【もしものケース】「子どもなんだから仕方ないでしょ!」トイレの列でまさかのトラブル
※以下は、トイレで起こり得るトラブルを想定した架空のケースです。

駅のトイレで腹痛に耐えながら順番を待っていたNさん。
すると、小学生くらいの子どもを連れた女性が「通ります、通ります」と言いながら、並んでいる人たちを抜かして前へ進んでいきました。
順番を抜かされたため、「ちょっと……」と声をかけると、女性から返ってきたのは「子どもなんだから仕方ないでしょ」という言葉。
「でも、私もお腹が痛くて並んでいるんです」と伝えたところ、女性は「うるっさいわね!」と言い、なんと肩をドンと押してきました。
そのまま女性と子どもは、次に空いた個室へ先に入ってしまいました。
子どもが急いでいた事情はわかるものの、周囲に了承を得ずに順番を抜かしたうえ、相手の身体を押してまで先に入る行為は、法律上問題にならないのでしょうか。
太田垣弁護士に詳しく伺いました。
教えてくれたのは…株式会社BestOne 太田垣弁護士

- 株式会社BestOne 弁護士・税理士 太田垣佳樹(おおたがき よしき)さん
東京大学法学部卒業。首都大学東京(現・東京都立大学)法科大学院修了。
2013年司法試験合格、2014年弁護士登録。Arden法律事務所の代表弁護士として、相続・不動産・企業法務を中心に幅広い案件を取り扱う。
2022年より東京都立大学法科大学院非常勤講師を務めるほか、2025年に税理士登録。
結論:順番を抜かすだけなら犯罪にはなりませんが、相手を押しのければ暴行にあたる可能性があります
事情を説明して了承を得たうえで先に入れてもらうことは、何ら問題ありません。他方、了承を得ずに相手の身体に触れて押しのけた時点で、暴行として法的な問題になり得ます。
「順番を抜かすこと」と「押しのけること」の間には、大きな段差があります。
順番を抜かすだけなら、法律上の問題にはなりにくい

トイレの順番待ちの列については、並ぶ順序を守らせる法律の規定はありません。
したがって、了承を得ずに前に入ったというだけでは、違法とまではいえないのが通常です。マナーの問題にとどまります。
なお、体調や医療上の事情から緊急性が高い場合であっても、他人を実力で押しのける行為までが正当化されることは、通常ありません。事情を説明して理解を求めるという方法をとっていただくほかありません。
法的な問題になるのは「順番抜かし」より、そのときの行動
順番を抜かしただけで、すぐに犯罪になるわけではありません。
一方で、相手を押したり、強い言葉で脅したりするなど、順番を抜かす際の行動によっては法的な責任を問われる可能性があります。
では、具体的にどのような行為が問題になるのでしょうか。
ここからは、法律上の問題になり得る行為を、具体例とともに紹介します。
相手を押しのけて、けがをさせた場合

傷害罪(刑法204条)にあたる可能性があります。
あわせて治療費等の損害賠償の対象になります。
けがはなくても、相手の身体に触れて押しのけた場合

暴行罪(刑法208条)にあたる可能性があります。
けがをさせていなくても、身体に対する有形力の行使があれば成立します。民事上も不法行為になり得ます。
個室のドアを強く、何度も叩き続けた場合

1回や2回のノックは問題ありませんが、強く叩き続ける行為は、身体に直接触れていなくても暴行と評価される余地があります。
危害を加えるようなことを告げて脅したり、暴行を加えたりして、相手を無理に出させれば、強要罪(刑法223条)の問題にもなります。
口論になり、相手を侮辱したり脅したりした場合

周りに人がいる場で相手を侮辱すれば、侮辱罪(刑法231条)にあたる可能性があります。
同じ場面で、具体的な事実を挙げて相手の評価を下げる発言であれば名誉毀損罪(刑法230条)、危害を加える旨を告げれば脅迫罪(刑法222条)にもなり得ます。
身体に触れず、順番を抜かしただけの場合

これを直接処罰する規定はありません。施設側から退去を求められることはあります。
トイレでのトラブルを避けるには?立場別に対処法を紹介
トイレの順番を待っているとき、急いでいる人に割り込まれたり、反対に、自分がどうしても先に入りたい状況になったりすることもあるかもしれません。
こうした場面では、それぞれどのように対応すればよいのでしょうか。
ここからは、トラブルに巻き込まれた場合と、順番を譲ってほしい場合の両方について、太田垣弁護士に教えていただきます。
①押しのけられても、その場で反撃しない

押しのけられた側になった場合、その場で反撃すると双方が暴行の当事者になってしまう可能性があります。施設の係員を呼び、防犯カメラの記録が残るようにするのが確実です。
②急いでいるときは、まず事情を伝える

逆に急いでいる場合は、ひと言事情を伝えて了承を得てください。多くの場合、譲っていただけます。了承を得れば、順番を譲ってもらうこと自体に法的な問題はありません。
③医療上の事情がある場合は、事前に備えておく

医療上の事情がある方は、ヘルプマークの携行や、多目的トイレ・オストメイト対応トイレの位置の事前確認が有効です。
④個室から応答がないときは、係員を呼ぶ

個室から応答がない場合、中の方が体調を崩している可能性もあります。強く叩き続けるのではなく、施設の係員を呼んでください。係員に対応してもらえば、こちらが責任を問われる心配はまずありません。
「順番抜かし」と「押しのける行為」は分けて考える必要がある
トイレの順番を抜かされても、それだけでは法律違反になるとは限らないんですね。
一方、太田垣弁護士によると、注意した際に身体を押された場合は、けががなくても暴行罪にあたる可能性があるそうです。
もし同じようなトラブルに遭遇したら、無理に相手と争わず、施設の係員に相談するなど、落ち着いて対応したいですね。
※一部AI画像を使用しています。