予想外のプレゼント
ある日、たまりかねた私は、せめて家事くらいはしてほしいと夫に訴えました。収入のほとんどを家賃や生活費に充てているうえに、家事まで私が全部担っているのです。
ところが夫は、私の訴えには何も答えませんでした。代わりに「そんなストレスが溜まってるお前に朗報だ。実は犬をもらうことになったんだ!」と言い出しました。友人から、どうしても飼えなくなったと頼まれ、犬を引き取ることになったのだそうです
ペットを飼うのは簡単に決められることではありません。それなのに夫は「もう約束しちゃった!」と軽い調子……。さらには、もうすぐ私の誕生日だからそのプレゼントだと言って、笑って済ませようとします。
あまりに急な話でしたが、実家でずっと犬を飼っていた私は、実は動物が大好き。夫から子犬の写真を見せられると気持ちが揺らぎ、気づけば迎え入れる準備を始めていました。
父が目撃した“夫の姿”を伝えると…夫は!?
犬を迎えてから1カ月後。父から思いがけない話を聞かされ、私は頭が真っ白になりました。夫が残業だと言っていた夜、同窓会帰りの父が、若い女性と腕を組んで繁華街を歩く夫を見かけたというのです。
その日のうちに問いただすと、夫は「ずっと会社にいた。お義父さんの見間違いだろ」と否定しました。
けれど、私にも思い当たることがありました。以前はほとんどなかった残業が増え、休日も出かけてばかり。スーツから香水のにおいがしたこともあります。
意を決して疑いをぶつけましたが、夫は「残業は人手不足、休日は釣り、香水は電車で移っただけ」と取り合いません。そして「写真でも撮ったのか? 証拠がないなら疑うな!」と逆ギレしてきたのです。
私が言葉に詰まると、夫は「ほら見ろ。証拠はないじゃないか」と笑いました。
「証拠はあるのか?」強気な夫を前に私は…
数週間後。私は夫に、LINEで離婚したいこと、慰謝料も請求するつもりであることを伝えました。顔を合わせればまた言いくるめられる。だからこそ、あえて文字で残る形を選んだのです。
夫は「また妄想か? 証拠はあるのか?」と、強気な態度を崩しません。しかし、今度は証拠があります。私は落ち着いて返信しました。
「最初から最後まで録画されてたけど?」
実は1カ月ほど前、私は夫に相談し、犬のお留守番用にペットカメラを設置していました。ある日のお昼休み、犬の様子を見ようとアプリを開くと、会社にいるはずの夫が女性を連れて家に入ってくるところが映っていたのです。
私たちの家に夫が浮気相手を招き入れている——。しかも、留守番中の犬のすぐそばで……。画面を見つめる手が震えました。今すぐ電話して問い詰めたい。けれど、ここで騒ぐのは得策ではありません。
なんとか気持ちを抑えて、証拠を残すことにした私。リビングのソファで親密に過ごすふたりの映像を、その日のうちにすべて保存しました。
「ペットカメラを置いたこと、忘れていたでしょ?」と続けてメッセージを送った私。夫からの返信が止まりました。
「もう無理」冷静に告げた私の言葉に夫は…
さらに私には、言っておきたいことがもう1つありました。
「犬のことも聞いたよ」
ペットカメラを介して聞いた会話から、夫が連れてきた犬は浮気相手の飼い犬だったことが判明しました。飼い始めてすぐに「お世話が大変だから手放したい」と夫に相談していたようです。
それを聞いて、あまりの無責任さに強い怒りが湧き上がりました。夫には「もう二度とペットなんて飼わないで! 相手にも言って置いて」と強く釘を刺しておきました。
しばらくして夫から届いたのは、「チャンスをくれ。収入のいい仕事に就くし、家事も犬の世話もするから」とすがるような返信。私の答えは「もう無理」のひと言でした。
そして私は「いい加減、人に甘えるのはやめて。荷物をまとめて出て行って」と伝えました。
このマンションは、独身時代から私が借りているものです。解約して私も引っ越すつもりだと伝えると、夫からの返信はぱったり途絶えました。自分の収入では引越し費用を用意するのも難しいと、夫自身がよくわかっていたのでしょう。
その後、弁護士にも相談しながら話し合いを進め、離婚が成立。元夫と浮気相手には慰謝料を請求しました。
夫が連れてきた犬は、これからも私が育てるつもりでいます。あの子は証拠を残すきっかけになってくれただけでなく、疲れた心を癒やしてくれる大切な家族です。連れてきてくれたことだけは、夫に感謝してもいいのかもしれません。
私は心機一転、在宅勤務が可能な仕事に転職。年収は少し下がりましたが、犬と過ごせる時間が増え、心に余裕が生まれました。元夫を養っていたころよりも、今のほうがずっと幸せです。
◇ ◇ ◇
犬を家族に迎えることは、その命が尽きるまで責任を持つということ。「お世話が大変だから」「やっぱりいらない」と手放してよいものではありません。迎える前に、毎日の世話や費用、この先何年も続く暮らしまで考えておくことが大切ですね。
そして、誠実に向き合うべきなのは、ペットに対してだけではありません。そばで支えてくれるパートナーや家族にも、嘘をつかず、責任を持って向き合うこと。その積み重ねがあってこそ、家族の信頼関係は育っていくのかもしれません。
【取材時期:2026年8月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。