夫は義母に同調するばかりでした。通帳も何もかも義母と夫が管理していて、私には自由に使えるお金すらありません。違和感と息苦しさは少しずつ積もっていきましたが、そんな生活が続く中で、私はいつしか反抗する気力を失っていました。
そんななか、夫の姉の結婚が決まります。義姉は母親の口うるさい性格を嫌って早くに家を出たそうで、実家に顔を出すことはめったにありませんでした。
私も義姉に会ったのは、私たちの結婚の挨拶と結婚式の2回だけ。連絡先は交換しているものの、やり取りをしたことはありませんでした。
そんな義姉が、婚約者を連れて、久しぶりに結婚の挨拶に実家へやってくることになったのですが——。
差し伸べられた手
義姉と婚約者が挨拶に訪れる日、義母は私に言い放ちました。「家事しかできないあんたは家政婦みたいなもんなんだから、その間どっかに出かけていなさい!」
義姉に会いたい気持ちはあったものの、私が意見しても聞いてもらえることはありません。私は小さくうなずくしかなく、義母の言う通りにしました。
その夜、義姉から突然電話がかかってきます。「どうして今日いなかったの? 婚約者にも合わせたかったのに!」私は一瞬迷ったものの、自分の部屋で声をひそめ、義母に言われたことをそのまま打ち明けました。
義姉はしばらく絶句したあと、「それで今日の実家、なんだかおかしかったのね……」とつぶやきました。
義母はお茶を出そうにも茶葉の位置すらわからず、義姉が私の居場所を聞いても、家族の誰もが「あいつはいいんだよ」と取り合わなかったそうです。
申し訳なさから「ごめんなさい。私のせいで恥をかかせてしまって……」と口にした私。義姉はきっぱりと「あなたが謝ることじゃないでしょ。嫁を家政婦扱いするお母さんたちが、私に恥をかかせたのよ」と言ってくれました。
そして少し声を和らげ、「どうしてこの家を出ていかないの?」と尋ねてきました。
「通帳も全部お義母さんと夫が管理しているし、実家も頼れなくて……。出ていってもやっていけないんです」正直にそう答えると、義姉は「あなたには、ここを出ていく意思があるの?」とたしかめてきます。
一瞬悩んだものの、私が「できることなら……」と答えると、義姉は心強い声で約束してくれました。
「私も母にはさんざん振り回されてきたから、他人事とは思えないの。少しだけ時間をちょうだい。あなたが出ていけるチャンスを、絶対につくるから」そして、真剣な声でこう付け加えたのです。「弟は母に逆らえないの。出ていくなら、弟と離婚するしかない。その覚悟だけは決めておいて」
それからの半年、私は義姉が紹介してくれた弁護士さんに相談を重ね、義母たちの言動もこっそりメモに残し続けました。弁護士費用や家を出るための資金は、義姉が貸してくれると言うので、お言葉に甘えることに……。
結婚式からの強制退場
そして迎えた結婚式当日。夫と義両親とともに新婦控室を訪ねると、義姉は私の姿を見るなり声を荒らげました。
「何よその地味な格好!晴れの日に私に恥をかかせるつもり!?」
「ご、ごめんなさい……」
「私の結婚式に、あなたの席はないの。今すぐ帰って!」
義実家の誰ひとり、私を追い出そうとする義姉を止めようとはしません。それどころか、義母は「さすが私の娘!よくわかってるわね!」と義姉を褒めました。
その瞬間、義姉の表情がわずかにこわばったように見えました。それでも義姉は私に向き直り、念を押すように言いました。
「帰って、家中ピカピカにしておくのよ。……ね?」
私は顔を覆い、控室を飛び出しました。
家族全員が式場にいる今なら、誰にも気づかれずに確実に家を出られる——それが、義姉と立てた計画でした。披露宴が終わり、家族が戻ってくるまでの数時間が勝負です。
義実家に着くと、私は記入済みの離婚届をリビングのテーブルに置き、最低限の荷物をまとめました。暴言を書き留めたメモ帳も、忘れずにかばんへ……。
玄関の鍵を閉めながら、もうこの家には戻らないと心に決めました。向かう先は、義姉の助けを借りてあらかじめ契約しておいた小さなアパートです。
新たな人生の幕開け
その日の夜、披露宴から帰宅して離婚届に気づいた義母から、電話がかかってきました。
「あんた今どこにいるのよ!? なんで離婚届が置いてあるの!?」
以前の私なら、きっと謝ってしまっていたでしょう。でも、義姉と話すようになったこの半年で、私は少しずつ自分を取り戻していました。
「素敵な日になりましたね。娘さんは新しい家庭へ、私は新しい人生へ。同じ日に門出を迎えられるなんて嬉しいです!」
義母は一瞬言葉に詰まり、すぐに「離婚なんて、絶対に認めないわよ!」と取り乱したように叫びました。
「反対されるなら、調停を申し立てます。今後のご連絡は、すべて弁護士さんを通してください」電話の向こうで、夫が何か言いかけて黙り込むのが聞こえました。
その後は弁護士さんを通じて話し合いが進み、離婚は成立。慰謝料についても、納得できる形で話がまとまりました。
資金を貸してくれた元義姉には、借りたお金に結婚のお祝いを添えて返しました。「何かあったら、今度は私が力になりますね」と伝えると、元義姉は「頼もしいわね」と笑っています。
元義姉からは、元義母が久しぶりに家事をして腰を痛めたと聞きました。元義父と元夫からは「お金も好きに使っていいから! 頼むから戻ってきてくれ!」と連絡がありましたが、応じるつもりはありません。
今は、同居生活で身に付けた家事の腕を生かして、家事代行の仕事をしています。お客様からの感謝の言葉に、自分の仕事を認めてもらえる喜びを感じる毎日です。
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たとえ家族であっても、誰か一人だけに負担を押しつけたり、相手を見下したりしていい理由には決してなりません。お互いを尊重し、負担を分かち合うことで、家族が心地よく過ごせる居場所になるのではないでしょうか。
また、生活費を渡されない、自由なお金を持たせないといった行為は「経済的DV」にあたる場合があります。一人で抱え込まず、DV相談ナビ「#8008」など、専門の相談窓口へご相談ください。
理不尽な状況に苦しんでいるときは一人で抱え込まず、信頼できる人に助けを求める勇気も大切にしたいですね。
【取材時期:2026年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。