責めるのではなく挑戦したこと自体を認めてあげたいもの。「よく頑張ったね」のひと言が、失敗に落ち込む子どもの心を解きほぐし、自信を取り戻す力になるはずです。
【取材時期:2026年8月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています