彼から突然の別れ話
当時、私には5年間付き合っている彼がいました。お互い結婚を意識する年齢になり、将来のこともよく話していました。
そんなある日のデート中、彼が暗い表情をしていることに気づきました。「何かあった?」と尋ねると、彼は重い口を開きました。
「実は、田舎にいる母親が病気になってさ……。地元に帰って面倒を見ないといけなくなったんだ」
彼は大学進学を機に上京し、そのまま東京で就職。実家は遠方にあり、私はまだ彼の両親に会ったことはありませんでした。
突然の話に驚きましたが、彼を支えたいと思いました。ところが、彼は思いがけないことを言い出したのです。
「地元で仕事が見つかるかもわからないし、お前に迷惑はかけられない。だから、別れてほしい」
私は遠距離でも構わないと伝えましたが、彼は「もう決めたことだから。本当にごめん」と言うばかり。
その後、連絡しても返事はなく、彼の家を訪ねると、すでに引っ越したあとでした。5年間も一緒にいたのに、こんな形で終わってしまうなんて……。しばらくは何も手につきませんでした。
傷心旅行先で目にした信じられない光景
それから数カ月後。少しずつ気持ちが落ち着いてきた私は、休暇を取って一人旅に出かけました。
行き先は、以前から好きだった海沿いのリゾート地。きれいな海を眺めながら、のんびり過ごそうと思ったのです。
そこには数年前、彼と旅行したこともありました。滞在中、彼と訪れたカフェを思い出し、久しぶりに行ってみることに。
海沿いの道を歩いていると、懐かしいチャペルが目に入りました。
「いつか、こんなところで結婚式を挙げたいね」
以前、彼とそんな話をしたことを思い出し、感傷にひたっていると……。チャペルの近くで、結婚式を終えたらしい新郎新婦が写真撮影をしているのが見えました。
何気なく目を向けた私は、思わず足を止めました。なんと、新郎は数カ月前に別れた彼だったのです!
隣にはウエディングドレス姿の見知らぬ女性がいました。
「5年!?」新婦が驚いた理由
呆然としていると、彼も私に気づき、慌てた様子で近づいてきました。
「な、なんでここにいるんだよ……」
新婦もやってきて「知り合いなの?」と尋ねると、彼は「昔の知り合いで……」とごまかそうとします。
私は思わず言い返しました。
「昔の知り合いって……。私たち、5年も付き合っていたのに。別れたのだって、つい数カ月前じゃない」
すると、新婦は「えっ、5年!? しかも、別れたのは数カ月前って……どういうこと!?」と驚き、彼に詰め寄りました。
2人のやりとりから、新婦は彼から「もう長いこと恋人はいない」と聞かされていたことがわかりました。しかも、2人が付き合い始めたのは、まだ私が彼と交際していた時期だったようです。
さらに明らかになった彼の嘘
そこへ、騒ぎに気づいた年配の女性が近づいてきました。彼が「母さん……」と呼んだため、私は彼のお母さんだと気づきました。
「あの、彼のお母さまですよね? 病気で療養されていると聞いていたんですが、お体はもう大丈夫なんですか?」
すると、お母さんはきょとんとした表情で、「病気? 私はずっと元気ですけど……」と答えたのです。
私が別れの経緯を説明すると、お母さんも驚きました。
「どういうことなの? 私が病気だなんて、そんな嘘までついて!」
新婦からも説明を求められ、彼はすっかり困り果てた様子。何とか取り繕おうとしていましたが、言葉を詰まらせるばかりでした。
そんな彼を見ているうちに、私の中で何かが吹っ切れました。
「もう、私には関係ないことなので。失礼します」
そう伝え、私はその場を立ち去りました。
その後、彼から何度か連絡がありましたが、私は一度も応じませんでした。新婦との結婚がどうなったのかもわかりません。
あれほど落ち込んでいたのに、彼の嘘を知ってからは、不思議と気持ちが軽くなりました。残りの旅行中は、おいしいものを食べたり、海を眺めたりして、のんびり過ごすことができました。
彼との思い出がある場所で、まさかこんな形で気持ちに区切りをつけることになるとは……。5年間を思うと悔しさもありますが、結婚する前に彼の本当の姿を知ることができて、今はよかったと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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