入院中に義父から電話が!
ある日、義父から「営業ばかりやってないでもっと現場を知れ! 今度、現場研修に参加してみろ」と言われました。
そこで義父に言われるまま参加したのですが、作業中に足を滑らせてしまって転倒。幸い大きなけがには至りませんでしたが、検査や経過観察のため、数日入院することになりました。
入院中のある日のことです。義父から「現場で転んで入院したんだろ? まったく、情けないな」と電話がきました。さらに「営業ばかりやってるから体がなまるんだ! これからはもっと現場に出て、体を鍛えないとな」と笑われてしまったのです。
すると、隣で聞いていた妻の表情が一変。「電話、代わって」と言われたのでスマホを渡すと、妻は「お父さんが『もっと現場を知れ』って言ったから参加したんでしょ? それでけがした人に、よくそんなこと言えるね」と義父を叱りました。
義母も電話の向こうで「あなた、そんな言い方はないでしょう」とたしなめてくれたものの、義父は素直に謝ろうとはしませんでした。
機械導入に猛反対する義父
けがから復帰したころ、会社では機械の導入が検討されていました。負担の大きい作業に機械を取り入れてはどうかと、社員たちから声が上がったのです。
しかし義父は、「何でも機械に任せたらうちの良さがなくなるだろ。人の手でやるから意味があるんだ」と猛反対。社員たちが機械導入のメリットや現状の負担の大きさを説明しても、なかなか聞く耳を持ちませんでした。
僕も「全部を機械に任せるわけではありません。必要なところだけでも試してみませんか?」と提案しましたが、義父は「若い連中はすぐラクをしようとする。俺がまだ現場でやれるってところを見せてやる!」と、むしろ意地になってしまったのです。
無理を続けた義父が…
それからしばらくした、暑い日のことでした。義父はいつものように現場へ出て、社員たちと一緒に作業をしていました。
「これくらいじゃまだまだ疲れない」と、周囲が止めてもなかなか休もうとしなかったそうです。水分も十分に取らないまま作業を続けた結果、ふらついてその場に倒れ込んでしまいました。
幸い大事には至りませんでしたが、念のため病院で診てもらうことに。連絡を受けた僕と妻、義母も病院へ向かいました。
目を覚ました義父は、「昔はこれくらい平気だったんだけどな……」と落ち込んだ様子でつぶやきます。すると妻は、「お父さんの経験や技術を否定してるわけじゃないよ。でも、全部を自分でやらなくてもいいでしょう? 無理して倒れたら意味ないよ」と伝えました。
義母も「あなたが倒れるほうがずっと怖いわ」と続けます。僕も、義父の経験はこれからも会社に必要だと思っているからこそ、無理はしてほしくないと伝えました。
義父の考えに変化が
しばらく黙っていた義父は、やがて「俺は、自分が現場に出続けることが会社のためだと思ってたんだがな……」と小さく息を吐きました。そして僕に、「入院してるお前にあんなことを言って悪かったな」と謝ってくれたのです。
その後、義父は社員たちの意見にも耳を傾け、機械を取り入れることを決めました。一部の作業を機械に任せるようになり、義父も以前ほど無理をすることはなくなりました。最近では、あれほど機械を嫌がっていた義父が「これ、意外と便利だな」と、誰より熱心に機械の説明書を読み込んでいることもあります。
その話を聞いた妻は、「やっと意地を張るのをやめたのね」と笑っていました。
今回の一件をきっかけに、義父は少しだけ丸くなった気がします。僕と義父との関係も以前よりずっと穏やかになりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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