部下のお祝いで高級レストランへ
私の部下のA男さんは、仕事にはまじめに取り組むものの、少し自信がない性格。成果を出しても「周りの人に助けてもらっただけです」と謙遜するような人でした。
そんなA男さんが、数カ月かけて取り組んできた大きなプロジェクトを成功させたのです。私は「A男さんが頑張った成果ですよ。もっと自信を持ってくださいね」と声をかけ、お祝いに食事へ誘いました。
予約したのは、以前社長からおすすめされた高級レストラン。A男さんにも喜んでもらえたらと思い、楽しみにしていました。
予約しているのに案内されず…
当日、仕事帰りに2人でお店を訪れると、受付の女性店員が私たちをちらりと見て、「当店は予約制となっておりますので」と冷たく告げました。
「19時に2名で予約しているのですが」と伝えると、店員は名前も聞かず、「少々お待ちください」とひと言。
しかし、10分、20分と待っても案内されません。その間、あとから来たお客さんたちは次々と席に通されていきました。
さすがにおかしいと思い、30分が過ぎたころ、店員に理由を尋ねました。すると、店員は面倒そうな表情でこう言ったのです。
「だって、その格好でいらっしゃったので……。ご予約のお客様だとは思わなくて」
私たちは仕事帰りで、普段どおりのスーツ姿。決して華やかではありませんが、失礼な格好をしてきたつもりはなく、驚いてしまいました。
「でも、最初に予約しているとお伝えしましたよね?」
そう尋ねても、店員は謝る様子すらありません。せっかくのA男さんのお祝いなのに……。そう思うと、悔しさがこみ上げてきました。
社長が現れると態度が一変!
すると、「あれ? こんなところで何をしているんだい?」と声をかけられました。振り返ると、そこには会社の社長が奥さまと一緒に立っていたのです。
驚く私に、社長は「今日は妻と食事に来たんだよ」と笑顔で話してくれました。すると、先ほどまで冷たかった店員が、社長の姿を見るなり態度を一変。
「いつもありがとうございます! 本日もお待ちしておりました!」
さらに支配人まであいさつにやってきました。どうやら社長夫妻は、この店にとって大切な常連客のようです。
社長は、私たちがまだ入口にいることを不思議に思ったようで、「そういえば、A男君のお祝いだったよね。もう食事は終わったのかい?」と尋ねてきました。
そこで私は、予約して来店したのに30分も待っているうえ、服装を理由に見下されたことを説明しました。
それを聞いた社長は驚き、「予約していたお客様に、そんな対応をしたんですか?」と店員に確認。店員は「いえ、その……」と言葉に詰まり、さらに社長が「彼女たちは私の会社の社員なんです」と説明すると、顔色を変えたのです。
支配人がすぐに確認すると、私たちの予約はきちんと入っていました。支配人は深く頭を下げ、店員も「大変失礼いたしました」と謝罪。店員はその場で厳しく注意されていました。
社長も「私がすすめたお店なのに、こんなことになってしまって申し訳ないね」と、私たちを気づかってくれました。
A男さんの意外なひと言
その後、席に案内すると言われましたが、私は迷っていました。せっかくのお祝いとはいえ、もう食事を楽しめる気分ではありません。
すると、A男さんがきっぱりと「課長、出ましょう。僕、ここで食事をする気にはなれません」と言ったのです。
普段は控えめなA男さんの言葉に少し驚きましたが、私も同じ気持ちでした。
社長夫妻と支配人にあいさつをして店を出ると、A男さんは「僕のために予約してくださったのに、課長に嫌な思いをさせてまで、あのお店で食事をしたくなかったんです」と話してくれました。
結局、その日はA男さんの行きつけの居酒屋で食事を楽しみました。
嫌な出来事ではありましたが、A男さんの頼もしい一面を知ることができたのはうれしかったです。これからも上司として、彼の成長を応援していきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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