迷惑な無断駐車
私が働いていた建設会社には、来客用の駐車スペースが数台分あり、お客様や取引先の出入りが多く、満車になることも珍しくありませんでした。
ところが、ある時期から毎朝のように見知らぬ高級車が停められるようになったのです。
スタッフの車でも、お客様や取引先の車でもありませんでした。
私が出社したときにはすでに停まっていて、夕方になるといつの間にかなくなっているその車。そのため、しばらくは誰が何のために停めているのかわかりませんでした。
会社の近くには保育園があり、その先には最寄り駅がありました。
後からわかったのですが、車の持ち主は朝に子どもを保育園へ送り、そのまま会社の駐車場に車を置き、駅まで歩いて電車で出勤していたようです。つまり、会社の駐車場を無料の通勤用駐車場として利用していたのでした。
その車が停まっているせいで、混み合う時間帯にはお客様や業者さんの駐車スペースが足りなくなってしまいました。
最初は「少しの間だけ停めているのかもしれない」と様子を見ていましたが、無断駐車は何日も続きました。だんだんと社内でも話題に上がるように……。そこで私は父と相談し、駐車場の目立つ場所に「関係者以外駐車禁止」と書いた警告を掲示したのです。
これでやめてくれるだろうと思っていたのですが、翌朝も同じ車が何事もなかったかのように停められていました。
まさかの逆ギレ!?
ある朝、例の車の中にきれいな服装をした女性がいるのを偶然見かけた私。車内から荷物を取り出していたようです。そして、急いだ様子で駅へ向かおうとしていました。
ようやく車の持ち主に直接話ができると思い、私はその女性に声をかけました。
「すみません。この駐車場、うちの会社のものなんです。何度も車を停めていますよね?」
女性は一瞬驚いたような顔をしましたが、謝罪の言葉はありませんでした。それどころか、私が無断駐車をやめてほしいと伝えると、不満そうに言い返してきたのです。
「仕方がないでしょ? 保育園にずっと車を置いておけないんだから」
「ほかにも停めるところがあるんだし、1台くらいいいじゃない!」
「いちいち家に戻って車を置いてから駅に向かっていたら、仕事に遅刻しちゃうわよ!」
あまりに身勝手な言い分に、言葉を失った私。しかし女性の主張は、それだけでは終わりませんでした。
「文句があるなら保育園に言いなさいよ。親が停められるように、ちゃんと駐車場を用意してって!」
もちろん、その保育園とうちの会社はまったく関係ありません。私たちが保育園に掛け合う必要はないのです。
私は「ここは会社の敷地なので、今後は停めないでください」と改めて伝えました。すると女性は、駐車場に停まっていた会社の車両を見ながら、さらに耳を疑うようなことを言ったのです。
「トラックばかり停まっている建設会社の駐車場に、高級車を停めてあげてるんだから、むしろ格が上がるじゃない! 感謝してもいいくらいでしょ?」
さすがに腹が立ちましたが、言い争いになっても仕方ありません。私は「どんな車であっても無断駐車は困ります。お客様も利用するので、二度と停めないでください」と繰り返し、はっきり伝えました。
ところが女性は、「私が子どもを保育園に送れなくなるじゃない! 子育てを邪魔する気? 子どもは地域で育てるものなんだから、それくらい協力してくれてもいいでしょ」と、最後まで自分の都合ばかりを主張していました。
注意しても続いた無断駐車
あんな自分勝手なことを言っていたけれど、直接注意をしたのだから、さすがにもう停めないだろう――私はそう思っていました。
ところが翌朝、出社すると例の車がまた同じ場所に……。警告を出しても、本人に直接注意しても効果がなかったのです。
会社としても、このまま放置するわけにはいきませんでした。お客様や取引先が来ても駐車できず、業務にも支障が出ていたのです。
そこで家族や会社のスタッフとも改めて相談し、無断駐車の日時などを記録したうえで、警察にも相談することに。
私有地での駐車トラブルということもあり、相談したからといって警察がすぐに車を移動してくれるわけではありませんでした。ただ、同じ車による無断駐車が繰り返され、本人にもすでに注意していることなど、これまでの経緯を説明しました。
警察に相談した際には、朝から夕方まで無断駐車が続いていることも伝えていました。その後も女性は変わらず車を停めていましたが、ある日、夕方に巡回していた警察官が、車に戻ってきた女性に声をかけてくれたのです。
「こちらの会社から、無断駐車が繰り返されていると相談を受けています」と警察官から声をかけられた女性は、最初こそ不満そうな様子でした。
「でも、ここに停めないと仕事に間に合わないんです」と訴えていましたが、当然、それは会社の駐車場を勝手に使ってよい理由にはなりません。
会社側が駐車禁止の警告を掲示し、本人にも直接注意していたことから、警察官からも今後トラブルにならないよう、他人の敷地に無断で駐車しないよう注意されたそうです。
さすがに警察からも話をされたことで事の重大さを理解したのか、その日を境に、女性の車が会社の駐車場に停められることはなくなりました。
◇ ◇ ◇
保育園への送迎と仕事を両立するのは、大変だったのかもしれません。だからといって、自分の都合で他人の駐車場を勝手に使ってよいわけではありません。
子育てには周囲の協力が必要な場面もありますが、それは相手に迷惑をかけてよいという意味ではありません。困っているときこそ、自分の都合ばかりを優先せず、相手の立場を考えて行動することが大切ですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています