「もうすぐ社長夫人だから」
婚約が社内でも知られるようになってから、B美は私たち同期にたびたび、「私、もうすぐ社長夫人だから」と言うようになりました。
最初は冗談だと思っていたのですが、次第に言い方も態度も変わっていきました。仕事を頼まれると、「それ、わざわざ私がやるような仕事じゃなくない?」と言ったり、同僚が意見をすると、「私にそんな言い方して大丈夫?」と返したりすることもありました。
もちろん、社長の前ではそんな態度を見せません。A也社長が近くにいると、B美はいつも通り穏やかに仕事をしていました。
私たちは気になりながらも、「婚約と仕事は別の話だし」と、できるだけ相手にしないようにしていました。
同僚にお金まで要求
そんなある日、B美が私たち同期3人に声をかけてきました。
「ねえ、1万円ずつ出してくれない?」
突然の言葉に、私は思わず「何のお金?」と聞き返しました。
するとB美は、「今月ちょっと、お金が足りないのよ。A也さんには言いづらいし。結婚祝いってことで、1万円ずつ出してほしいのよ」と言うのです。私たちはもちろん断りました。
するとB美は不機嫌そうに、「社長夫人になる私に恩を売っておいたほうが、あとあと得だと思うけど?」と言いました。さらに、「そんな態度なら、A也さんに『同期から嫌がらせされている』って相談しようかな」とまで口にしたのです。
さすがに聞き流せないと思い、私は、「お金を出さないことと嫌がらせは別の話だよ」と伝えました。
するとB美は、「どう受け取るかは私の自由でしょ」と言って、その場を離れていきました。
「嫌がらせを受けている」と訴えたB美
B美の要求を断ってから数日後、私たち3人は直属の上司から呼ばれました。B美から、「同期から嫌がらせを受けている」と相談があったというのです。上司は一方的に私たちを責めることはなく、「何があったのか確認したい」と言いました。
そこで私たちは、B美から金銭を求められたこと、断ったところ「社長夫人になる私に恩を売っておいたほうがいい」と言われたこと、その後「嫌がらせされたと相談する」と言われたことを、それぞれ説明しました。上司からは、「会社でも必要な確認をします」とだけ伝えられ、その後の詳しい経緯について説明を受けることはありませんでした。
それからしばらくして、仕事を終えて帰ろうとしていた私をB美が呼び止めました。
「あなたたちのせいだからね」
突然そう言われ、私は何のことかわかりませんでした。するとB美は、「A也さんに婚約を解消されたの!」と言ったのです。
B美によると、私たちの上司が事実関係を確認する中で、B美が「社長夫人になる」と繰り返し口にし、同僚にお金を求めていたことがA也さんに報告されたそうです。
A也さんはその内容を知った後、B美本人とも改めて話し合ったとのことでした。そこで、職場での振る舞いや周囲への接し方について考え方の違いが明らかになり、2人の関係についても見直すことになったそうです。
その後もB美はしばらく会社に勤務していましたが、後に退職しました。退職した詳しい理由については、私は聞いていません。
周囲への配慮を忘れないために
B美が社長と婚約したことは、あくまで本人たちのプライベートな出来事です。少なくとも、B美の会社での役職や権限が変わったわけではありません。
一連の出来事を振り返ると、気になったのは、B美が自分にとってうれしい変化を、周囲より優位に立つための材料のように扱っていたことでした。
今回の出来事を通して私は、人間関係が変化したときほど、これまで一緒に過ごしてきた相手への配慮を忘れないことが大切なのだと感じました。
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社長との婚約をきっかけに、同僚への態度が変わっていったB美。うれしい出来事があったとしても、それを理由に周囲への接し方まで変わってしまえば、それまで築いてきた信頼関係にも影響することがあります。立場や環境が変化したときほど、身近な人への思いやりや配慮が表れるのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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