弟の婚約者に抱いた違和感
私が高校生のころ、母が病気で他界しました。当時、弟はまだ小学生。父は仕事で忙しかったため、私もできるだけ家事を引き受け、弟の面倒を見てきました。
そんな弟も社会人になり、ある日、結婚を考えている女性がいると報告してくれたのです。
後日、弟は婚約者を連れて実家を訪れ、私も夫と一緒に顔を出しました。弟は彼女に、昔から私にいろいろと助けてもらったことや、今でも感謝していることを話していました。
私は少し照れくさかったのですが、彼女はどこか面白くなさそうな表情。その後も弟が私の話をすると不機嫌そうになることがあり、少し気になりました。
ただ、弟が選んだ相手なので、口を出すつもりはありませんでした。
結婚式当日、突然のひと言
それからしばらくして、弟の結婚式の日を迎え、私も夫と一緒に出席しました。
弟の晴れ姿を見た瞬間、幼いころからの思い出がよみがえりました。亡くなった母にも、この立派に成長した姿を見せてあげたかった……。そう思うと、自然と涙があふれてきました。
挙式が終わり、披露宴までの間、親族で写真を撮ったり、言葉を交わしたりする時間がありました。
そのとき、弟がスタッフに呼ばれて少し離れたところへ行ったのですが、私たち夫婦に新婦が近づいてきたのです。そして、周囲に聞こえないような声で、突然こう言いました。
「お義姉さん、披露宴には出ないでください。もう帰ってもらえませんか?」
あまりにも突然の言葉に、私は面食らってしまいました。理由を尋ねると、彼女は不機嫌そうな顔で言いました。
「はっきり言って、私、お義姉さんのことが好きじゃないんです。今日の主役は私なのに、嫌な思いをさせてまでここにいたいんですか?」
どうしてそこまで言われなければならないのか、理解できませんでした。
「でも、私が急に帰ったら、弟も心配すると思うし……」
そう伝えると、彼女は「体調が悪くなったとでも言えばいいじゃないですか」と言い放ったのです。
「じゃあ帰ります」と告げると…
弟の晴れの日に言い争いをしたくありませんし、ここまで言われて居座る気にもなれませんでした。
「……わかりました。じゃあ帰ります」
そう告げると、隣で話を聞いていた夫も「僕も一緒に帰るよ」と言ってくれました。
彼女は引き止めることもなく、むしろ満足そうな表情を浮かべていました。
帰り道、夫は「せっかく楽しみにしていたのにな」と気づかってくれ……。それまで我慢していた悲しさが込み上げてきました。
弟が知った、まさかの理由
その日の夜、弟から電話がかかってきました。
「姉ちゃん、本当にごめん。何があったのか聞いたよ」
弟の話によると、披露宴が始まる前、私たち夫婦がいないことに気づき、新婦に尋ねたそうです。
すると新婦は、「お義姉さん、体調が悪くなって帰ったみたい」と説明。しかし、弟は私が何も言わずに帰るとは思えず、不審に感じたのだとか。
詳しく問いただすと、最初はごまかしていた新婦も、最後には自分が帰るよう言ったことを認めたそうです。
「ごめんね、急に帰っちゃって。でも、あの場で言い争いをしたくなくて……」
私がそう伝えると、弟は「姉ちゃんは悪くないよ」と言ってくれました。
さらに弟が、新婦に私を帰らせた理由を尋ねると、思いがけない事実が明らかになったそうです。
実は新婦は、結婚式当日、弟が披露宴の最後に話すあいさつのメモを偶然目にしていたそうです。そこには、亡くなった母や父への思いとともに、幼いころから弟を支えてきた私への深い感謝の気持ちがつづられていました。
以前から弟が私を慕っていることを面白く思っていなかった新婦は、結婚式でまで私への感謝を伝えようとしていることが許せなかったのだとか。
「今日は私たちの結婚式なのに、どうしてお姉さんの話までする必要があるの?」
そう訴える新婦に、弟はショックを受けたそうです。
その後、弟は妻に私への謝罪を求めたものの、彼女は自分が悪いとは思っていない様子だったといいます。話し合いを重ねても考え方の違いは埋まらず、結局、ふたりは離婚することになりました。
弟がつらい思いをすることになったのは、姉として胸が痛みます。思い返せば、婚約者の態度に違和感を覚えた時点で、弟にそれとなく話しておけばよかったのかもしれません。
これからは弟に何か気になることがあれば、遠慮せずに伝えようと思います。そして何より、これから弟が幸せな人生を歩んでくれることを願っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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