当初は、夫も義母も一緒に介護をする予定でした。しかし、結局は私ひとりに任せっきり。それどころか、私に仕事を辞めるよう求めてきたのです。義父のお世話をすること自体は嫌ではありませんが、少しは自分の時間もほしいし、好きな仕事も辞めたくないというのが本音でした。
しかし、義父は最期を自宅で過ごしたいはず。私がお世話をしなければ、それもかなわないかもしれない……。そう考え、私は仕事を辞めました。
私が夫に少し介護を手伝ってほしいと頼むと、義母が割って入り、「それは嫁の仕事でしょ? 息子にそんなことをさせるな!」と怒ってきます。さらに夫も「母さんもああ言ってるし、頑張って。俺は外で働いているから、介護する必要ないんだよ」と義母に同調。
義母はというと、同居して以来、私に意地悪や嫌みばかり。介護はもちろん、家事も何ひとつ手伝ってくれません。
義父の最期に見えた夫と義母の本性
意地悪な義母とは正反対で、義父は本当にやさしい人でした。毎日介護をする私を気遣い、いつも温かい言葉をかけてくれます。結婚以来、介護が必要になる前からずっと私を気にかけてくれていた義父。私はその恩返しのつもりで、お世話をしていました。
そんな義父は、最近少し体調が持ち直し、車椅子で外出できるほどに回復していました。先日は医師の許可のもと、2人で出かけることも。その際、義父は弁護士を呼び、何やら話をしていました。来るべきときに備えているようで、私は何だか寂しい気持ちになりました。
それから1週間後、義父の体調は急激に悪化し、危篤状態に。最期は何とか家族で見送ることができました。しかし、夫も義母も悲しんでいる様子がありません。それどころか、葬儀中も2人でヒソヒソと談笑し、笑みを浮かべていて……。その不謹慎な態度に、本当に腹が立ちました。
夫と義母は、遺産のことで頭がいっぱいだったのです。施設に入れず、自宅で介護しようと言ったのも、義父のためではなくお金のため。「遺産が1円でも減らないよう、家で私に面倒を見させて正解だった」と話しているのが聞こえてきました。
義父はあんなにやさしい人だったのに、どうしてこの人たちは……。そんなことを思いながら、ひとりで葬儀の片付けをしていると、途中から姿を見せなくなっていた夫から連絡が入りました。
離婚を告げた夫に「お義母さんの介護よろしく!」
「父さんの介護ご苦労様!」
「もう出てっていいぞ♪」
夫は、すでにサインした離婚届を家に置いてあるから、片付けが終わって帰ったら、私もサインして提出してくれと言います。
「ありがとう! お義母さんの介護よろしく!」
やさしい義父ももういない。私にとって、これ以上夫婦でいる理由もなく、離婚は願ったりかなったりです。離婚を受け入れ、家を出ることにしました。
「は?」
夫は、私の言葉を理解できていないようでした。義母は元気に見えるようですが、実は認知症の兆候が出始めていたのです。
夫は、私が離婚したくなくて脅していると思ったようですが、そんなはずはありません。散々2人にしいたげられてきたのに、これ以上一緒にいたいと思うわけがない。意地悪な義母を介護するほど、私はお人好しでもありません。
「母さんは元気だぞ! 認知症なわけあるか!」と怒る夫に、私は「“お義父さん”の介護要員だった私に、もう用はないんでしょ? 葬儀の片付けも終わったので、出て行きます」と告げました。
すると夫は「俺はすぐに若くてかわいい嫁をもらう! 俺が既婚者なのをずっと残念がられていたんだ! 早く出て行け!」と怒鳴ってきました。私は電話を切り、サインした離婚届を持って家を出ました。
それにしても夫は、どこか抜けています。いずれ義母にも介護が必要になるかもしれないのに、そのことは想像もしていない様子。それに、夫の言う「若くてかわいい嫁」も、おそらく女性のいる店で知り合った人。相手のリップサービスを本気にしているのだろうと思うと、あきれて何も言えませんでした。
元夫が激怒!義父の遺言に書かれていたのは…
離婚からしばらく経ったある日、元夫が激怒しながら連絡してきました。義父の遺言書の内容が明らかになり、介護への感謝として、私に多くの財産が遺贈されると知ったためです。妻や子の遺留分にも配慮し、弁護士を介して正式に作られた遺言でした。
義父は、介護をしなかった妻や息子より、毎日そばでお世話をした私を大切に思い、財産を残せるよう準備してくれていたのでした。
元夫は、女性のいる店で知り合った人と結婚するつもりだったようですが、相手にその気はなかった様子。やはり元夫だけが本気にしていたのでしょう。
さらに義母の認知症も進み、ひとりでは面倒を見きれないと私に泣きついてきました。再婚まで求められましたが、義母の介護が目的なのは明らか。義父には恩返しのつもりで介護をしましたが、散々嫌がらせをしてきた義母のお世話まで引き受けるつもりはありません。
その後、元夫は義母の介護のため休職し、収入も激減したようです。一方、私は義父から遺贈された財産を大切にしながら、好きだった仕事に復帰。今は充実した毎日を過ごしています。
◇ ◇ ◇
介護は、誰かひとりが担って当然のものではありません。家族だから、嫁だからと負担を押しつけるのではなく、本人の気持ちや生活も尊重しながら、家族で協力したり、必要に応じて外部のサービスを頼ったりすることも大切です。
義父が最期まで忘れなかったのは、自分を支えてくれた人への感謝でした。身近な人の思いやりを当たり前と思わず、感謝をきちんと言葉や行動で伝えていきたいですね。
【取材時期:2026年9月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。