孫のお迎えを引き受ける日々
息子夫婦の家は、わが家から車で20分ほどの場所にあります。5歳になる孫娘が保育園に通っており、息子もお嫁さんもフルタイムで働いていました。しかし数カ月ほど前から、息子夫婦は帰宅が遅くなる日が増え、延長保育を利用しても、終了時間までに迎えに行けない日が続いていました。
あるとき息子から、「ちょっと今、仕事が忙しくて。今週だけ保育園のお迎えをお願いできない?」と頼まれたことがきっかけで、私が孫を迎えに行くようになりました。
最初は週に1回ほどでした。孫も、「ばあばがお迎えだ!」と喜んでくれます。私自身、孫と過ごせる時間がうれしく、予定が合う日は進んで引き受けていました。
ところが、いつの間にか週2回、3回と増えていき、気付けば週4回近く迎えに行くこともありました。
お迎えだけで終わる日もあれば、
「帰りに夕飯も食べさせておいてくれる?」
「今日は少し遅くなるから、お風呂もお願い」
と頼まれる日もありました。
もちろん、息子夫婦が忙しいことはわかっています。ただ、私にも仕事があります。孫のお迎えがある日はパートを早めに上がれるよう調整したり、友人との予定を変更したりすることも増えていました。
それでも私は、「今だけ忙しいのだろう」と思い、できる範囲で協力していたのです。
お迎えの頻度を減らしたいと告げると
そんな生活が何カ月か続いたころ、私自身も少し疲れを感じるようになりました。パートから急いで保育園へ向かい、孫を息子夫婦の家まで送り届ける。夕食を用意し、時には孫をお風呂に入れて息子夫婦の帰りを待っていると、私が自宅に戻るころにはかなり遅い時間になる日もありました。
ある日、息子に「お迎えなんだけど、これからは週2回くらいにできないかな」と伝えました。すると息子は「え? なんで?」と、意外そうな顔をしました。
私は責めるつもりはなく、単純に負担を減らしたいと伝えるつもりで、「私も仕事があるし、最近ちょっと予定を合わせるのが大変になってきたの。急にどうしても必要なときは、予定が合えば手伝うけど、毎週4回は難しいかな」と言いました。
しかし息子は不満そうに、「今までやってくれてたじゃん」と言いました。私が「今までできたから、これからもずっとできるとは限らないでしょう?」と答えると、息子は黙り込みました。
その日の夜、今度はお嫁さんから「急に週2回になると、来週からの仕事の調整が難しくて困ります」とメッセージが届きました。私は、「急に全部やめるとは言ってないよ。週2回ならこれからも協力できるから、残りの日は2人で相談してほしい」と返しました。
すると翌日、息子から電話がかかってきました。開口一番、こう言われたのです。
「週2回しか無理なら、こっちも当てにできないよ」
「そんな中途半端なら、もう迎えに来なくていい」
少し間を置いて、息子はさらに言いました。
「それなら、もう孫にも会わせないから」
「わかった。じゃあ今日で終わりね」
私は一瞬、言葉が出ませんでした。孫に会えなくなるのは、もちろん寂しいです。ただ、私が孫をかわいがっていることを理由に、「会わせない」と言えば言うことを聞くと思われたことが悲しくなりました。
私は少し考えてから答えました。
「わかった。そこまで言うなら、今日でお迎えは終わりにするね」
息子は、「え?」と声を上げました。私がそのまま受け入れるとは思っていなかったのか、しばらく言葉が続きませんでした。
「孫には会いたいよ。でも、会わせないと言われるのが嫌だから無理を続けるのは違うと思う。これからのお迎えは、あなたたち夫婦で考えて」
そう伝えると、息子は、「本当にそれでいいの?」と聞きました。私は「あなたがそうすると決めたんでしょう?」と答えて、電話を切りました。
その日以降、私は保育園のお迎えに行かなくなりました。
最初の数日は孫のことが気になりました。ただ、仕事が終わった後に慌てて保育園へ向かう必要がなくなり、自分の時間も少しずつ戻ってきました。久しぶりに友人と夕食に出かけたり、仕事帰りに買い物をしたり。夫からも、「最近ずっと孫中心になってたから、少し休んでもいいんじゃない?」と言われました。
しばらくして、息子から電話が
それからしばらくして、息子から電話がありました。
「母さん、ちょっと相談なんだけど……」
以前とは違い、ずいぶん弱い声でした。話を聞くと、夫婦で交代しながら迎えに行こうとしたものの、仕事の調整が思うようにいかなかったそうです。お嫁さんの残業がある日は息子が早退し、息子が外せない仕事の日はお嫁さんが迎えに行く。
それでも対応できない日には、ファミリー・サポート・センターなど、子どもの送迎や預かりを地域で支援する仕組みについても調べ始めたとのことでした。
そして息子は、「母さんに頼みすぎてたって、やってみてわかったよ。孫に会わせないなんて言ったのも悪かった。あれは言いすぎた」と言いました。少し間を置いて、息子は続けました。
「もう週4回も頼まないから、週2回だけお願いできないかな」
私は、「最初から、その話をしたかったんだけどね」と答えました。息子は、「ごめん」と言いました。
私は、週2回であれば協力することにしました。ただし、仕事や自分の予定を優先したい日は無理をしないこと、急なお迎えも必ず対応できるわけではないことを改めて伝えました。息子夫婦も了承してくれました。
まとめ
その後は、基本的に週2回だけ孫のお迎えをしています。以前のように「お願いして当然」という雰囲気ではなく、息子夫婦から事前に予定を確認してくれるようになりました。孫は今でも、「今日ばあばのお迎え?」と楽しみにしてくれています。
私も孫と過ごす時間は大好きです。だからこそ、その時間を心から楽しめなくなるほど無理を重ねる前に、一度立ち止まる必要があったのだと思います。
息子から「孫に会わせない」と言われたときは悲しかったですが、そこで無理に折れなかったことで、家族の間でも「手伝ってもらうこと」を当たり前にしない関係について考え直すきっかけになりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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