一方の多恵子さんは、自宅から遠く離れた場所でリゾートバイトをしていました。旧姓の百瀬に由来する「もも」の愛称で呼ばれながら、新たな人間関係の中で過ごしているようです。
ある日、木綿子さんからの連絡で、仲良くしていた隣人・梅村静江さんが警察を呼んだことや、捜索願の話まで出ていることを知り、多恵子さんは動揺します。家族と一度話をつけたほうがいいのかもしれない。そう思いながらも、戻ることへの抵抗は消えません。
そんな中、同僚の鳥谷さんから「俺、一緒に行ってやろうか?」と声をかけられ、そのやさしさに思わず涙します。周囲の人たちにあたたかく支えられながら、多恵子さんは家にいたころとは違う、生き生きとした時間を過ごしているようで……。
明るく“これからの話”をするママ。その表情は豊かなもので















仕事後、多恵子さんと鳥谷さんは、なじみのバーを訪れます。鳥谷さんは、多恵子さんを泣かせてしまったお詫びに食事をおごるつもりだったようです。多恵子さんは、勢いで家を出てきたまま逃げ続けていることを振り返り、一度戻ってきちんと整理したほうがいいのかもしれないと話します。
鳥谷さんは付き添うと言いますが、多恵子さんは「1人で大丈夫」と笑顔で返しました。するとバーのオーナー・圭さんは、鳥谷さんが寂しがり屋で、多恵子さんがまたどこかへ行ってしまうことを心配しているのではないかと見抜きます。
ホテルのバイトは3月末まで。「4月になったら一度帰る、その後の予定は決まっていない」と多恵子さんが話すと、リゾートバイトの継続やバーで働くことを提案され、目を輝かせるのでした。
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つらい場所から離れた先で、思いがけず居心地のいい場所に出会うことがありますよね。本当は一度戻って整理しなければいけない。そうわかっていても、自分を名前で呼んでくれる人、気にかけてくれる人、次の居場所を提案してくれる人がいると、「ここにいたい」と思う気持ちが強くなるのも自然なことかもしれません。
大切なのは、逃げた自分を責めることだけではなく、安心できる場所で取り戻した気持ちにも目を向けること。自分がどう生きたいのかを考える余白は、次の一歩を選ぶ力になってくれそうです。
紙屋束実