夫は、自分の心をつなぎ止めておけなかった私にも責任があると言います。「君が彼女のように完璧なら、俺が不倫することもなかっただろう」と責任転嫁する始末。
私は「ちょっと考えさせて」と言ったものの、そんな夫にあきれ果て、慰謝料と財産分与をきちんとして、離婚しようと決意しました。
偶然の出会いが暴いた、夫の嘘
それから数日後、気分転換に外出していた私は、夫が「彼女の行きつけ」だと話していたカフェの前を通りかかりました。思わず中をのぞくと、そこには見覚えのある女性の姿が。それは、夫が得意げに見せてきた写真に写っていた、不倫相手の彼女でした。
無視することもできましたが、これも何かの巡り合わせかもしれない。そう感じた私は、気づけば彼女に声をかけていました。
「突然すみません。少しだけ、お話しできませんか?」と声をかけ、夫の妻であることを名乗ると、彼女は言葉を失ったように目を見開きました。
それでも彼女はすぐに気持ちを立て直し、とても丁寧に対応してくれました。そして、夫が既婚者であることは知らなかったと打ち明けたのです。
休日に会えないことが多いなど、以前から夫の言動に引っかかる点はあったものの、「仕事が忙しい」という言葉を信じ、まさか家庭があるとは思ってもいなかったそう。彼女はショックを隠しきれない様子で、それでもすべてを正直に話してくれました。
「彼が既婚者だと知っていたら、関係を持つことはありませんでした」そう語る彼女は、自分の危機意識の甘さを後悔すると同時に、私の結婚生活を壊してしまったことを深く反省し、丁寧に謝罪してくれました。
そんな彼女と話すうちに、夫がなぜ彼女を「完璧」と言ったのか、私にもわかった気がします。そして、彼女もまた夫に騙された1人なのだと思うと、責める気持ちにはなれませんでした。
誠実な彼女が下した「決断」
生まれてくる子どものためにも、私が身を引くのが一番良いのかもしれない——。そう考えた私は、すでに夫と離婚する決意を固めていることを彼女に伝えました。
しかし、彼女の答えは意外なものでした。
「いいえ。彼とは結婚しません」
思いがけない言葉に驚きましたが、きっぱりと言い切った彼女の決意は固いよう……。
その日の夜、再び夫と話し、離婚の話を進めた私。夫は上機嫌で私に離婚届を差し出しましたが、私が彼女と会ったことを伝えると夫はとたんに顔色を変えました。
彼女に独身だと偽っていたことが私にバレたと知り、うろたえる夫。しかし私が彼女と争う気がないことを告げると、「なんだ、それなら話は早い。これで心置きなく彼女と一緒になれるよ」と、安堵した表情に……。
自分のことしか考えていない夫の姿に、猛烈な嫌悪感がこみ上げてきました。
私は慰謝料と財産分与の条件を話し合って書面に残したうえで離婚届にサインをし、家を出ました。彼女の決断については、あえて何も伝えていません。
後日、カフェで連絡先を交換していた彼女から、その後の話を聞きました。
私との離婚が成立したあと、元夫は連絡が途絶えがちだった彼女のもとへ慌てて謝罪し、改めてプロポーズをしたそうです。しかし、彼女が突きつけたのはあまりにも厳しい言葉でした。
「奥さんを裏切って、私にも嘘をついていた人とは、一緒になれません。もう二度と会いたくないです」
「え……? プロポーズしたのに?」
予想外の展開に元夫にあぜんとしたようですが、「妻を騙し、裏切るような人が自分だけを大切にしてくれるはずがない」と彼女が考えるのも当然です。こうして彼女も、元夫に別れを告げたのでした。
私と彼女を騙した元夫に残されたのは
彼女に捨てられた元夫は、手のひらを返したように「やり直したい」と私の元へ戻ろうとしましたが、もちろん受け入れるはずがありません。独身だと偽って彼女を騙し、私を傷つけた元夫に、もはや同情の余地すらありませんでした。
結局、元夫に残されたのは、すべてを失った末の孤独と、これから背負っていく重い義務だけでした。私は慰謝料と財産分与を受け取ると、すぐに元夫の連絡先をブロックし、引っ越し先も告げずに縁を切りました。彼女も認知と養育費について話し合い、取り決めを交わすと、住所を明かさず実家に戻ったと聞いています。
私も彼女も、それぞれの場所で新しい人生を歩み始めています。彼女が、お子さんと幸せになってくれることを願うばかりです。
◇ ◇ ◇
誰かを裏切って手に入れた幸せは、長く続くものではありません。嘘を重ねるほど、周囲からの信頼は失われていくばかりです。
すべてを失ってから過ちに気づいても、一度壊れてしまった関係を取り戻すことはできません。家族やパートナーなど、身近な人にどこまでも誠実であることこそが、何よりも大切なのではないでしょうか。
【取材時期:2026年9月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。