「両親には会わせない」妻の決意
その後、ようやく報告はしたものの、義両親からお祝いや気遣いの連絡が来ることは一切ありませんでした。そして無事に出産を終えたあと、妻は私に思いがけない言葉を口にしたのです。
「私、この子を両親には会わせないつもり」
「えっ……本当に初孫の顔を見せなくてもいいの?」驚く私に、妻は静かに「私の両親、子どもが嫌いなの」と告げました。
実は、妻は幼いころから、両親に愛情を注いでもらった記憶がほとんどないと言います。その一方で、両親はとても世間体を気にする人たちで、人前では仲の良い家族を装っていたのだとか。たしかに、妻は今でも両親に会おうとすることはほとんどありません。結婚式のときには、そんな事情があるとはまったく気づきませんでした。
「娘まで、両親の見栄のために振り回されたくないの」そう打ち明ける妻の悲痛な表情を見て、私は妻の気持ちを尊重しようと決意しました。それからというもの、義両親に娘を会わせることなく、平穏な3年の月日が流れました。
「孫に会いたい」義母の本音
ところがある日、義両親から突然一通の手紙が届きました。そこには「もう3歳になりましたか? 一度くらい孫に会わせてほしい」と書かれていました。
「向こうもすごく会いたがってるみたいだけど……」手紙を見せても、妻は浮かない表情のまま。どうしても今になって会いたくなった理由が気になった私は、直接義母に電話をかけてみることにしました。
「お義母さん、聞きたいことがあるんですが……。どうして今になって、急に娘に会いたいとおっしゃるんですか?」すると、義母からは信じられない言葉が返ってきたのです。
「最近ね、友だちがみんな孫に会ったときの話をしたり、写真を見せてくれたりするのよ。私たちだけ、孫の話が何もできないのも寂しくて」悪びれる様子もなくそう言い放つ義母。さらに、呆れる私に追い打ちをかけるように、こう続けました。「それに、孫なら自分の子とは違って『かわいい』っていうじゃない?」
「何も変わってない」妻が出した答え
その言葉を聞いて、私は悟りました。義両親は子どもに対する考えを改めたわけでも、妻への態度を反省したわけでもなかったのです。単なる自分たちの見栄と自己満足のために、私たちの娘を利用しようとしているだけでした。
怒りを抑えきれなくなった私は、義母に問い詰めました。「お義母さんたちは、妻が子どものころどんな気持ちで過ごしていたか、考えたことがありますか?」しかし義母は、「え? そんなの昔のことでしょう?」と軽く笑って返してきたのです。
その瞬間、私の中で何かが切れました。「……そんな考えなら、僕から妻に会うよう勧めることはできません」私はそれだけをはっきりと告げ、電話を切りました。やり取りを聞いていた妻は、「やっぱり、あの人たちは何も変わってなかったんだね」と静かにつぶやきました。
その後、妻は義両親へ手紙の返事を出しました。「娘に会わせるつもりはありません。私がされてきたことを“昔のこと”で済ませるうちは、なおさらです」
今後も義両親とは距離を置くことを決めた妻。私はこれからも、妻と娘の笑顔を一番に守っていこうと心に誓っています。
◇ ◇ ◇
「家族だから」という理由だけで無理を重ねるのではなく、自分自身や子どもが穏やかに過ごせる環境を第一に考え、ときには距離を置くこともひとつの選択なのかもしれませんね。
【取材時期:2026年9月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。